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5:清算のためにすべきこと
お酒は飲むかい?
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「お酒は飲むかい?」
「今日はやめておきます」
「泊まっていくなら、多少は飲んでも許されるだろう? お前さんは飲める体質だったはずだが」
把握されているとは思わなかった。会食で私がお酒を口にしたことはなかったはずだ。
返答に困っている間にグラスが用意される。
「あ、でも、私」
慌ててスタールビーを見れば、退屈そうな顔をしている。
助けてよ!
「飲んでもいいんじゃないか、今日くらいは」
そう答えて、スタールビーは自身の胸元をツンツンと指した。
彼の仕草で私は思い出す。今日は紫黄水晶と一緒だ。
「俺は仕事中で飲めないからな」
「おや、君にも勧めようと思ったんだがなあ」
「酔っ払って護衛任務に失敗したら大変ですからねえ」
「君は真面目だなあ」
オズリックの機嫌を損ねることなく、スタールビーはやり過ごした。
むむ……飲まないわけにはいかなくなってしまった。
「わかりました。少しだけ、でもよろしければお付き合いしますわ」
私が返事をすると、オズリックが指示をして淡い色の液体がグラスに注がれた。甘い香りがする。
「なに、酔わせてどうこうするつもりはないさ。お前さんの好みに合うだろうワインが手に入ったからな、一緒に飲もうと思っていたんだ」
「私の好みを? どうして?」
理解できなくて思いのままに告げる。
オズリックは目を細めた。
「お前さんをたっぷりと甘やかすためだ」
「甘やかしても、なにも面白くないかと」
飲んでほしいと指先で勧められる。
私は彼が先に飲んだのを見て、私もひと口含んだ。甘みが強いから気づきにくいが、アルコール度数は高い気がする。私が好きな味なのは間違いない。うっかり飲みすぎてしまいそうで、すぐにグラスから唇を離した。
「美味しいだろう?」
「お酒ばかり進んでしまいそうで、ちょっと怖いです」
よく考えたら空腹にお酒はよろしくなかった気がする。私はグラスを置いて、紫黄水晶のペンダントトップに軽く指を当てる。おまじないだ。
「僕はお前さんが不思議そうにするのが興味深い。結婚は白紙に戻ったが、養子にならどうだ?」
「もう酔っていらっしゃるのです?」
「お前さんを手放すのはもったいないと思えてなあ。伴侶にするにはいささか歳が離れているだろう? 養子という手もあると、この前思い立ったんだ」
実家にいるよりは大事にしてもらえるんじゃないか、と想像してしまった。
でも、とそこで思いとどまる。私はお酒を飲めるし結婚もできる年齢だ。誰かの庇護が必要な子どもではない。
「丁重にお断りします」
「そうか……それは残念だな」
やがて食事が運ばれてくる。前菜からメインディッシュに至るまで、私の土地の料理ばかりだった。
「……あの」
「どうした?」
「どうして私の土地の料理ばかりなのです?」
こちらの料理であれば魚介類が多い。それなのに、肉料理が多いうえに味付けも私が馴染んだものばかりだ。
「口に合わなかったか?」
「とんでもないです。どれも美味しくて、こちらで食べられるなんてと驚いたくらいで」
「もっとお前さんのことを知りたくてな」
「誰から好みをお聞きになったのです?」
妥当なところではステラだろうが、どうもステラ自身はオズリックを快く思っていなかったようなのでベラベラ喋りはしないだろう。
「誰でもいいことだろう?」
問いを問いで返される。意外な返事だった。
「今日はやめておきます」
「泊まっていくなら、多少は飲んでも許されるだろう? お前さんは飲める体質だったはずだが」
把握されているとは思わなかった。会食で私がお酒を口にしたことはなかったはずだ。
返答に困っている間にグラスが用意される。
「あ、でも、私」
慌ててスタールビーを見れば、退屈そうな顔をしている。
助けてよ!
「飲んでもいいんじゃないか、今日くらいは」
そう答えて、スタールビーは自身の胸元をツンツンと指した。
彼の仕草で私は思い出す。今日は紫黄水晶と一緒だ。
「俺は仕事中で飲めないからな」
「おや、君にも勧めようと思ったんだがなあ」
「酔っ払って護衛任務に失敗したら大変ですからねえ」
「君は真面目だなあ」
オズリックの機嫌を損ねることなく、スタールビーはやり過ごした。
むむ……飲まないわけにはいかなくなってしまった。
「わかりました。少しだけ、でもよろしければお付き合いしますわ」
私が返事をすると、オズリックが指示をして淡い色の液体がグラスに注がれた。甘い香りがする。
「なに、酔わせてどうこうするつもりはないさ。お前さんの好みに合うだろうワインが手に入ったからな、一緒に飲もうと思っていたんだ」
「私の好みを? どうして?」
理解できなくて思いのままに告げる。
オズリックは目を細めた。
「お前さんをたっぷりと甘やかすためだ」
「甘やかしても、なにも面白くないかと」
飲んでほしいと指先で勧められる。
私は彼が先に飲んだのを見て、私もひと口含んだ。甘みが強いから気づきにくいが、アルコール度数は高い気がする。私が好きな味なのは間違いない。うっかり飲みすぎてしまいそうで、すぐにグラスから唇を離した。
「美味しいだろう?」
「お酒ばかり進んでしまいそうで、ちょっと怖いです」
よく考えたら空腹にお酒はよろしくなかった気がする。私はグラスを置いて、紫黄水晶のペンダントトップに軽く指を当てる。おまじないだ。
「僕はお前さんが不思議そうにするのが興味深い。結婚は白紙に戻ったが、養子にならどうだ?」
「もう酔っていらっしゃるのです?」
「お前さんを手放すのはもったいないと思えてなあ。伴侶にするにはいささか歳が離れているだろう? 養子という手もあると、この前思い立ったんだ」
実家にいるよりは大事にしてもらえるんじゃないか、と想像してしまった。
でも、とそこで思いとどまる。私はお酒を飲めるし結婚もできる年齢だ。誰かの庇護が必要な子どもではない。
「丁重にお断りします」
「そうか……それは残念だな」
やがて食事が運ばれてくる。前菜からメインディッシュに至るまで、私の土地の料理ばかりだった。
「……あの」
「どうした?」
「どうして私の土地の料理ばかりなのです?」
こちらの料理であれば魚介類が多い。それなのに、肉料理が多いうえに味付けも私が馴染んだものばかりだ。
「口に合わなかったか?」
「とんでもないです。どれも美味しくて、こちらで食べられるなんてと驚いたくらいで」
「もっとお前さんのことを知りたくてな」
「誰から好みをお聞きになったのです?」
妥当なところではステラだろうが、どうもステラ自身はオズリックを快く思っていなかったようなのでベラベラ喋りはしないだろう。
「誰でもいいことだろう?」
問いを問いで返される。意外な返事だった。
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