婚約者に逃げられて精霊使いになりました〜私は壁でありたいのに推しカプが私を挟もうとします。〜

一花カナウ

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4:私の選択

夕食と入浴を終えた私の部屋で

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※※※※※


「さすがに疲れたわ……」

 夕食と入浴を終えて、ようやく自分の部屋である。個人の場所があるだけで安堵できるものだな、ととみに感じた。


 研究所の廃墟から戻ると、早速セレナからの鉱物人形に関する講義を受けた。オパールが本部にステラを連行中のため、戻ってくるまでは座学になったのだ。それで私は鉱物人形の基本的な性質や仕様についてを勉強した。せっかくなので、アメシストとシトリンも一緒に授業を受けたのだが、彼らにとっても学びはあったようだ。
 昼食はオパールが作ってくれたお弁当をみんなで食べて、そのあとは魔鉱石についての勉強をした。今後のことを考えて、作り方の実践もしたので、結構ヘトヘトである。セレナいわく、筋がいいということなので、体調のいい時に量産しておこうと思う。
 その間、スタールビーとダイヤは各自の部屋で休んでいた。ふたりとも徹夜で活動しているので、身体の維持のために休息すべきとなったのだった。勝手な行動をこれ以上許さないために、ルビが二人の見張りをしている。人数と戦力があるのはこういうときに都合がいい。
 日が暮れた頃にオパールが戻ってきて、入れ替わるようにセレナが精霊管理協会本部に戻った。本人が出たのは手続きの都合があるからなのと、事情聴取のためらしい。
 その後、夕食と入浴があって今に至る。


「――ほんと、疲れたねえ」

 両隣で相槌を打つのが見えた。
 んー、やっぱりツッコミが必要だよね?

「ええっと……おふたりがふつうに部屋にいるのっておかしいと思いますけど?」
「同じ部屋で寝る約束をしているはずだが?」

 シトリンが真顔で私の質問を確認として返してきた。
 いや、まあ、そうなんですが。
 アメシストが愛らしい顔を作ってコクコクと頷いて同意を示している。

「でもですね、一応私は女で、おふたりは男性じゃないですか。精霊使いと鉱物人形という関係を維持するのに、距離が近すぎるのはよろしくないんじゃないかなあって考えるんですよ」

 今日の講義で鉱物人形が契約した精霊使いに対して自然と好意を持つことを学んだ。鉱物人形は、恋愛感情に似た情動を得るものらしい。それは鉱物人形が精霊使いから魔力の供給を受ける必要があって、日常的な接触をしようとするとそうした言動を選択してしまいがちだということである。
 つまり、彼らが向けてくる感情は恋愛のそれとは異なる。だから、勘違いさせるような言動を精霊使いがするのはよくないのだ、とセレナは教えてくれた。
 夫婦として優先的に魔力供給を行うことを望まないのであれば、思わせぶりな態度はしないほうがいい――そう告げていたはずだ。
 だから、まだ鉱物人形として生まれて日の浅いアメシストとシトリンを甘やかすことにはしているが、線はしっかり引いておいた方がいいと私は考えたのである。

「……わかっていただけませんかね?」

 私の説得に、アメシストはしばらく不思議そうな顔をしていたが、なにかを唐突に理解したらしく両手をポンっと叩く。
 嫌な予感。
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