46 / 123
3:運命の歯車が回りだす
私はあなたとは行きませんから
しおりを挟む
「あなたの特性を知って、近づき求める者は多いことでしょう。それは、鉱物人形も同じです。あなたを謀り唆し、己がモノとしようとする。……ワタシ自身がそうではないとは否定しませんよ」
なにをされたのかわからないが、彼の使う術に掛かっているのだろうことは察せられる。身体がとても重いのだ。それは片膝をついた私だけでなく、後方にいるスタールビーも同じようだった。
身動きが取れないために、ゆっくりとした足取りで近づいてくるステラから逃げることができない。
「しかし、あなたをそばでずっと支えてきた自負はあります。誰よりもずっとあなたのことを考えてきました。あなたの最良の道を、ワタシは選ぶことができますよ。守る価値のない連中のために命を捧げる必要はないのです」
私の前に来てしゃがむ。見上げる私の頬を、手袋をはめた手で撫でた。
「我が愛し子。一緒に行きましょう」
「だから、行かないって言ってるでしょ!」
「もう拒否権はないのですよ?」
力尽くで拐われる!
身構えた瞬間、なぜかステラは後方に飛び退いた。何事かと状況を理解しようと頭を働かせている間に、私とステラの間に影が二つ落ちる。
「説得ができないからと言って拐おうとするのは感心しないな」
「そっちには行かないって言ってるんだから、出直しておいでよ」
シトリンとアメシストがステラに言い放つ。
「邪魔をしないでいただきたい。あとから湧いてきた分際で、我が愛し子のなにがわかるというのでしょう。ワタシの意志は彼女と同じだ。惑わすな」
「その言葉、そのまま返すよ」
アメシストが手を構える。
ステラはため息をついた。
「ふたりとも、警戒したほうがいい。アレはなかなか強いし、一体だけじゃねえんだ」
スタールビーが警告する。
そう、敵対しているのはステラだけではないのだ。見えない場所におぞましい気配を感じる。このフロアのずっと奥に何かいる。
「そっちは俺が引き受ける。だから、アメシストとシトリンはオパールと連携してそいつを引きつけておいてくれ」
階段からルビが出てきて、壁を蹴って跳躍。返事を聞くことなくフロアの奥に消えた。素早い。
まあ、ルビは視界不良になることがなさそうなので、適任といえば適任だろうか。ここの明かりはスタールビーが作ってくれているので問題はない。
「イキイキしてるな」
呆れるような声を出しながら、オパールも階段から姿を現した。
「オパールさん、あっちは大丈夫だと思います?」
「うーん。のんびりしていたらやばいかもっつーことで、そこの彼を追い払うんじゃなくて取っ捕まえようと思う。廃墟とはいえここは精霊管理協会管轄のエリアなんでな。勝手なことされると困るわけで」
会話中を呑気に待っていてくれるような相手ではない。アメシストとシトリンが睨みをきかせている間にも次の手を打つためにステラが動く。
それにめざとく気づいたオパールは対応すべく跳躍した。
「商店街のど真ん中に魔物を放ったのにも、ウチの施設に魔物をばら撒いたのにも、関わっているんだろ、きみが」
「さあ、なんの話です?」
どこからか複雑なきらめきを持つ石の剣を喚び出して、オパールが薙ぐ。応戦する形でステラも青い石の剣を取り出して受けた。
重い打撃音がフロアに響く。続く剣戟の動き。ぶつかるたびに音がこだまする。
衝撃波が私たちの髪を弄んだ。剣で戦っているように見えるが、特殊な剣なのかあるいは術を纏っているのか、通常の物理戦闘ではなさそうだ。
なにをされたのかわからないが、彼の使う術に掛かっているのだろうことは察せられる。身体がとても重いのだ。それは片膝をついた私だけでなく、後方にいるスタールビーも同じようだった。
身動きが取れないために、ゆっくりとした足取りで近づいてくるステラから逃げることができない。
「しかし、あなたをそばでずっと支えてきた自負はあります。誰よりもずっとあなたのことを考えてきました。あなたの最良の道を、ワタシは選ぶことができますよ。守る価値のない連中のために命を捧げる必要はないのです」
私の前に来てしゃがむ。見上げる私の頬を、手袋をはめた手で撫でた。
「我が愛し子。一緒に行きましょう」
「だから、行かないって言ってるでしょ!」
「もう拒否権はないのですよ?」
力尽くで拐われる!
身構えた瞬間、なぜかステラは後方に飛び退いた。何事かと状況を理解しようと頭を働かせている間に、私とステラの間に影が二つ落ちる。
「説得ができないからと言って拐おうとするのは感心しないな」
「そっちには行かないって言ってるんだから、出直しておいでよ」
シトリンとアメシストがステラに言い放つ。
「邪魔をしないでいただきたい。あとから湧いてきた分際で、我が愛し子のなにがわかるというのでしょう。ワタシの意志は彼女と同じだ。惑わすな」
「その言葉、そのまま返すよ」
アメシストが手を構える。
ステラはため息をついた。
「ふたりとも、警戒したほうがいい。アレはなかなか強いし、一体だけじゃねえんだ」
スタールビーが警告する。
そう、敵対しているのはステラだけではないのだ。見えない場所におぞましい気配を感じる。このフロアのずっと奥に何かいる。
「そっちは俺が引き受ける。だから、アメシストとシトリンはオパールと連携してそいつを引きつけておいてくれ」
階段からルビが出てきて、壁を蹴って跳躍。返事を聞くことなくフロアの奥に消えた。素早い。
まあ、ルビは視界不良になることがなさそうなので、適任といえば適任だろうか。ここの明かりはスタールビーが作ってくれているので問題はない。
「イキイキしてるな」
呆れるような声を出しながら、オパールも階段から姿を現した。
「オパールさん、あっちは大丈夫だと思います?」
「うーん。のんびりしていたらやばいかもっつーことで、そこの彼を追い払うんじゃなくて取っ捕まえようと思う。廃墟とはいえここは精霊管理協会管轄のエリアなんでな。勝手なことされると困るわけで」
会話中を呑気に待っていてくれるような相手ではない。アメシストとシトリンが睨みをきかせている間にも次の手を打つためにステラが動く。
それにめざとく気づいたオパールは対応すべく跳躍した。
「商店街のど真ん中に魔物を放ったのにも、ウチの施設に魔物をばら撒いたのにも、関わっているんだろ、きみが」
「さあ、なんの話です?」
どこからか複雑なきらめきを持つ石の剣を喚び出して、オパールが薙ぐ。応戦する形でステラも青い石の剣を取り出して受けた。
重い打撃音がフロアに響く。続く剣戟の動き。ぶつかるたびに音がこだまする。
衝撃波が私たちの髪を弄んだ。剣で戦っているように見えるが、特殊な剣なのかあるいは術を纏っているのか、通常の物理戦闘ではなさそうだ。
0
気軽に感想をどうぞ( ´ ▽ ` )ノノΞ❤︎{活力注入♪)
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

酒の席での戯言ですのよ。
ぽんぽこ狸
恋愛
成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。
何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。
そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。

好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる