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3:運命の歯車が回りだす
消えたスタールビー
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※※※※※
駆ける音がどんどん大きくなって、食堂のドアが大きく開かれる。焦る表情のルビがいた。
「スタールビーが居ない。便所にも風呂場にもいなかったんだが、アイツを最後に見たのはいつだ?」
「居ない、だって? セレナのところは?」
「寄っていないって」
オパールの問いに、ルビは首を横に振る。
「おやおや、失踪……ですか」
ダイヤが困ったような顔をして、脱いだエプロンを畳んだ。声のトーンは単調で、心配している気配は薄い。
「ダイヤは見ていないのか?」
「見ていないですねえ」
「……俺が最後に見たのは、寝る前だったか。割り当てられた部屋に入るのを見たのが最後のはず」
「荷物は?」
「残ってた。仲間も全員残ってるが、アイツだけいない」
この短時間で調べられそうなところは確認済みのようだ。ルビの返答にダイヤが腕を組む。
「失せ物探しにはトパーズでしたねえ。ルビも仕様上はできるはずですが」
「俺はそういう方向にはスキルを割り振ってねえんだよ。索敵なら得意だが」
「そういえばあなたは戦闘寄りでしたね」
ふぅ、とダイヤは小さく息を吐きだす。
「むしろ、ウチの部隊で探し物が得意なのはスタールビーのほうだろ。アイツの方が先に顕現していたから、俺は戦闘に励んでいるわけで」
「となると、意図的に失踪したのであれば、探すのは骨が折れるかもしれませんね」
ルビとダイヤが話し合っているところに、セレナが食堂に入ってきた。
「もう。なんの騒ぎ?」
「スタールビーが屋敷から消えたらしい」
眠そうに欠伸をするセレナに、オパールが説明する。それを聞いた彼女は目を瞬かせた。
「なんで? 置き手紙は?」
「きみは自主的に失踪したって考えているのか」
「まあ、外部からの侵入は難しいと思っているからねえ。出ていくのは節約のために簡単にしておいたし」
「なるほどな。幽霊騒ぎとの関連は疑わないのか」
「彼が怖がっているのは、演技だと思ってて」
そう答えるセレナに、オパールは持っていたトレイからパンをひとつ渡す。躊躇なくそれを頬張って、セレナはニコッと笑った。
「まあ、そうだな。この保養所のことも前から知っていたみたいだし、なにか意図があるんだろう」
「ルビさんとダイヤさんは、スタールビーさんが幽霊やオバケが苦手だって知っていたの?」
パンを飲み込んだセレナが話を振ると、ふたりは顔を見合わせて横に振った。
「いや、覚えがない」
「幽霊だのオバケだのという話題に触れたこと自体がなかったこともあって、存じませんねえ」
ということは、スタールビーがオバケが苦手だと公言したのは今回が初めてだったということか。
私はみんなの様子を見ながら考える。
私が最後に彼を見たのは夕食を終えて食堂を出たときだ。そのときに異変は無かったような気がする。
「マスターはスタールビーの気配を辿れないのか?」
ルビが私に声をかけた。私は首を横に振る。
「スタールビーさんとは正式に精霊使いとしての契約を結んでいないんですよ。ルビさんとダイヤさんは私が喚び出したこともあってある程度は気配を辿れるんですが」
ちなみにアメシストとシトリンについては彼らよりもずっとはっきり気配を感じられる。契約の都合なのか、私との結びつきが強いようだ。
ルビが大きく息を吐いた。がっかりした様子である。申し訳ない。
駆ける音がどんどん大きくなって、食堂のドアが大きく開かれる。焦る表情のルビがいた。
「スタールビーが居ない。便所にも風呂場にもいなかったんだが、アイツを最後に見たのはいつだ?」
「居ない、だって? セレナのところは?」
「寄っていないって」
オパールの問いに、ルビは首を横に振る。
「おやおや、失踪……ですか」
ダイヤが困ったような顔をして、脱いだエプロンを畳んだ。声のトーンは単調で、心配している気配は薄い。
「ダイヤは見ていないのか?」
「見ていないですねえ」
「……俺が最後に見たのは、寝る前だったか。割り当てられた部屋に入るのを見たのが最後のはず」
「荷物は?」
「残ってた。仲間も全員残ってるが、アイツだけいない」
この短時間で調べられそうなところは確認済みのようだ。ルビの返答にダイヤが腕を組む。
「失せ物探しにはトパーズでしたねえ。ルビも仕様上はできるはずですが」
「俺はそういう方向にはスキルを割り振ってねえんだよ。索敵なら得意だが」
「そういえばあなたは戦闘寄りでしたね」
ふぅ、とダイヤは小さく息を吐きだす。
「むしろ、ウチの部隊で探し物が得意なのはスタールビーのほうだろ。アイツの方が先に顕現していたから、俺は戦闘に励んでいるわけで」
「となると、意図的に失踪したのであれば、探すのは骨が折れるかもしれませんね」
ルビとダイヤが話し合っているところに、セレナが食堂に入ってきた。
「もう。なんの騒ぎ?」
「スタールビーが屋敷から消えたらしい」
眠そうに欠伸をするセレナに、オパールが説明する。それを聞いた彼女は目を瞬かせた。
「なんで? 置き手紙は?」
「きみは自主的に失踪したって考えているのか」
「まあ、外部からの侵入は難しいと思っているからねえ。出ていくのは節約のために簡単にしておいたし」
「なるほどな。幽霊騒ぎとの関連は疑わないのか」
「彼が怖がっているのは、演技だと思ってて」
そう答えるセレナに、オパールは持っていたトレイからパンをひとつ渡す。躊躇なくそれを頬張って、セレナはニコッと笑った。
「まあ、そうだな。この保養所のことも前から知っていたみたいだし、なにか意図があるんだろう」
「ルビさんとダイヤさんは、スタールビーさんが幽霊やオバケが苦手だって知っていたの?」
パンを飲み込んだセレナが話を振ると、ふたりは顔を見合わせて横に振った。
「いや、覚えがない」
「幽霊だのオバケだのという話題に触れたこと自体がなかったこともあって、存じませんねえ」
ということは、スタールビーがオバケが苦手だと公言したのは今回が初めてだったということか。
私はみんなの様子を見ながら考える。
私が最後に彼を見たのは夕食を終えて食堂を出たときだ。そのときに異変は無かったような気がする。
「マスターはスタールビーの気配を辿れないのか?」
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「スタールビーさんとは正式に精霊使いとしての契約を結んでいないんですよ。ルビさんとダイヤさんは私が喚び出したこともあってある程度は気配を辿れるんですが」
ちなみにアメシストとシトリンについては彼らよりもずっとはっきり気配を感じられる。契約の都合なのか、私との結びつきが強いようだ。
ルビが大きく息を吐いた。がっかりした様子である。申し訳ない。
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