婚約者に逃げられて精霊使いになりました〜私は壁でありたいのに推しカプが私を挟もうとします。〜

一花カナウ

文字の大きさ
上 下
37 / 123
3:運命の歯車が回りだす

幽霊騒ぎとの関連は?

しおりを挟む

「そういえばそうだったな……」
「部屋が荒らされているわけじゃ無かったら、急がなくてもいいかなって判断するんだけど、どう?」

 次のパンを受け取ってもぐもぐしたあとにセレナが尋ねる。そんな仕草をとても自然に行うのをみるに、普段から何か作業をしながら食べ物を摘んでいるのだろう。的確なタイミングで給仕するオパールがすごい。

「部屋は……そうだな。来た時と大きくは変わっていなかったな」
「じゃあ、方針を考えながら食事ということで」

 オパールから受け取ったグラスで水を飲み込んだ。軽い朝食を終えてしまったセレナに、私は意見を求めることにする。

「……セレナさんには、スタールビーさんの意図がわかっているってことですか?」
「ふふ、そんなことはないんだけれど、たぶん、心配ないだろうなって。かつての仲間も置いて行ったんでしょ? 離れ離れになることを恐れていた彼が。ということは、ひとりでしないといけない何かがあったってことだと思うのよねえ。呑気に朝食している間に戻ってくるかも」

 信頼しているのとは違うようだが、セレナの意見には納得できる。
 私の下につきたいと言い出した理由が、かつての仲間とバラバラになりたくないと話していたことは記憶にあるし、その想いは嘘偽りのないものだろうと受け止めている。
 そこにルビがむすっとして割り込んできた。

「だったら、アイツは朝食までに用事を済ませて戻ってくると思うんだが」
「そうですねえ……。彼のことですから、行った先で何か起きて戻れなくなっている可能性は否定できないかと」

 ルビの意見にダイヤが同意して補足した。
 それもそうだな。
 セレナも私と同様にふたりの意見で考えを改めたようだ。

「ああ……それはあり得るか。じゃあ、ちゃちゃっと食べて行動ね。ジュエルさんは食事しっかり摂って。オパールは念のためにお弁当をまとめておいてくれる?」
「そうだな。万が一に備えて用意しよう。みんなは先に食べてくれ」

 オパールは厨房に戻ってしまう。

「なんか面倒なことになったねえ」
「ほうっておいてもいいのではないか?」

 アメシストとシトリンがそれぞれに感想を告げる。私は苦笑した。

「確かに、ある意味では他人事ではあるんですけどねえ」
「マスターは、彼も仲間に引き入れたいのか?」

 シトリンの問いにゆっくりと頷く。

「彼の願いは、かつての仲間達と離れ離れになることなく一緒に過ごすこと、なのでしょう? ルビさんとダイヤさんが私と契約することにしたわけなので、その気持ちを踏みにじるのはどうかと思うんですよ」
「お人好しだなあ」

 シトリンのあきれる声。
 対してアメシストは朗らかな顔をしていた。アメシストのほうがスタールビーを強く嫌っていたように感じていたのだが、それとこれとは別ということか。

「それに、なんとなく、ある人を思い出してしまうのでほうっておくのもどうかなあって」
「身内かい?」

 少し驚いたような顔をしてアメシストが尋ねてくる。

「ええ。――まあ、今は様子見です。必要であれば私も動きますから、そのときには手を貸してください」
「了解だよ」
「承知した」

 そんなこんなで、オパールが用意してくれた朝食はとてもおいしかった。
しおりを挟む
気軽に感想をどうぞ( ´ ▽ ` )ノノΞ❤︎{活力注入♪)
感想 0

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

酒の席での戯言ですのよ。

ぽんぽこ狸
恋愛
 成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。  何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。  そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

処理中です...