婚約者に逃げられて精霊使いになりました〜私は壁でありたいのに推しカプが私を挟もうとします。〜

一花カナウ

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3:運命の歯車が回りだす

俺もこいつには借りがあるんで

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「打撃に耐性があるということでは?」
「ああ、それは考えたが、術もどっこいな手応えだったぞ」

 私たちの話に耳を傾ける余裕があるらしい。ルビが報告してくる。

「なら、斬撃だったらどうだ?」

 シトリンが提案する。どうも彼は剣を扱うのを好むようだ。私を抱えていないときは剣を構えていることが多い。

「ダメージは与えられていると思うが、蹴りや殴りと変わらなかったかな。俺の剣でも歯が立たない」
「……そうか」

 俺の、を強調したあたり、ルビの剣は切れ味にも自信があるのだろう。シトリンが落胆した。
 そこにいるルビは戦闘に特化しているという話だったが、事実あらゆる攻撃手段を身につけているようだ。得手不得手はあるのだろうけれど、試せる程度には使いこなしているらしい報告に頼もしく感じる。
 私は私なりに戦おう。

「表面は防御が高いってことですかね。だとしたら、内部から破壊する方向で攻めては?」
「お嬢さんはなかなかのセンスをお持ちだな」

 私の発言に、スタールビーが苦笑する。論理的に考えた結果なのだが、皮肉られるとは思わなかった。

「まあ、思いつく方法全部を試してみるなら、そうなるわねえ。さすがにルビくんはそれ、試していないんでしょ?」
「そうだな。中がどうなってるのかわからねえのに突っ込むのは、得策じゃない」

 合流する前に実践していて失敗した場合のリスクを考えたら、ルビの判断は間違っていないだろう。

「ただし。やれと命じるなら、俺は実行するが?」

 ルビが戻ってきた。私に背中を向けたまま、少しこちらに顔を向けて尋ねてくる。

「勝算はありますか?」
「ある。外側を強固にしているのは内部が弱いからってのは定番だろ」
「わかりました。お願いします」
「了解」

 腰から引き抜く動作で剣を出すと、ルビは蛇型の魔物に向かって跳躍した。赤い光が線を描く。
 こちらの作戦を魔物は聞いていたのだろう。口は開けずに巨大な頭部を振り回す。
 頭に気を取られている間に尾がこちらを薙ぎ払うように動いた。

「わっ」
「おっと」

 アメシストに担がれて、私は後退。シトリンも私たちに合わせて移動する。
 セレナは大きく跳んで後退し、スタールビーはあえて前方に飛び退いた。みんな無事だ。

「こっちにも攻撃してくるとは――」
「耳を塞いで!」

 魔物が口を開ける。
 咆哮が轟いた。地響きとともに建物が揺れて天井が少し崩れる。

「結界かっ」

 ルビが体内に入ろうとするのを弾かれて地面に着地した。

「こりゃあ、中が弱点で正解っぽいな」

 ルビの隣にスタールビーが立って腕を構える。

「俺もこいつには借りがあるんで、本気を出させてもらおうかな」

 周囲の瘴気がスタールビーに集まっていく。炎をまとったように、彼の周囲が赤く光った。

「それ、久々に見るが……大丈夫なのか?」
「お嬢さんの気をひくためにも、やれることはやっておいたほうがいいだろ」
「カッコつけて壊れてくれるなよ」
「ぶっ壊れたら、核は拾ってくれよ」
「そういう戦い方はさせねえよ」

 ふたりは不敵に笑って、拳をぶつけ合う。それを合図に、同時に跳躍した。
 って、見えない⁉︎
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