婚約者に逃げられて精霊使いになりました〜私は壁でありたいのに推しカプが私を挟もうとします。〜

一花カナウ

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3:運命の歯車が回りだす

保養所としては機能していないが。

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「浄化……ここはいささか瘴気が濃いように思えますが、人体に影響はないのでしょうか?」

 周辺を見渡して、ダイヤが心配そうに告げる。瘴気の濃さを気にしていたのは私だけではなかったようだ。

「そこは、この編成だし、問題ないと判断したわ。念のために、建物やジュエルさんの私室には私が結界を張るわね」
「そういうことなら、承知した」
「魔物以外が出ても、俺らが追っ払ってやるから心配いらないさ」

 ルビが任せろとばかりに腕まくりをする。
 うーん。この様子だと、暴れ足りなかったのかなあ。久しぶりの戦闘だっただろうし、そういうものかしら。
 好戦的な性格でもあるのだろう。ルビをマメに戦場に出して適度にフラストレーションを発散させておこうと密かに誓った。

「建物内には人はいないんだよね?」
「俺もそこは気になった」

 しばらく様子をうかがっていたアメシストが尋ね、シトリンも同意する。
 宙空にディスプレイを出して何やら操作をしていたオパールが手を止めた。

「ああ、いないぜ。ここで研修するにあたって、一般人やオレら以外の協会職員は配置していないからな。だから掃除も食事も自分たちでやる。どっちにしろ、部隊に配属されたらみんな自分たちでやるんだ。訓練だと思って頑張ってくれ。料理はオレが教えよう」
「オパールは芸術の精霊から祝福を受けているからね、料理も上手なのよ」
「セレナは壊滅的な腕前だから、厨房には近づけさせるな。絶対に、だぞ」

 何かを思い出して怯えるようにオパールが告げるので、セレナを除いた一同が深刻な表情で頷いた。

「え、料理を担当しなくていいのは嬉しいけど……私ってそんなん?」

 不思議そうにするセレナの両肩に手をのせて、オパールはジッと彼女を見つめた。

「厨房はオレに任せるんだ。食材や機材を無駄にしたくないし、始末書も書きたくない」
「……はい」

 一体何をどうするとそういう言動になってしまうのかわからないが、日常的に魔物と命のやり取りをしているはずの鉱物人形を怯えさせるなんて大した腕前なのだろう。声から察せられる感情も、昔何か事件があったがゆえの反応なのは確実だと思えた。
 ちなみに私も料理はできない。させてもらえなかったのもあるし、そもそも作るよりも食べるほうが好きだ。
 気を取り直すように、セレナが両手をポンっと叩いて注目を集める。

「じゃあ、部屋を決めましょうか。それでお風呂と夕食を済ませて、今日は解散ってことで」

 セレナの提案に、私たちは従うことにしたのだった。

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