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3:運命の歯車が回りだす
幽霊騒ぎとの関連は?
しおりを挟む「そういえばそうだったな……」
「部屋が荒らされているわけじゃ無かったら、急がなくてもいいかなって判断するんだけど、どう?」
次のパンを受け取ってもぐもぐしたあとにセレナが尋ねる。そんな仕草をとても自然に行うのをみるに、普段から何か作業をしながら食べ物を摘んでいるのだろう。的確なタイミングで給仕するオパールがすごい。
「部屋は……そうだな。来た時と大きくは変わっていなかったな」
「じゃあ、方針を考えながら食事ということで」
オパールから受け取ったグラスで水を飲み込んだ。軽い朝食を終えてしまったセレナに、私は意見を求めることにする。
「……セレナさんには、スタールビーさんの意図がわかっているってことですか?」
「ふふ、そんなことはないんだけれど、たぶん、心配ないだろうなって。かつての仲間も置いて行ったんでしょ? 離れ離れになることを恐れていた彼が。ということは、ひとりでしないといけない何かがあったってことだと思うのよねえ。呑気に朝食している間に戻ってくるかも」
信頼しているのとは違うようだが、セレナの意見には納得できる。
私の下につきたいと言い出した理由が、かつての仲間とバラバラになりたくないと話していたことは記憶にあるし、その想いは嘘偽りのないものだろうと受け止めている。
そこにルビがむすっとして割り込んできた。
「だったら、アイツは朝食までに用事を済ませて戻ってくると思うんだが」
「そうですねえ……。彼のことですから、行った先で何か起きて戻れなくなっている可能性は否定できないかと」
ルビの意見にダイヤが同意して補足した。
それもそうだな。
セレナも私と同様にふたりの意見で考えを改めたようだ。
「ああ……それはあり得るか。じゃあ、ちゃちゃっと食べて行動ね。ジュエルさんは食事しっかり摂って。オパールは念のためにお弁当をまとめておいてくれる?」
「そうだな。万が一に備えて用意しよう。みんなは先に食べてくれ」
オパールは厨房に戻ってしまう。
「なんか面倒なことになったねえ」
「ほうっておいてもいいのではないか?」
アメシストとシトリンがそれぞれに感想を告げる。私は苦笑した。
「確かに、ある意味では他人事ではあるんですけどねえ」
「マスターは、彼も仲間に引き入れたいのか?」
シトリンの問いにゆっくりと頷く。
「彼の願いは、かつての仲間達と離れ離れになることなく一緒に過ごすこと、なのでしょう? ルビさんとダイヤさんが私と契約することにしたわけなので、その気持ちを踏みにじるのはどうかと思うんですよ」
「お人好しだなあ」
シトリンのあきれる声。
対してアメシストは朗らかな顔をしていた。アメシストのほうがスタールビーを強く嫌っていたように感じていたのだが、それとこれとは別ということか。
「それに、なんとなく、ある人を思い出してしまうのでほうっておくのもどうかなあって」
「身内かい?」
少し驚いたような顔をしてアメシストが尋ねてくる。
「ええ。――まあ、今は様子見です。必要であれば私も動きますから、そのときには手を貸してください」
「了解だよ」
「承知した」
そんなこんなで、オパールが用意してくれた朝食はとてもおいしかった。
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