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2:私の人生が動くとき

それぞれの思惑と駆け引き

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 話が終わったと考えたのだろう。シトリンが私のいるベッドのそばにお盆を置いてくれた。

「協会と取引したんだそうだ。マスターの下で働くか、協会管轄で働くか選ぶように、と」

 シトリンがアメシストと私に補足してくれた。
 つまり、スタールビーは私の下で働くのがいいと思っているわけだ。なにが気に入ってくれているのか謎だけれど、精霊管理協会よりはマシであると。

「ま、そういうことだ」
「でもですね。私はまだ精霊使いになっていないですし、なろうとも思っていないわけですよ」

 そう返せば、さんにんとも私を驚いた顔で見た。
 え、これはどういう反応です?

「僕は、朝の一件で精霊使いになって独立するんだと思っていたよ?」
「同じく」

 アメシストの言葉に、シトリンが頷く。

「協会職員も、彼女は精霊使いになるしかないから、安心して口説くといいって話していたが」

 スタールビーも驚いて目を瞬かせていた。

「ええ……」

 そのタイミングで、ディスプレイがパッと浮かんだ。女性職員が出てくる。

「話はまとまったかしら?」
「いやいや、私、まだ精霊使いになるって決めていないですけど⁉︎」

 抗議せねば、なし崩し的に精霊使いされてしまう。
 家を追い出されるなら精霊使いになろうと迷ってはいたが、まだ家族と連絡をとっていない。勝手なことをして完全に縁が切れてしまうのは困る。
 あんな家族であっても、私にとっては世話になった人たちなのだ。まだ何もお礼できていないのに、逃げるように飛び出すのはいかがなものかと思う。
 戸惑う私に、女性職員は首を傾げた。

「あら、そうだった? 一応、あなたには仮免許証が発行されているのよ。鉱物人形を病院内で使役する権利を得るにはどうしても必要だったから。研修は後回しでいいって、特例措置よ」
「それはありがたいですけど、話は別です」
「それは残念ね」

 私は精霊使いになることを望まれているようだ。
 それは私に才能があるから? それとも、たんに人材不足だから?
 命が保証された状態で匿うことと引き換えに家族から拘束されて生きてきた私が、そこから出た途端に精霊管理協会に利用されるようになるのは勘弁願いたいところだ。我慢強いほうだとは自負しているけれど、よく考えて行動したい。

「もう少し、考える時間をください」
「そうね。まだ退院まで時間がかかりそうだし、ゆっくり考えるといいわ。前向きな返答を待ってる」

 ディスプレイがパッと消える。

「って、スタールビーさんを追い出してほしいって伝えるの忘れてた……」
「お嬢さん、なかよくしようじゃないか。仲間がみんな、次の契約者は君が良いって言ってるんだ。会ったからわかるだろう?」

 ため息をつく私に、スタールビーは迫ってくる。

「好意的な意志を感じはしましたけど、半端者がおいそれと契約するものじゃないってことくらいは弁えているつもりです。今日のところはお引き取りください」
「行き場がないってのに、冷たいなあ」

 次にため息をついたのはスタールビーだった。
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