婚約者に逃げられて精霊使いになりました〜私は壁でありたいのに推しカプが私を挟もうとします。〜

一花カナウ

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6:新たな門出に

装置の正体

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「私、魔力も瘴気も感じられるんですよ。石に宿る精霊も感じられます。ここに埋められている石も精霊が宿っているんですよね。いまだに誰も目覚めさせることができないでいたようですが、私、試してみたくって」

 そう告げて、アメシストとシトリンを見やる。

「私、これまで起動できなかった紫黄水晶からふたりを呼び出したんですよ。だから、いけるんじゃないかなって」
「ええっと、でもね。この装置がなくなったら、この国の結界はなくなってしまうの。一応、結界装置は封じて新システムに移行する準備は進んでいるけれど、それには承認の作業がまだ残っていて――」

 焦るセレナの言葉に、私は自分の言葉で割り込んだ。

「結界が弱まっているのは、石の力を万全に発揮できていないからです。私が契約して、その力を解放します。それでしばらくは安泰すると思うんですよ」
「いや、待て。制御できなかったらどうするんだ。相手は国を守れるほどの強力なやつなんだろ?」

 スタールビーが忠告する。
 おっと、そこまでは考えていなかったぞ。私は少し悩んで言葉を続けた。

「それは……まあそのときということで。一応、契約解除の仕方も身につけていますし、どうにかなるんではないかと」
「無謀な……」

 スタールビーにあきれるような顔をされると、私はカチンとくる。慎重なのは彼らしいと思うが、彼がこうだから現状が行き詰まっているんじゃないかと非難したくなる。
 今は変わらなきゃいけない時だ。

「スタールビーさん、あなた、自分で見つけ出した聖女が選ぶ未来に自信がないんですか?」
「いや……そういうわけではないんだが」
「星条紅玉は導く石です。あなたという存在は聖女を導き、この国の発展に寄与するためにあるのだと思うんですよ。そしてあなたは私に対して、これまでの聖女とは違う感情を持っているのだとおっしゃいました。それはおそらく、ここに眠っている石の意志でもあると思うんですよね。変化を求めているのだと思うのです。それができる存在だから、私は呼ばれたのではないでしょうか」
「む……まともな意見のような気がするが」
「なんでそんなに不安になるのです? あなたが私をここに連れてきたくせに」
「……そうだな」

 説得できたようだ。スタールビーは諦めて目を伏せた。
 私は改めてアメシストとシトリンに目を向ける。

「というわけで、そこ、掘ってください。石に直接触れる必要があるので」

 アメシストがしょうがないなあという顔をする。

「そのために僕たちを連れてきたの?」
「ええ。水晶の仲間ですし、傷つける可能性も低いかなと」

 シトリンもやれやれといった表情を浮かべた。

「硬度は近いが……そういうものか?」
「スタールビーさんだと強すぎるんですよ」

 硬度の問題だけではない。先日の模擬戦でも感じたところであり、戦力としても妥当だと判断したのだった。
 アメシストとシトリンは見合わせて、コクッと頷き合った。

「装置自体にはできるだけ傷をつけないようにお願いしますね」
「……そういうことなら、私が責任を取るわ」
「セレナさん、ありがとうございます」
「だから、あなたの理論が正しいことを証明しなさい」

 オパールが動こうとするのを制したままセレナが言い切った。オパールは不満げだ。

「わかりました。お願いします」

 魔力の気配から場所は特定できる。指示して、アメシストとシトリンが慎重に穴を開けた。
 穴から薄ぼんやりと光が漏れる。

「出てきたぞ」
「ありがとう。それだけ隙間があれば、手が届くから大丈夫」

 最小限の穴から私は手を伸ばす。
 呼吸を整える。
 お願い。私の声に応えて。
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