婚約者に逃げられて精霊使いになりました〜私は壁でありたいのに推しカプが私を挟もうとします。〜

一花カナウ

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4:私の選択

模擬戦

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 私は目を疑う。

「どうかしたのか、お嬢さん。苦手なものとか食えないものでも入っていたか?」

 心配そうなスタールビーの言葉に、私は首を横に振る。

「いえ。違うんです。……いただきますね」

 スタールビーはどこまで何を知っているのだろう。この料理を出したのは、彼が得意にしていたからという理由だけではないはずだ。
 オパールが許可したのも、おそらく意図がある。探りを入れられている気がした。
 私は彼らを信用して素直に反応していいのかわからない。私に害をなすつもりはないのだと考えてはいるけれど、私にとって利があるのか……怖い。
 気持ちを切り替えよう。早速ひと口つける。

「ふふ。珍しい料理ですよね」

 久しぶりに食べた。この料理を食べたのは初めて遠出をした時で、元婚約者と顔を合わせた時の食事会に出されたものだった。緊張してあのときは味がわからなかったけれど、今は甘味も辛味もわかる。

「口に合えばいいが」
「美味しいですよ」
「……そうか」

 何か思うところがあったのか、そっと目を伏せるとスタールビーは厨房に戻っていく。

「おかわりもあるからな。好きなだけ食べてくれ」

 オパールもアメシストとシトリンの分を運んで置いていくと席を外した。

「――マスター、どうかしたのかい?」
「いえ。気にしないでください。冷めてしまいますよ」

 ふたりは訝しげな顔をしたが、今は何も答えられない。冷めないうちに食べてしまおうと意識して、努めて忘れることにした。


※※※※※


 昼食後は模擬戦を行うことになった。
 審判はオパールで、ルビとスタールビーが組んで、アメシストとシトリンのチームと戦う。本館から少し離れた場所にダンスパーティができそうな大広間があり、そこを使うことになった。

「まあ、模擬戦といっても鬼ごっこみたいなものだ。防御系および肉体強化系の術は使っていいが、攻撃系はなし。武器召喚もなし。ただし精神系はアリってことで」
「目眩しは?」

 オパールのルール説明に対し、ルビが挙手する。

「オレの目が眩まないならよしとする。判定ができなかったら困るだろ」
「ふむ。いい考えだと思ったんだがな」
「あはは。俺たちは本気出すと光っちゃうからねえ」

 スタールビーの言葉に、私は昨日の研究所での戦闘を思い出す。ふたりとも本気を出すと赤く光るようだ。

「建物を壊したら減点だからな。そのときは一緒に始末書も書いてもらう。それも勉強だ。なおその辺に転がっている備品は使っていいとする」
「精神系はアリって言ってたけど、本当にいいの?」

 今度はアメシストが挙手した。

「審判のオレにかけるのはナシだが、そのくらいのハンデがあった方がいいだろ? あっちときみたちだとくぐり抜けてきた戦場の数が違うし」
「それはありがたいけど……」
「ちなみに、効くのか?」

 シトリンが挙手して相手チームに確認する。

「抵抗はするが、無効化できるほどじゃないと思うぞ。なあ?」
「モノによるかなあ。ま、全て瞬時に無効化できるわけじゃない。やれるだけやってみたらいい」

 少し悩むような間があって答えるルビに、話を振られたスタールビーが頷く。
 みなさんそれぞれ色々な術が使えるんですねえ。
 石の効能についてそれなりに知識を持つ私であるが、それらをもとに彼らがどこまで自身を把握し使いこなしているのかは知らない。この模擬戦でそれらが知れるとしたら、とても興味深いものになる。

「他に質問は?」

 みんなルールを理解したようだ。
 それを見て、オパールは私とダイヤを見た。

「ダイヤはジュエルさんに危険が及ぶと判断した場合には回避行動をすること。建物が崩壊する等のマジなやつは、さっさと退避だ。ここは使えるには使えるが、ずいぶんと老朽化してるからなあ」
「承知した」

 ルールと役割の確認が終わったところで、オパールはルビチームとアメシストチームの間に立った。

「――では、尋常に勝負!」

 号令と同時に両チームが動いた。


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