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1色目 雨上がりの空の色
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「私、色が見えないんだ!」
色が見えない?
なんの冗談かと思って彼女を見ると、嘘はついてないとでも言うようにまっすぐとした綺麗な目線をサングラス越しに向けていた。
「え?色が見えない…?」
「1色型色覚異常って言うの。昔の言い方だと全色盲っていうんだよ」
「…全色盲」
色盲、何かで聞いたことある言葉。しかしその言葉の意味を理解するのに、少し時間がかかった。
「私、全部の色が見えないの!昔の映画とか写真、見た事ある?そんな感じのイメージみたい!」
彼女のみたいという表現が信憑性を高める。
「全部…白黒ってこと?」
「うん!白と黒しか見えない!濃淡とコントラストで色を判断するしかないの!不思議でしょ?」
濃淡やコントラストなんて言葉、テレビとかの設定でしか見た事ない気がする。
「難しいんだけど、反射した光の束は認識できないって聞いた。だから虹は見たことないし、これから先見えることもない!」
衝撃的で重たい内容とは裏腹に、彼女の語気は夏のように澄んでいて明るい。
僕は少し想像した。今見える景色の全てに色がなくなった世界を。それは酷く無機質で寂しい、そう思い─
「…ごめん」
思わず口をついて謝ってしまった。まさかそんなに重い問題を抱えていると思わなかったから。いや、あるいはかわいそうだと思ったのかもしれない。
「あ、それで謝られるの、私嫌い」
僕の言葉を聞き、彼女がズバッと言葉を紡ぐ。その声色は柔らかいままだが芯があった。
まっすぐ僕を見つめる彼女。茶色のサングラスの奥、瞳の黒に笑みはなく、哀れまないでと訴えかけていた。
その全てが、僕にかえって失礼な事をしたと思わせた。
「別に謝って欲しくて言ってないよ。ただ私は色が見えないだけ。それだけ!」
真面目な声色から一転、また明るい声でそう言う彼女。ふわっと一歩前に出て僕に近づく。短い髪が夏風に揺れた。
そんな姿を見て…この子は強い子だ、と。月並だけど思った。
色が見えない?
なんの冗談かと思って彼女を見ると、嘘はついてないとでも言うようにまっすぐとした綺麗な目線をサングラス越しに向けていた。
「え?色が見えない…?」
「1色型色覚異常って言うの。昔の言い方だと全色盲っていうんだよ」
「…全色盲」
色盲、何かで聞いたことある言葉。しかしその言葉の意味を理解するのに、少し時間がかかった。
「私、全部の色が見えないの!昔の映画とか写真、見た事ある?そんな感じのイメージみたい!」
彼女のみたいという表現が信憑性を高める。
「全部…白黒ってこと?」
「うん!白と黒しか見えない!濃淡とコントラストで色を判断するしかないの!不思議でしょ?」
濃淡やコントラストなんて言葉、テレビとかの設定でしか見た事ない気がする。
「難しいんだけど、反射した光の束は認識できないって聞いた。だから虹は見たことないし、これから先見えることもない!」
衝撃的で重たい内容とは裏腹に、彼女の語気は夏のように澄んでいて明るい。
僕は少し想像した。今見える景色の全てに色がなくなった世界を。それは酷く無機質で寂しい、そう思い─
「…ごめん」
思わず口をついて謝ってしまった。まさかそんなに重い問題を抱えていると思わなかったから。いや、あるいはかわいそうだと思ったのかもしれない。
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まっすぐ僕を見つめる彼女。茶色のサングラスの奥、瞳の黒に笑みはなく、哀れまないでと訴えかけていた。
その全てが、僕にかえって失礼な事をしたと思わせた。
「別に謝って欲しくて言ってないよ。ただ私は色が見えないだけ。それだけ!」
真面目な声色から一転、また明るい声でそう言う彼女。ふわっと一歩前に出て僕に近づく。短い髪が夏風に揺れた。
そんな姿を見て…この子は強い子だ、と。月並だけど思った。
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