婚約者に逃げられて精霊使いになりました〜私は壁でありたいのに推しカプが私を挟もうとします。〜

一花カナウ

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2:私の人生が動くとき

混じり合う石

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「ジロジロ見るものじゃないですよね。失礼しました」
「あ、いや。オレらはもともと鉱物でもあるからな、人間に見られることについては気にしていないやつの方が多いんじゃないかと思う」

 そういう考えもあるか。
 やはり興味深い。

「後ろの、きみの鉱物人形なのか?」

 護衛のように付き従っているアメシストとシトリンに目を向けて、オパールが尋ねた。

「はい」
「少し変わってるな。アメシストにシトリンが、シトリンにアメシストが混じってる」

 そう告げて、オパールは彼らの髪の内側を見るように指し示した。
 どういうことか瞬時にわからなくて、私はふたりに近づく。背伸びしてそれぞれの首のあたりを覗いてみたけれど、互いが混じっているというのがどういう状態なのか理解できない。

「うーん。ちょっと失礼しますね」
「うん」
「おう」

 手を伸ばし、彼らの短い髪に触れる。鏡写しのように左右対称でよく似ているふたりであるが、アメシストのほうが襟足が長いことに気づいた。

「ふふ。くすぐったい」
「ああ、すみません」

 アメシストがはにかんで笑うので、私は手を戻した。キラキラしたコシの強い髪は、色が紫水晶に似ているのに、輝きに黄水晶が混じっている。内側の髪がより顕著に色が変わるようだ。
 続いてシトリンの髪に触れれば、こちらは黄水晶の輝きの中に紫水晶が混じっているのがわかった。やはり内側の方が変化を感じやすい。

「……本当だ」

 シトリンは髪をいじられているのが心地よかったのか、気持ちよさそうにしていた。私の手が離れていくのを名残惜しそうに見てくる。
 ふたりとも触られるのが好きなんだな。

「オレが言っている意味、伝わったか?」
「これが普通のことじゃないってことですよね」

 鉱物人形の存在を知ったのは昨日のことだし、標準的な仕様を私は把握していない。教えてもらえるなら聞いておこう。
 確認する私に、オパールは頷く。

「そうだな。例えば、なんだが。オレは蛋白石の鉱物人形で、同じ蛋白石を元にした鉱物人形――そういうのを同位体って呼んでるが、その同位体にはいろんな色がある」

 そう告げて、彼は自分の黒っぽい外套を摘んでひらひらさせる。

「オレは黒蛋白石が核なので黒っぽい容姿だが、協会で働いている連中は白っぽいほうが多数派。色違いが多いのもオパールの同位体の特徴だ。そんなこともあって、オレはわりとほかの鉱物人形の容姿を気にする癖があるんだが……彼らみたいなのは初めてだ」

 珍しいのか。
 そういえば、スタールビーもそんなことを言っていたような気がする。
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