13 / 18
最後までするならあなたがいい
3
しおりを挟む「とにかく、いい子だから我慢してね。気絶している君に何度も吐精しちゃって、冷静さを取り戻してからずっと後悔しているんだ。このくらいはさせて」
「え、え……待って、何度もって……」
「本当に、こんなつもりじゃなかったんだ……薬湯事件のときに気づくことができれば、回避できていたんだろうけど……本当に申し訳ない……」
指はしっかりと仕事をしているが、うなだれたアナスタージウス室長は心なしか縮んで見える。
「謝るくらいなら、きちんと説明してください。何でこんな……あと、水を浴びて服を着たいんですけど」
いつまでも半裸でいるのはごめんなのだが、全身粘液まみれの汗まみれで不快である。まだ甘い匂いを感じるし、変な気分になっているのは触れられているからだけではないのだろう。洗い流して、服も洗濯をして、さっぱりしたい。
「ああ、そうだね。服は処置が終わってからで。あとは、いろいろ言いにくいんだけど……」
「もったいぶっていないで、教えてください」
薬湯事件のことが持ち出されたのも気にかかる。この事態を回避できたかもしれなかったのに見落としてしまっていたとも言われたが、つまりは何がどうだというのだろう。
薬湯事件も、粘液まみれ事件も、別に誰かが悪いというわけではないんじゃないの? 運がなかっただけの事故ではないの?
私が責めるように言うと、アナスタージウス室長は空いているほうの手で頬を掻く。うーんと唸ったあとに、盛大なため息をついた。
「――君はね、特殊体質の持ち主なんだよ。薬物の効能が変わってしまうタイプの。僕とは違ってね」
「特殊……体質……?」
薬物の効能が変わる、って? それに、僕とは違って、って何?
私が目を瞬かせていると、アナスタージウス室長は言葉を続けた。
「僕がこの研究を始めた理由、さっきははぐらかしてしまったけれど、実はこの特殊体質にあるんだ」
「え、室長も特殊体質……?」
聞き返せば、室長はゆっくり頷く。
「僕は生まれつき薬や毒に対して非常に鈍いんだ。それはどうも丈夫なのとは違うらしくてね。その違いに興味があって、僕は植物系の研究者になったんだよ」
このことはみんなには内緒だよ、と続けられて、私は自分が彼にとって特別な存在になれたような気がした。嬉しい。
「――そして、フィルギニア君。君は、無効化してしまう傾向の僕とは違って、薬物や毒物の効果を変更してしまうタイプのようだ。効き目を想定以上に引き上げてしまうことが多いのかな。検証が足りないから断定は避けるけど」
なるほど、それなら薬湯事件の理屈は通る。
だけど、室長に処方してもらった中和剤はあんまり効いていないのよね……。そういう面では、本来の効能を変えてしまうって予想は正しそうだけど。
アナスタージウス室長の考察は続く。
「その上、君の体液――例えば汗だけど、それと虫除けオイルが反応してしまったらしくて、ね。それがさっきの植物を刺激してしまったんだ。フェロモンが強く出た、ってことなんだけど……それで、本来はおとなしくて安全なのに、凶暴化したわけ」
なんとも迷惑な! でも、それが本当だったら、私はもうこの実験場に入れないわよね……助手のお仕事はどうすれば……
「最後の一線を越える前に見つけられたからよかったけれど、あのままだと君は何度もしつこく侵されて、達したときに発生する女性特有の香りを養分として吸い取られるところだったんだ。かつては拷問に利用したそうだよ」
聞きたくない注釈が入った。
なんつー植物をこんな場所で育てているんですか、室長……
おそらく、彼の趣味でこういう植物を育てているわけではないのだろう。
獣道を歩きながらこの実験場で管理している植物の説明を受けたとき、その主な用途は医療用だった。しかしその一方で、管理している一部は国で利用されてきた武器としての植物だったので、歴史的な価値を含めて育てて保存しているのだと考えられる。通路からも離れた深い場所で育てられていることも、安全管理の一環だったに違いない。
現象については、これ以上の解説はいらないだろう。検証が必要な部分もあるので、ここで議論をするには情報が足りない。
となると、私には別の疑問が湧いてくる。
「待ってください。自分が襲われた理由はわかりましたが……室長、どうして私を……その、抱いたんですか?」
1
お気に入りに追加
273
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる