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5:清算のためにすべきこと
これで身の程が知れたでしょう?
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「――さて」
私は地面に転がるルシウスを見下ろした。
「あの魔物は兄さまごと焼き払おうとしていましたが、死ぬおつもりでしたか?」
死ぬ気なんてさらさらないはずだ――そう考えて煽るように告げれば、ルシウスは真っ青な顔で口をぱくぱくと動かす。声は出ない。
私は冷ややかに微笑んだ。
「魔物のほうが扱いやすいというのも、あなたの幻想だったようですね。これで身の程が知れたでしょう?」
ルシウスからは戦意を感じられない。もう私の勝ちだろう。
ルビとスタールビーの戦闘も終えたようで、魔物は霧散していた。周囲に残るのは煙と炎と瓦礫の山。
「これはたまげたな」
「オズリックさまは無事ですか?」
「右腕の分は働きましたよ?」
「この通りだ。おかげさまでな」
オズリックが私を驚いた様子で見つめている。警護を頼んだステラもオズリックも無傷だ。ちゃんと働いてくれたことには違いない。
スタールビーがオズリックに近づく。視線を交わし、声なく会話をした様子で、頷き合う。オズリックは預かっていた鞄を大事そうにスタールビーに差し出した。
「大切なものなのだろう?」
「ああ。感謝する」
スタールビーは受け取って、困ったように笑った。
「たぶん俺は、あんたを殴っておく必要があったと思うんだよな」
「……そうだな」
オズリックは迷うような間をあけて、静かに頷いた。
「会いにいくつもりがあるなら、早いほうがいい」
「どんな顔で会いにいけばいいと言うんだね? 僕は彼女を救うことを諦めたんだ」
「今なお思い続けていることを、伝えるだけでいい」
「やはり君は気がきくようだな」
懐かしそうにオズリックが笑う。この人はこんなふうに柔らかく笑うこともできるのか。
「――おおっと。オレたちが来る前に終わっちまったか?」
上空で声がしたかと思えば、セレナを横抱きにしたオパールが降ってきた。空には偵察機が飛んでいる。あの飛行機から落ちてきたらしい。
「魔物は全て倒しましたよ」
「さすがねえ」
セレナが降り立ち、私の周りの鉱物人形たちを見てニコッと笑った。
サイレンの音が近づいてくる。火事の連絡を受けて駆けつけたのだろう。
「本館のシェルター、脱出のために壊してしまったのでダイヤに代わりをさせています」
「みなは無事か?」
「おそらく、大丈夫だと思いますけど……壊したシェルターは弁償しますので」
オズリックの問いに、私は苦笑しながら答える。シェルターは派手に斬ったので使うことはできないだろう。特注品らしいので幾らかかるか想像できないが、地道に返済である。
おずおずと答えれば、オズリックは私の頭を優しく撫でた。
「そうだな。シェルターは弁償してもらおう」
機嫌が良さそうなのはなぜだろう。
とはいえ、まじめに精霊使いの仕事をしないといけなくなったことには違いない。頑張らねば。
「ルシウスは連行して、ステラも重要参考人ってことで、精霊管理協会まで案内するわ」
オパールがルシウスを縛って立たせている。ステラはセレナの説明に、私をチラリと見て悲しそうな顔をした。
「また離れ離れですか……」
「多少は待遇がよくなると思うわよ」
しょんぼりとしている。
このやり取りを聞いている感じだと、ステラは逃げたのではなく逃されたような気がする。後で確認しておこう。
「この件の指揮は、ここから私がとるわ。みんなは休んでちょうだい」
セレナが宙空に画面を表示させて、どこかに連絡を取っている。必要な書類を集めたり指示を出したりしているようだ。手の動きに目がついていかない。
「ならば、そうさせてもらおう」
オズリックが私たちを見て案内してくれる。どうもこの敷地内には大きなお屋敷以外にも寝泊まりできる場所があるらしい。
私たちはオズリックのご厚意に甘えることにした。
私は地面に転がるルシウスを見下ろした。
「あの魔物は兄さまごと焼き払おうとしていましたが、死ぬおつもりでしたか?」
死ぬ気なんてさらさらないはずだ――そう考えて煽るように告げれば、ルシウスは真っ青な顔で口をぱくぱくと動かす。声は出ない。
私は冷ややかに微笑んだ。
「魔物のほうが扱いやすいというのも、あなたの幻想だったようですね。これで身の程が知れたでしょう?」
ルシウスからは戦意を感じられない。もう私の勝ちだろう。
ルビとスタールビーの戦闘も終えたようで、魔物は霧散していた。周囲に残るのは煙と炎と瓦礫の山。
「これはたまげたな」
「オズリックさまは無事ですか?」
「右腕の分は働きましたよ?」
「この通りだ。おかげさまでな」
オズリックが私を驚いた様子で見つめている。警護を頼んだステラもオズリックも無傷だ。ちゃんと働いてくれたことには違いない。
スタールビーがオズリックに近づく。視線を交わし、声なく会話をした様子で、頷き合う。オズリックは預かっていた鞄を大事そうにスタールビーに差し出した。
「大切なものなのだろう?」
「ああ。感謝する」
スタールビーは受け取って、困ったように笑った。
「たぶん俺は、あんたを殴っておく必要があったと思うんだよな」
「……そうだな」
オズリックは迷うような間をあけて、静かに頷いた。
「会いにいくつもりがあるなら、早いほうがいい」
「どんな顔で会いにいけばいいと言うんだね? 僕は彼女を救うことを諦めたんだ」
「今なお思い続けていることを、伝えるだけでいい」
「やはり君は気がきくようだな」
懐かしそうにオズリックが笑う。この人はこんなふうに柔らかく笑うこともできるのか。
「――おおっと。オレたちが来る前に終わっちまったか?」
上空で声がしたかと思えば、セレナを横抱きにしたオパールが降ってきた。空には偵察機が飛んでいる。あの飛行機から落ちてきたらしい。
「魔物は全て倒しましたよ」
「さすがねえ」
セレナが降り立ち、私の周りの鉱物人形たちを見てニコッと笑った。
サイレンの音が近づいてくる。火事の連絡を受けて駆けつけたのだろう。
「本館のシェルター、脱出のために壊してしまったのでダイヤに代わりをさせています」
「みなは無事か?」
「おそらく、大丈夫だと思いますけど……壊したシェルターは弁償しますので」
オズリックの問いに、私は苦笑しながら答える。シェルターは派手に斬ったので使うことはできないだろう。特注品らしいので幾らかかるか想像できないが、地道に返済である。
おずおずと答えれば、オズリックは私の頭を優しく撫でた。
「そうだな。シェルターは弁償してもらおう」
機嫌が良さそうなのはなぜだろう。
とはいえ、まじめに精霊使いの仕事をしないといけなくなったことには違いない。頑張らねば。
「ルシウスは連行して、ステラも重要参考人ってことで、精霊管理協会まで案内するわ」
オパールがルシウスを縛って立たせている。ステラはセレナの説明に、私をチラリと見て悲しそうな顔をした。
「また離れ離れですか……」
「多少は待遇がよくなると思うわよ」
しょんぼりとしている。
このやり取りを聞いている感じだと、ステラは逃げたのではなく逃されたような気がする。後で確認しておこう。
「この件の指揮は、ここから私がとるわ。みんなは休んでちょうだい」
セレナが宙空に画面を表示させて、どこかに連絡を取っている。必要な書類を集めたり指示を出したりしているようだ。手の動きに目がついていかない。
「ならば、そうさせてもらおう」
オズリックが私たちを見て案内してくれる。どうもこの敷地内には大きなお屋敷以外にも寝泊まりできる場所があるらしい。
私たちはオズリックのご厚意に甘えることにした。
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