婚約者に逃げられて精霊使いになりました〜私は壁でありたいのに推しカプが私を挟もうとします。〜

一花カナウ

文字の大きさ
上 下
20 / 123
2:私の人生が動くとき

目的地に到着しました

しおりを挟む
「――あら、思ったよりも早かったじゃない」

 私たちを見つけるなり、入院中にお世話になっていた女性職員がこちらにやってきた。彼女は怪我もなく元気そうで安心する。
 私はシトリンに下ろしてもらい、向かい合う。

「早い……のですかね? こちらの被害はほぼないです」

 私が手短に状況報告をすると、女性職員は私の後ろで控えていたルビとダイヤに目を向けた。

「鉱物人形が増えてる?」
「ええ、まあ……スタールビーさんの勧めで、喚び出してしまいました……問題ありますよね?」

 恐る恐る確認すると、女性職員は首を横に振った。

「とんでもない。というか、他の部隊にいた鉱物人形と契約できるなんて、むしろなかなかすごい才能よ。相性の問題もあるから、簡単にいかないことの方が多くて。へえ、そうなのか……」

 彼女がまじまじと私を見ていると、ルビが背後からぎゅっと抱きしめてきた。ビクッと身体が震えてしまったが、離すどころかしっかりくっついてくる。
 何事ぞ⁉︎
 どう対処したらいいのかわからなくて、身体がこわばってしまった。動かない。
 耳元あたりに頬擦りされるとゾクッとした。

「彼女はとてもいい。俺としては申し分ないマスターだ。戻れと言われても俺は従わないぞ」

 私の位置からはよくわからないのだけども、女性職員に対して威嚇しているように感じる。戦闘後だから気が立っているのもあるのかも知れない。
 私がもがけるようになると、隣のダイヤがルビの首根っこを引っ張って私から剥がしてくれた。
 やれやれ。
 ホッと胸を撫で下ろす。背後を取られないように横を向くのも忘れない。
 ダイヤはルビを呆れた目で見つめる。

「貴方はマスターを襲わないでください。風紀が乱れます」
「くぅ……堅物ダイヤ。こっちは戦闘で疲労しているんだから、回復くらいいいだろ? 彼女の魔力、すごく美味しいぞ」
「魔力が美味であることは否定しませんが、今後は許可をとるように」
「むっ。……嫌がっているようには思えなかったが。なあ?」

 ルビが親しげに声をかけてくるので、私は両手を胸のあたりまで上げて拒絶を示した。

「いきなり触るのはなしです」
「ええー」

 不貞腐れるルビを見て、ダイヤとシトリンが同時にため息をついた。
 スタールビーの明るく笑う声が響く。

「相変わらずだな」
「ルビと一緒に呼ぶことを勧めてくださったことを感謝しましょう、スタールビー」
「性質的には俺も似たもんだから、止めにくいんでな」
「そうでしたね。貴方の面倒も私がみますよ」
「はっはっは」

 彼らの関係もいろいろあるようだ。
 熟考している余裕がなかったから勢いで喚んだけど、上手くやっていけるものかしらね……
 不安に感じていると、抱きかかえていた封筒が持っていかれて、代わりのように左右から手を取られた。
しおりを挟む
気軽に感想をどうぞ( ´ ▽ ` )ノノΞ❤︎{活力注入♪)
感想 0

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

酒の席での戯言ですのよ。

ぽんぽこ狸
恋愛
 成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。  何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。  そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

処理中です...