婚約者に逃げられて精霊使いになりました〜私は壁でありたいのに推しカプが私を挟もうとします。〜

一花カナウ

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4:私の選択

趣味を探しましょう

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「ひとりが心細いのであれば、遠慮せず呼んで構わないのだぞ?」
「そうですね。なにかあれば呼びますよ」
「僕らふたりがそろってるよりひとりずつがいいっていうなら、それでもいいよ?」

 どうしたらそういう発想になるのだろう。アメシストの提案に私は目を瞬かせた。

「私的にそれはないですね」
「あれ? そうなんだ」

 私の返答に、ふたりは同時に驚いたような顔をした。
 おや? 期待と違う答えだったのかな?

「一応、部屋の中は安全という話ですし、私に付き合わず、おふたりでのんびりしてくださいな」

 入浴のときでさえ同じ時間に合わせて移動している。セレナの講義も一緒だったことを思うと、ほとんどふたりはそばにいる。ならば、ある程度まとまった時間を別行動してもいいだろう。

「そう?」
「することも特にはないんだが……」

 私が勧めると、ふたりは顔を見合わせた。
 まあ、急に休めと言われても趣味もないだろうしなあ……
 鉱物人形となって身体を得てから日が浅いふたりに、時間のつぶし方はわからないだろう。ずっと仕事続きで、寝ているときでさえ護衛任務中ではあったのだ。

「なら、時間が空いたときにする趣味を探してください。そういうのも生きるには必要なんです。……ああ、でも、部屋にはいてくださいね」
「趣味、か……」

 言葉の意味は通じたようだ。真面目な顔をして、シトリンは腕を組む。
 そんなシトリンの顔をアメシストが覗き込んだ。

「ふたりでできることでも考えてみるかい?」
「ひとりでできたほうが都合がいいのでは?」
「さみしい……」

 ふてくされるアメシストの頭を、シトリンはおもむろに撫でた。

「除け者にしようというわけではないのだ。……部屋で一緒に考えようか」
「うん。そうこなくっちゃ」

 機嫌を直したアメシストは歩き出す。シトリンはそれを追う。

「お昼の時間になったら迎えにきてくださいね」
「了解だよ」

 アメシストとシトリンは私に手を振って部屋に帰っていった。
 見送って、私は部屋に入る。
 それはそうと、ふたりは距離が近いなあ。
 仲がいいことはよきことだ。元気をわけてもらったところで、私はひとりでやらねばと思っていたことに着手することに決める。
 婚約者から送られてきた書類を精読し、返信をすること。
 主旨は理解したと思うが、ステラが彼らの思惑について語っていた内容を考えると心穏やかではない。
 いずれ実家と話し合いをする必要もあるだろう。今後の身の振り方を考えるには避けて通れないことだ。
 私はため息をついて、書類の入った封筒を棚から出したのだった。



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