婚約者に逃げられて精霊使いになりました〜私は壁でありたいのに推しカプが私を挟もうとします。〜

一花カナウ

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2:私の人生が動くとき

訳アリなので詮索はなしで。

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「紫黄水晶(アメトリン)から喚び出したので、影響があるんでしょう」
「ああ、そういうことか。アメトリンとしては喚ばなかった……そういうことか」
「意図してそうしたわけじゃないので……」

 紫黄水晶はアメトリンとして喚ぶのが多数派ということだろうか。
 これまでの持ち主は喚べなかったって言ってたもんね。あの石は、ふたりとして喚ぶのがふさわしい石だったのだ。

「そうかそうか。きみは研修生なんだったな。うちのマスターが教官だったら、護衛としてオレも世話になるのか。そうなったら、仲良くしてくれよ」
「はい」

 オパールは気さくに告げてニコッと笑った。話をしている分にはいいひとだ。彼とは仲よくしたいな。

「ところで、その封筒は?」
「ああ、これは個人的な書類なんで。数少ない私の荷物です」
「……へえ、きみは。いや、詮索はしないほうがいいんだったか」

 シトリンに持たせていた封筒を見て、オパールは何かを察したらしい。一瞬だけ険しい顔をして、でもにこやかな表情に戻った。
 封筒には宛名と元婚約者の家柄を示すエンブレムが入っていたはずだが、彼はそのどちらに反応したのだろうか。
 まあ、あの人、有名人らしいから、見る人が見ればわかるんでしょうね。
 精霊管理協会と対立している組織に多額の寄付金を送っていると聞いている。協会所属であるオパールがいい顔をしないのは理解できた。

「そうしていただけるとありがたいです。少なくともここでその話題は、避けてほしいですね」

 私が苦笑すると、オパールは大きく息を吐き出した。

「なるほど、訳アリか。ま、ウチのマスターも訳アリな人間だし、そういう奴らが身を寄せるのも道理なんだろうな」

 面倒くさそうに頭をかいた。

「彼女も?」
「きみほどじゃないだろうけどね。機会があったら、聞いてみるといい。オレから喋るのはなんか違うだろ?」
「そうですね」

 そんなやり取りをしている間に、テント内にセレナが戻ってきた。

「あら、打ち解けてる?」
「まあな。仲よくなれそうだ」
「それは良かったわ」

 セレナはオパールを見ていた顔を私に向けた。キリッとしたお仕事の顔だ。

「魔物は退けたって。もう大丈夫」

 その言葉を聞いて、私は安堵した。できるならもう魔物に遭遇したくない。
 アメシストとシトリンを見やると、ふたりともほっとしたような顔をしていた。
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