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6:新たな門出に
明かされる仕組み
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「私はオズリックと恋仲だった。初めは魔物検知システムへの協力で知り合ったのだが、話をするようになって意気投合してな。この異質な魔力を活かせるならと公私ともに支え合う仲だった」
懐かしそうにラリサは目を細めた。
「だが、聖女に選ばれて状況は一転。私は当時、精霊使いではなかったのだが、それによって覚醒してな」
ラリサの指がスタールビーに向けられる。彼女の瞳は冷たい。
「私の身柄は精霊管理協会に拘束された」
続いてため息。彼女にとって憂鬱な思い出のようだ。
私はラリサに同情しつつ、ふと引っかかってセレナに顔を向けた。
「結界のシステムを維持している組織って民間ですよね? 精霊管理協会は国営組織で」
「そうね」
「では、どうして精霊管理協会に?」
聖女に選ばれただけであれば、精霊管理協会とは無縁のはずだ――と考えたのだが、精霊使いとして覚醒したことが問題なのだろうか。
私の問いに、セレナが返す。
「ちょうどその頃、精霊使いは免許制に切り替わってね。研修の実施と登録の義務が命じられたの。鉱物人形と契約するときに発生する魔力の乱れを協会が検知することができるから、それをもとに新規の精霊使いを見つけて強制連行するのよ」
ちなみにその魔力の乱れを察知する技術は魔物の発生の検知にも活かされているのよ、と豆知識が明かされる。
「あー、それで私も捕まってしまったんですね……」
「保護の名の下に、な」
ラリサが呆れた口調で補足した。彼女の苦労は私の身に起きたことにも似ているので頷かざるを得ない。お気の毒さまである。
「私は精霊使いになるつもりはなく、だからといって聖女としての役目を果たそうとも思えなかった。だが、先代の聖女に頼まれてしまって断れなくてな。オズリックの後押しもあって、私は聖女になった」
彼女は窓の外に目を向けた。
「これまでの生活からは離れてしまったが、もともと仕事一筋で生きてきた身だ。彼が融資を続けている間は安否もわかる。この選択をお互いに納得しているつもりではいるが、彼には寂しい思いをさせただろうな。声を交わすことも文を交わすことも禁じられたからなあ……」
彼女がオズリックを心から想っているのが口調から察せられた。大切な人なのだろう。
私にはそういう相手がいないから憧れる。
ふぅと息をつくと、ラリサはスタールビーに目を向ける。ラリサがスタールビーに向ける視線には静かな怒りが含まれているような気がする。恨んでいるのだろうか。
「これまで国のためだと思うことで耐えてきたが、そろそろ身体も魔力も支えるには厳しくなってきた。聖女になるにあたってスタールビーを手放したのだが、同じ頃、譲った先の精霊使いが亡くなったと聞いた。きっと、スタールビーは次の聖女を選びにいくのだと悟った。そして、ジュエルさんが現れた」
「ジュエルの存在にいち早く気付いたのはオズリック氏だったようだな。ラリサのことを知っていたから、見抜けたのだろう」
スタールビーが話を継いだ。
「オズリック氏が精霊管理協会のやり方や結界のシステムについて疑問に思っているのは間違いない。もっとより良い方法を模索するべきだと説き、行動した。ジュエルを婚約者として面談し、性質を見極めた上で今後どうするかを検討しようとしていた」
婚約者というのははじめから偽装だったわけだ。オズリックと会っているときの違和感はそのせいなのだろう。
懐かしそうにラリサは目を細めた。
「だが、聖女に選ばれて状況は一転。私は当時、精霊使いではなかったのだが、それによって覚醒してな」
ラリサの指がスタールビーに向けられる。彼女の瞳は冷たい。
「私の身柄は精霊管理協会に拘束された」
続いてため息。彼女にとって憂鬱な思い出のようだ。
私はラリサに同情しつつ、ふと引っかかってセレナに顔を向けた。
「結界のシステムを維持している組織って民間ですよね? 精霊管理協会は国営組織で」
「そうね」
「では、どうして精霊管理協会に?」
聖女に選ばれただけであれば、精霊管理協会とは無縁のはずだ――と考えたのだが、精霊使いとして覚醒したことが問題なのだろうか。
私の問いに、セレナが返す。
「ちょうどその頃、精霊使いは免許制に切り替わってね。研修の実施と登録の義務が命じられたの。鉱物人形と契約するときに発生する魔力の乱れを協会が検知することができるから、それをもとに新規の精霊使いを見つけて強制連行するのよ」
ちなみにその魔力の乱れを察知する技術は魔物の発生の検知にも活かされているのよ、と豆知識が明かされる。
「あー、それで私も捕まってしまったんですね……」
「保護の名の下に、な」
ラリサが呆れた口調で補足した。彼女の苦労は私の身に起きたことにも似ているので頷かざるを得ない。お気の毒さまである。
「私は精霊使いになるつもりはなく、だからといって聖女としての役目を果たそうとも思えなかった。だが、先代の聖女に頼まれてしまって断れなくてな。オズリックの後押しもあって、私は聖女になった」
彼女は窓の外に目を向けた。
「これまでの生活からは離れてしまったが、もともと仕事一筋で生きてきた身だ。彼が融資を続けている間は安否もわかる。この選択をお互いに納得しているつもりではいるが、彼には寂しい思いをさせただろうな。声を交わすことも文を交わすことも禁じられたからなあ……」
彼女がオズリックを心から想っているのが口調から察せられた。大切な人なのだろう。
私にはそういう相手がいないから憧れる。
ふぅと息をつくと、ラリサはスタールビーに目を向ける。ラリサがスタールビーに向ける視線には静かな怒りが含まれているような気がする。恨んでいるのだろうか。
「これまで国のためだと思うことで耐えてきたが、そろそろ身体も魔力も支えるには厳しくなってきた。聖女になるにあたってスタールビーを手放したのだが、同じ頃、譲った先の精霊使いが亡くなったと聞いた。きっと、スタールビーは次の聖女を選びにいくのだと悟った。そして、ジュエルさんが現れた」
「ジュエルの存在にいち早く気付いたのはオズリック氏だったようだな。ラリサのことを知っていたから、見抜けたのだろう」
スタールビーが話を継いだ。
「オズリック氏が精霊管理協会のやり方や結界のシステムについて疑問に思っているのは間違いない。もっとより良い方法を模索するべきだと説き、行動した。ジュエルを婚約者として面談し、性質を見極めた上で今後どうするかを検討しようとしていた」
婚約者というのははじめから偽装だったわけだ。オズリックと会っているときの違和感はそのせいなのだろう。
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