婚約者に逃げられて精霊使いになりました〜私は壁でありたいのに推しカプが私を挟もうとします。〜

一花カナウ

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3:運命の歯車が回りだす

裏で糸を引いていた者

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 スタールビーの切実な問い。
 相手の高らかに笑う声がフロアに反響する。

「あはははっ! 愚問ですね。それが運命で、最も美しい結末だからですよ。あなただって、本当はわかっていらっしゃるのでしょう? 彼女の死を退けようとしなかったのはそういうことだったんじゃないですか?」
「俺はあの選択を後悔している。あんたが後悔するようなタマじゃないってのはわかるが、最善だとは思えない。ちゃんと話し合えよ」
「他人が口を挟むことじゃない。協力者にあなたを選んだことが失敗でしたかね。あなたなら、わかってくれると信じていたのに」
「そうだな、同じ鋼玉だが……似てると思ったのが間違いか」

 地面を踏みしめる音が二つ。次の攻撃が、おそらくふたりの戦いの終焉を告げることになる。
 私はアメシストの腕を振り解いて、階段の外に飛び出した。

「おやめなさい。ステラ! 私ならここにいます」
「お嬢さん⁉︎」

 スタールビーをかばうように立ち、離れて構えていたきらめく青い髪の男と対峙した。
 彼は私を見るなりうっとりと微笑む。

「ああ、我が愛し子」

 知っている。私をずっと監視してきた美しい男――ステラ。人間ではないような気はしていたが、鉱物人形の知識を持っていなかった私は彼の正体を知らないままそばに置いていた。
 今ならわかる。彼は星条蒼玉の鉱物人形、スターサファイヤだ。

「彼には世話になったの。傷つけるようなことは許しません」
「世話……ですか。そいつはあなたを巻き込んだ張本人ですよ? それなのに、かばうのですか?」

 心底不思議そうにステラは告げた。

「私は感謝していますよ。それに今の話、聞いていたんですからね! 計画そのものはステラの発案でしょ? スタールビーこそ巻き添いではありませんか」
「共犯者ですよ。心変わりをされたようではありますがね」

 そう答えて静かに笑う。
 彼はいつもそうだ。私が反論しても、それが正論であったとしても、決して動じない。それどころか私を嘲笑しているようにも感じられる。
 こっちのペースが乱されるなあ……
 気を取り直し、私は説得を試みる。

「とにかく、です。私はスタールビーを傷つけてほしくない。戦闘はここで終わりにしてください」

 私の訴えに、ステラは腕組みをした。

「あなたがワタシと共に来てくださるなら、消えていただく必要もないので構いませんよ」
「私は実家には戻りません。これ以上みなさんにご迷惑をおかけしたくはないので、家を出ます。もともと来月には結婚をして家を出る予定だったんですから、構いませんでしょう?」

 すると彼は私に困ったような顔をした。

「そうはいかないんですよ。あなたは来月、死ぬ予定だったんですから」

 私は聞き間違いかと思って首を傾げる。目を瞬かせた。
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