婚約者に逃げられて精霊使いになりました〜私は壁でありたいのに推しカプが私を挟もうとします。〜

一花カナウ

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6:新たな門出に

私は聖女になるのですか?

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「それで、私は聖女にはならなくて良い、とでも思っていただけたのでしょうか?」
「それはオズリック氏が決めることじゃないだろう。お嬢さん自身が結論を出せるようにと、オズリック氏も俺もあえて何も言わなかったと思うが?」
「むむ……」

 確かにその通りだ。私が聞いていないことは、ふたりとも何も明かしていない。先入観を除外しようとしていたのかもしれない。
 うっすらと聖女の話は聞いていたし、精霊使いが魔物と戦うことでこの国が機能しているということは知っている。だが、鉱物人形の話には触れずに生きてきたわけで、彼らと接するようになってから自分の指針を決めた私としては、誰かの助言でここまで進んできたわけではないつもりである。
 私は後ろで控えているアメシストとシトリンを見る。彼らが近くにいてくれなかったら、ここに私はいないだろう。場所という意味でも、命の保証という意味でも、私はここにいなかった可能性が高い。
 不思議そうな顔をしたふたりに、私はにこっと微笑んだ。

「スタールビーさんは、ここで昔話をしたら私が聖女になることを選ぶと思ったのです?」
「いや。何を選ぶにしても、俺が話しておかなかったら君が悔やむかもしれないと思ったから語っただけだ。俺は特殊な鉱物人形だからな、そばに置きたいと願うなら知っておくべきだろ?」
「なるほど、そういう考えですか」
「この話以外で意図的に隠していることはもうない」

 スタールビーの身辺整理は進んでいるようだ。
 ここで彼と正式な鉱物人形の契約を結ばない場合、スタールビーの寿命は尽きる。私の判断がどう転ぶにしても情報の継承は必要だと考えたのかもしれない。

「それで、ジュエルさんは聖女になるのかしら? 精霊使いとして残るのかしら? それとも、一般人に戻る?」

 セレナがにこにこしながら尋ねてきた。ここで結論を出せということらしい。セレナの背後にいるオパールがピリピリしているのが発する魔力から察せられた。

「――一度保養所に戻って……とはならないんですよね?」
「そうね。ラリサさんをこっちに引っ張り出してきた都合もあって、のんびりとはできないのよ」
「今は結界が弱まっている状態でな。出涸らしになってしまった私では装置を動かすこともできず、こうして追い出されることになったわけだ。聖女を引き継ぐなら、これから強制的に装置に行ってもらうことになる」

 ラリサは私を見てうっすらと笑った。

「あれは痛みはないが、なかなかのものだぞ。全身を犯され夢見心地が長らく続くと表現するのが適しているかもしれん。スタールビーに味わわされたんじゃないか?」
「……それについては黙秘します」

 察するものがあって、私は身体に熱を覚えた。
 相性によるのかもしれないが、魔力の交感は強い快楽を伴うものらしい。オパールにこっそり聞いたのを思い出す。

「――で、それはそれとしてですね」

 私は立ち上がり、アメシストとシトリン、そしてスタールビーを見やる。

「ちょっと確認したいことがあるので、ひとつ、頼み事をしてもよろしいでしょうか?」

 オズリックから聞いていたことがあった。それを確かめておきたい。この状況ならば、意見が通る可能性が高い。

「いいわよ」

 セレナから承諾を得て、私は願いを口にした。
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