婚約者に逃げられて精霊使いになりました〜私は壁でありたいのに推しカプが私を挟もうとします。〜

一花カナウ

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5:清算のためにすべきこと

で、どう思います?

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「……食事はとにかく、宿泊はどう思う?」

 外が静かになったのを確認して、私はスタールビーに小声で尋ねた。

「俺としてはありがたいが……乗るべきかどうかはなんとも言えないな」

 難しい顔をしている。私の心配をしているというよりも、自分の進退を気にしているのだろう。誰につくのが得策なのかを考えるのは自然だ。
 今のところ、スタールビー自身が私につくかどうかは五分五分で、所属する陣営はどこに対してもグレーだ。

「あなたはルシウスについてどう思ってるの?」
「どうって?」
「あの人が私の味方か敵かってこと」

 言い換えて説明すると、スタールビーは小さく唸った。

「あー、そういう話なら、味方ではないだろうな。だが、敵といえるほど俺たちの障害にはならない」
「ふぅん……なるほど。それで、あなたが演じた兄は三下っぽかったわけだ」
「実の兄に対して随分な評価じゃないか」
「田舎貴族にぴったりってだけです。――それで、兄は何かしようと画策しているんですか? こっちにいるのって不自然じゃないですか」

 兄のスケジュールを全て把握していたわけではないが、こちらを訪ねるような予定は入っていなかったと思う。
 転送装置を自由に使えるような身分ではないから移動にも時間がかかる。宿をとっているということも彼自身が告げていたことから、数日の日程で家をあけているはずだ。ならば、両親に相談していることだろう。誰が屋敷にいて私を監視するかを日頃から話し合っていることを思い返すと、こんな時期にここにいるわけがないのだ。
 急遽、こっちにくることにした……ってことよね。
 私の問いに、スタールビーは両手を肩のあたりまで上げた。

「おいおい。俺が詳しく知るわけがないだろう?」
「こちらの情報を流す程度には親しい仲なのでしょうに」

 疑いの目を向ける。
 こうなったら強制的に私の鉱物人形にして全ての情報を吐かせることも検討したほうがいいのではなかろうか。
 スタールビーは首を横に振った。

「俺が彼を利用しているだけだ」
「ええ……」
「ステラからの指示を受けるのに、何度かルシウスを経由していて……その程度の付き合いだ」

 本当に互いの顔も知らなかったなら、信憑性はある。
 スタールビーの説明を聞いて、私ははたと気づいた。

「経由していたってことは、ステラの計画は兄さまも知っていたってことなのです?」
「そうなるな。発案は全てステラだと思うが」
「廃墟に呼び出されたときも、お兄さま経由なのです?」
「いや。あのときはステラが直接、だ」

 あともう少しで繋がるような気がする。

「あの、私。魔物の持ち出しはステラではなくオズリックさんが裏で動いているのだとずっと思い込んでいたんですけど、魔物について知っている情報はあるのですか?」
「いや。その辺りは知らない」
「本当に?」
「ステラが持ち歩いていることは確かだ。そういう技術があって、やつは使いこなしている。出どころは知らない」
「そう、ですか……」

 私がスタールビーから聞き出せる情報はもうなさそうだ。このままでは話がぐるぐるしてしまいそうだったので、私は精霊管理協会から預かってきた通信端末を握る。

「――とりあえず、セレナさんに相談してみますね。なにか新しい情報が上がってるかもしれませんし」
「そう……だな」

 スタールビーの表情が微かに曇る。まだ何か隠していることがありそうだ。
 私は通信端末を操作して、セレナを呼び出すことにする。
 
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