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第五話 消えたおきつねさまと烏天狗
消えたおきつねさまと烏天狗3
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とはいえ、おきつねさまがどこにいるのかなんて、いくら乾くんだって知っているはずがない。どうするべきか方法を思いあぐねていると、乾くんがこんなことを提案してきた。
「妖怪のことは妖怪に訊いてみる……というのは?」
「へ?」
「ほら、類は友を呼ぶとか同じ穴のムジナなんてことも言うし、同じ妖怪同士ならなにか情報が出てくるかもしれない」
「なるほど~」
私は目から鱗が落ちたような気がした。今まで妖怪を毛嫌いして迷惑な存在とばかり思っていたから、逆に妖怪に頼るということに思い至らなかった。
「すごいね。乾くんって」
なにげなくそう言うと、乾くんはこちらが思っていた以上にびっくりした表情を浮かべた。
「すごい?」
「うん。だって、妖怪のことは妖怪に訊くなんて、私じゃ思いつかなかった。やっぱり乾くんに相談してよかったよ」
「そ、そうか」
ぽりぽりと鼻の頭を掻く乾くん。ちょっぴり照れているように見えるのは気のせい?
とりあえず、今後の方向性が決まったところで、私たちはさっそく作戦を実行することにしたのだった。
まず私たちが向かったのは、いつもおつかいに行くスーパーの途中にある小川。架けられた橋の上から下を覗くと、そこに丸い皿を頭に載せた緑色の妖怪が水辺で寝そべっているのが見えた。
「河童くーん! 久しぶり」
手を振って呼びかけると、すぐに河童はこちらに気がついて満面に笑みを浮かべた。
降り口から川のほうに下りて河童のいる場所に二人で向かっていくと、河童はぴょんぴょんと向こう岸から私たちのいる場所まで渡って近づいてきた。
「やあ、お嬢さんにお兄さん。お久しぶりだな~」
相変わらずののほほんとした口ぶりに、思わずくすりとしながら挨拶を交わす。
「うん。ちょっと久しぶりだね。あれからお皿また落っことしたりしてない? 大丈夫?」
「そんなおまぬけなことしねえだよ~。おいらこれでも慎重さには自信があるだよ」
と言って自信満々にうなずく河童だったが、どう見てもそう見えないのはなぜだろうか。
「まあ、とりあえず元気そうなのはよかった。それで、今日来たのはちょっときみに相談があってね」
「相談?」
「ああ。ちょっと訊きたいことがあってな」
乾くんも私と足並みを揃えるように声を出す。
「えっとね。きみに訊きたいことっていうのは、私と一緒にいた空孤のことなんだけど……」
経緯を説明していくことしばらく。河童はうんうんとうなずきながら、私たちの話を聞いていた。こちらの話が終わり、少しの間上を向いて考えるようにしていた河童は、ふとなにかを思い出したように目を見開いた。
「あ。そう言えば、この間お菊さんが空孤を見たって言ってただよ」
「お菊さんが?」
「うん。おいらはよく知らないけど、お菊さんに訊いてみるといいだよ」
「てゆうか、河童くん、お菊さんと普段から会ってるの?」
「うん。あれからおいらたちお皿好き同士で意気投合しただよ。それからはときどき会っておしゃべりするようになっただな」
なんと、あの怖いお菊さんと友達になったとは、この河童、ぼんやりしているようにみえて、なかなかすごい妖怪なのかもしれない。
「やっぱり人間でも妖怪でも、話してみないとわからないものだな」
「そうだ~。お菊さん、ちょっとこだわりが強くて難しいところもあるけど、つきあってみると結構いい妖怪なんだ~よ」
にこりと人好きのする笑みを浮かべる河童。小物妖怪と侮っていた自分の見る目のなさにグーパンチをお見舞いしたい。
「そっか。ありがとう! じゃ、これからお菊さんのところに行って空孤のこと訊いてみるね」
「今後またなにか情報が掴めたら教えて欲しい」
「わかっただよ~」
河童は愛想良く手を振りながら、川へと戻っていった。
「妖怪のことは妖怪に訊いてみる……というのは?」
「へ?」
「ほら、類は友を呼ぶとか同じ穴のムジナなんてことも言うし、同じ妖怪同士ならなにか情報が出てくるかもしれない」
「なるほど~」
私は目から鱗が落ちたような気がした。今まで妖怪を毛嫌いして迷惑な存在とばかり思っていたから、逆に妖怪に頼るということに思い至らなかった。
「すごいね。乾くんって」
なにげなくそう言うと、乾くんはこちらが思っていた以上にびっくりした表情を浮かべた。
「すごい?」
「うん。だって、妖怪のことは妖怪に訊くなんて、私じゃ思いつかなかった。やっぱり乾くんに相談してよかったよ」
「そ、そうか」
ぽりぽりと鼻の頭を掻く乾くん。ちょっぴり照れているように見えるのは気のせい?
とりあえず、今後の方向性が決まったところで、私たちはさっそく作戦を実行することにしたのだった。
まず私たちが向かったのは、いつもおつかいに行くスーパーの途中にある小川。架けられた橋の上から下を覗くと、そこに丸い皿を頭に載せた緑色の妖怪が水辺で寝そべっているのが見えた。
「河童くーん! 久しぶり」
手を振って呼びかけると、すぐに河童はこちらに気がついて満面に笑みを浮かべた。
降り口から川のほうに下りて河童のいる場所に二人で向かっていくと、河童はぴょんぴょんと向こう岸から私たちのいる場所まで渡って近づいてきた。
「やあ、お嬢さんにお兄さん。お久しぶりだな~」
相変わらずののほほんとした口ぶりに、思わずくすりとしながら挨拶を交わす。
「うん。ちょっと久しぶりだね。あれからお皿また落っことしたりしてない? 大丈夫?」
「そんなおまぬけなことしねえだよ~。おいらこれでも慎重さには自信があるだよ」
と言って自信満々にうなずく河童だったが、どう見てもそう見えないのはなぜだろうか。
「まあ、とりあえず元気そうなのはよかった。それで、今日来たのはちょっときみに相談があってね」
「相談?」
「ああ。ちょっと訊きたいことがあってな」
乾くんも私と足並みを揃えるように声を出す。
「えっとね。きみに訊きたいことっていうのは、私と一緒にいた空孤のことなんだけど……」
経緯を説明していくことしばらく。河童はうんうんとうなずきながら、私たちの話を聞いていた。こちらの話が終わり、少しの間上を向いて考えるようにしていた河童は、ふとなにかを思い出したように目を見開いた。
「あ。そう言えば、この間お菊さんが空孤を見たって言ってただよ」
「お菊さんが?」
「うん。おいらはよく知らないけど、お菊さんに訊いてみるといいだよ」
「てゆうか、河童くん、お菊さんと普段から会ってるの?」
「うん。あれからおいらたちお皿好き同士で意気投合しただよ。それからはときどき会っておしゃべりするようになっただな」
なんと、あの怖いお菊さんと友達になったとは、この河童、ぼんやりしているようにみえて、なかなかすごい妖怪なのかもしれない。
「やっぱり人間でも妖怪でも、話してみないとわからないものだな」
「そうだ~。お菊さん、ちょっとこだわりが強くて難しいところもあるけど、つきあってみると結構いい妖怪なんだ~よ」
にこりと人好きのする笑みを浮かべる河童。小物妖怪と侮っていた自分の見る目のなさにグーパンチをお見舞いしたい。
「そっか。ありがとう! じゃ、これからお菊さんのところに行って空孤のこと訊いてみるね」
「今後またなにか情報が掴めたら教えて欲しい」
「わかっただよ~」
河童は愛想良く手を振りながら、川へと戻っていった。
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