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4:私の選択

追い詰めました

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※※※※※


 ガバッと飛び起きて、私は部屋を出る。行き先はスタールビーの部屋だ。

「待ちなさい!」

 部屋を出たばかりのスタールビーに追いつけた。声をかけたので彼はギョッとした顔をこちらに見せたが、止まる義理はないと考えたのだろう。私のいない方向へと走りだす。
 まずい。本気で走られたら追いつけないっ。
 焦ったと同時に迫る気配があった。この魔力の感じは。
 私はスタールビーに向かって手を差し出し、命じる。

「捕らえて、アメシストさん、シトリンさんっ!」
「了解、マスター」
「心得た!」

 私の両脇から飛び出したのはアメシストとシトリンだった。私が部屋を出たのに気づいて追いかけてきてくれたのだろう。
 壁を蹴って加速するふたりに、スタールビーも加速する。しかし、同時にアメシストの放った術にはまってスタールビーはつんのめった。廊下を滑るように転がり、停止。シトリンがスタールビーを拘束する。

「すごいな、お嬢さんは……」
「寝起きはいいんですよ、私」

 観念した様子でスタールビーは私を見上げた。

「で、どういうこと?」
「彼が何かやらかしたのか?」

 アメシストとシトリンには状況がよくわからないようだ。夢で起きたことがこの状況につながっているわけで、それを知らないふたりからしたら疑問に思うのは当然だ。

「悪夢の原因が彼にあるってことです」

 私が簡単に説明すると、スタールビーは苦笑する。

「とにかく。こんな深夜ですが、全て明かしていただきますよ、スタールビーさん」
「……はあ」

 大きくため息をつかれた。
 そこにオパールとルビも走ってきた。

「よく捕まえられたなあ」

 シトリンに代わると告げてオパールがスタールビーを押さえる。手を後ろにまとめて手錠をかけた。オパールは普段から手錠を持ち歩いているのだろう、動作がスマートだ。

「勝算のある賭けだっただけですよ」

 完全に私の支配下においたわけではないとはいえ、私がスタールビーに魔力を与えることで行動制限を課している。あとはアメシストとシトリンがいてくれれば取り押さえることはできると踏んでいた。

「……なんでだろうな。星条紅玉っていったら、勝負運も強いはずなのに」
「あなたが私に味方をしようと決めていらっしゃるからじゃないんですか?」

 思ったままを口にすれば、スタールビーは私を見ながら何度も目を瞬いて、続けて大声で笑った。

「ははは! なるほど、それじゃあしょうがないなあ」
「なので、諦めてください」

 そんなに笑うこともないのに、と私は少し不満だが、こういう部分が彼らしいとも思えるからぶつけられない。
 私が促すと、スタールビーは困ったような顔をした。

「もう少しだけ、みんなに話をするのは了承した。全部は伝えられないが、そこはわかってほしい。俺にだって、守りたいものはあるんだ」
「わかりました」

 みんなに目配せをする。オパールがスタールビーを立たせて、移動を始めた。

「こんなところで話すんじゃなくて、食堂でお茶でも飲みながらにしようじゃないか。手錠で鉱物人形としての術の使用は封じているから、逃げようもないだろ」
「お茶、嬉しいです」

 私がオパールに続けば、みんなついてきてくれた。
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