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2:私の人生が動くとき

病棟からの脱出

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「ええ、そっち⁉︎」
「あはは。廊下も湧きはじめてるんだよねえ。外に出るならこっちの方が早いんだ。――適宜、魔除け張ってく」
「わかった」

 先にアメシストが外に飛び出し、次に私を横抱きにしたシトリンが続く。
 後方で扉が破られる音がした。判断は合っているようだ。

「おいおい、これ、お嬢さんが狙いだったりしないかい?」

 追いかけて跳んできたスタールビーが揶揄い口調で告げる。

「もしそうだったら、私と契約するのは見送りますか?」
「いや、それはそれで退屈しなさそうでアリだ」

 そう返事をして、彼は後方に手のひらを向ける。赤い閃光が空間を貫き、風が吹き荒れた。
 追いかけてきた飛翔型の魔物がそれに巻き込まれて霧散する。
 その奥にいたルビとダイヤはうまくかわして、さらに後方の魔物の攻撃を防いでいる。ただ正確にどういう攻撃なり防御なりをしているのかは、シトリンの腕の中なので確認するのは難しい。
 まもなく地面に着地。私がいた部屋は五階だったのだが、そんな場所から飛び降りても平気な顔をしているあたり、やはり彼らは人間ではない。

「万が一を想定して避難マニュアルを確認していたけれど、役立つ日がこんなに早く来るなんてねえ」

 言いながらアメシストが手を空にかざせば、生じた薄い光の壁のようなものが飛んできた何かを弾く。

「もし本当に、魔物の狙いがお嬢さんなら、月長石も喚んでおくのをお勧めする。あいつの予知は有能だ」
「検討しておきます」

 月長石には災いを退ける効能があると聞く。それが予知として持ち主に作用するという話を私は知っていた。検討しておきたい。
 すると、アメシストがムッとした。

「マスターは黙って。スタールビーも話しかけない。僕はマスターを狙っているんじゃなくて、君を狙っているって説も推しておくよ」
「おっと、それはそうだな。なら、一度別れるか?」
「いえ。安全な場所に逃げるまでは共に」
「承知した」

 アメシストとシトリンが少しピリッとしたのを感じたが、私はスタールビーを見極めたいと思っているのだ。彼の真意がどこにあるのか、本当に仲間に引き入れて問題がないのか。
 いや、今は、逃げ切ることを最優先にしよう。
 私の指示に従って、ルビとダイヤが敵を蹴散らしている。近接戦闘が得意なルビ、遠距離攻撃の得意なダイヤという組み合わせで、追手を確実に仕留めている。
 ふむふむ。前回は大型のが一体だけだったけれど、今回は小型が多いのね。
 アメシストが合流した時に「湧いている」と表現していたが、まさにそのような感じでぽこぽこ湧いているらしかった。次から次に魔物が押し寄せてくる。スタールビーがルビとダイヤを呼ぶことを勧めなければ、だいぶ苦戦を強いられていたことだろう。
 私たちはアメシストの誘導で移動していく。危険な場所は回避して、追手を適度に倒し、行く手を阻む魔物は適宜殲滅して、危なげなく進む。連携も悪くなさそうだ。
 やがて精霊管理協会の職員たちのいる場所に合流した。
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