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澪ちゃん初めての出勤
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「つまり、私が今も生きてられるのは、その守護神のおかげって事ですか?」
まだ100%信じたわけじゃない。だけど、思い当たる節はたくさんある。
「たまには、ちゃーんと守護神に頭の中で良いから、お礼を言っておくんだよ。」
九十九は澪に向かって、大袈裟に拝むような仕草を見せた。
「あの、ちなみに私を守ってくれてる、その…守護神?はどんな姿なんですか?」
澪は、奈良の大仏を想像していた。
「あー…それはね…。知りたい?」
もったいぶってるだけなのか、それとも本当に言いたくないのか。表情からは読み取ることが出来ない。
というか、前髪が長すぎて正面を向いてると口元から判断することしか出来なかった。
「僕もそれを守護〝神〟って言っていいのかは、迷ったんだけど…。」
澪の背後に顔を向けながら話を続ける。
「八岐大蛇(ヤマタノオロチ)って 知ってるかい?」
「あ、知ってます!スサノオノミコトが退治した化物ですよね!しっぽから剣が出たって言う…。」
「そう。澪ちゃんは、中々の博識だね!」
パチパチと乾いた拍手の音が部屋に響く。
「その化物なんだよ、澪ちゃんを護ってる守護神は。」
八岐大蛇が、私の後ろに…?仏様は何処へ…。
「妖怪や怪異の中でも、八岐大蛇は凶悪ランキングトップ5に入るようなヤツだからね。それが人を護るために、守護神になってるなんてびっくりだよ。」
何を言えばいいのか、どう反応するのが正しいのかわからない。私の守護神が化物…?
「まぁ、中々受け入れるのは難しいよね。僕もこんなの見たのは初めてだ。いやぁー!良いものを見せて貰ってありがたい。」
そう言うと、まるで神社にお参りするかのように、パンっパンっと2回拍手をしてお辞儀をする。
「そうだなぁ…。音だけでも聞いてみる?」
「音…ですか?」
「うん。霊感ってのはね、霊感を持ってる人の側に居ればいるほど強くなるんだよ。さらに、僕はその道のプロだからね。元々、澪ちゃんに素質が無いわけじゃないから、音くらいなら簡単に聞かせられるよ。」
守護神の音…って何?気になる…。けど、それって聞いていいものなの?え、てかヤマタノオロチって日本語話せるの?頭って何個あるんだっけ。8個?9個?同時に話しかけられたらどうしよ…。
「そう言えば、霊を信じないって言ってたよね。」
「はっ!え?あ、はい。」
危ない…完全に脳内で現実逃避してた…。
「今すぐに目の前で見せるのは難しいけど、音だけでも聞いたら、澪ちゃんの霊や不思議なものに対する価値観が変わるかもしれない。どう?いい機会だと思わない?」
確かに、その通りかもしれない。もし、本当に目に見えない存在が本当に居るのだとしたら、それを知るチャンスだ。
「お願いします。私の守護神がどんなものなのか、知りたいです!」
九十九はその答えを聞くなり、ニコッと笑うと指をパチンっ!と鳴らした。すると同時に、視界が真っ暗になり全神経が嫌でも聴覚に集中する。
「…チャッ。グッチャ…。ズリュ…ズリュリュリュッ。」
「ギュッ、ゴリッ…ゴリッ。ジ…ジ…ブチッ!」
聞いたことの無いほど、不快な音が脳内に響き渡る。
「ヤァァァア…アァァァァ…アァ…アッ…。」
「ヤメ…ヤメテ…。ヤメテエェェェェェエ…。」
その合間に聞こえる、男なのか女なのかもわからない悲鳴。
やだ…何これ…。嫌だ…怖いっ…!聞きたくない!!!
耳を塞いでも、その不快な音と断末魔のような悲鳴は、頭の中で聞こえ続ける。
やだやだやだやだやだ。
誰か止めて…おかしくなりそう。
やだ…。まだ聞コエル。イヤ…ヤダヨ…。ヤ…。
パチンッ!と九十九の指を鳴らす音と同時に、あの悲鳴も不快な音も消え去った。
いつの間にか耳を塞いでいたはずの両腕を九十九に握られ、耳から手を離されていた。
「あ…あの…。今のは…。」
「とりあえず、その顔をなんとかしようか。」
そう言ってハンカチを渡される。
知らない内に涙が溢れ、顔がぐちゃぐちゃになっていた。
受け取ったハンカチで涙を拭いて鼻をかむと、少し落ち着きを取り戻し、「ありがどうごじゃいまず」とハンカチを返す。
「いや…。それ、あげる…。」とドン引きした顔で、拒否された。
ひどい。
でも、そのおかげか気持ちにも少し余裕が出てきた。
「あの…今の音…?声…?って…。」
「あれ?わからなかった?澪ちゃんの守護神、八岐大蛇が片っ端から引き寄せた霊を喰らいまくってる音だよ。」
やっぱり、そうなのか…。
何となく、そんな気はしていた。
まだ100%信じたわけじゃない。だけど、思い当たる節はたくさんある。
「たまには、ちゃーんと守護神に頭の中で良いから、お礼を言っておくんだよ。」
九十九は澪に向かって、大袈裟に拝むような仕草を見せた。
「あの、ちなみに私を守ってくれてる、その…守護神?はどんな姿なんですか?」
澪は、奈良の大仏を想像していた。
「あー…それはね…。知りたい?」
もったいぶってるだけなのか、それとも本当に言いたくないのか。表情からは読み取ることが出来ない。
というか、前髪が長すぎて正面を向いてると口元から判断することしか出来なかった。
「僕もそれを守護〝神〟って言っていいのかは、迷ったんだけど…。」
澪の背後に顔を向けながら話を続ける。
「八岐大蛇(ヤマタノオロチ)って 知ってるかい?」
「あ、知ってます!スサノオノミコトが退治した化物ですよね!しっぽから剣が出たって言う…。」
「そう。澪ちゃんは、中々の博識だね!」
パチパチと乾いた拍手の音が部屋に響く。
「その化物なんだよ、澪ちゃんを護ってる守護神は。」
八岐大蛇が、私の後ろに…?仏様は何処へ…。
「妖怪や怪異の中でも、八岐大蛇は凶悪ランキングトップ5に入るようなヤツだからね。それが人を護るために、守護神になってるなんてびっくりだよ。」
何を言えばいいのか、どう反応するのが正しいのかわからない。私の守護神が化物…?
「まぁ、中々受け入れるのは難しいよね。僕もこんなの見たのは初めてだ。いやぁー!良いものを見せて貰ってありがたい。」
そう言うと、まるで神社にお参りするかのように、パンっパンっと2回拍手をしてお辞儀をする。
「そうだなぁ…。音だけでも聞いてみる?」
「音…ですか?」
「うん。霊感ってのはね、霊感を持ってる人の側に居ればいるほど強くなるんだよ。さらに、僕はその道のプロだからね。元々、澪ちゃんに素質が無いわけじゃないから、音くらいなら簡単に聞かせられるよ。」
守護神の音…って何?気になる…。けど、それって聞いていいものなの?え、てかヤマタノオロチって日本語話せるの?頭って何個あるんだっけ。8個?9個?同時に話しかけられたらどうしよ…。
「そう言えば、霊を信じないって言ってたよね。」
「はっ!え?あ、はい。」
危ない…完全に脳内で現実逃避してた…。
「今すぐに目の前で見せるのは難しいけど、音だけでも聞いたら、澪ちゃんの霊や不思議なものに対する価値観が変わるかもしれない。どう?いい機会だと思わない?」
確かに、その通りかもしれない。もし、本当に目に見えない存在が本当に居るのだとしたら、それを知るチャンスだ。
「お願いします。私の守護神がどんなものなのか、知りたいです!」
九十九はその答えを聞くなり、ニコッと笑うと指をパチンっ!と鳴らした。すると同時に、視界が真っ暗になり全神経が嫌でも聴覚に集中する。
「…チャッ。グッチャ…。ズリュ…ズリュリュリュッ。」
「ギュッ、ゴリッ…ゴリッ。ジ…ジ…ブチッ!」
聞いたことの無いほど、不快な音が脳内に響き渡る。
「ヤァァァア…アァァァァ…アァ…アッ…。」
「ヤメ…ヤメテ…。ヤメテエェェェェェエ…。」
その合間に聞こえる、男なのか女なのかもわからない悲鳴。
やだ…何これ…。嫌だ…怖いっ…!聞きたくない!!!
耳を塞いでも、その不快な音と断末魔のような悲鳴は、頭の中で聞こえ続ける。
やだやだやだやだやだ。
誰か止めて…おかしくなりそう。
やだ…。まだ聞コエル。イヤ…ヤダヨ…。ヤ…。
パチンッ!と九十九の指を鳴らす音と同時に、あの悲鳴も不快な音も消え去った。
いつの間にか耳を塞いでいたはずの両腕を九十九に握られ、耳から手を離されていた。
「あ…あの…。今のは…。」
「とりあえず、その顔をなんとかしようか。」
そう言ってハンカチを渡される。
知らない内に涙が溢れ、顔がぐちゃぐちゃになっていた。
受け取ったハンカチで涙を拭いて鼻をかむと、少し落ち着きを取り戻し、「ありがどうごじゃいまず」とハンカチを返す。
「いや…。それ、あげる…。」とドン引きした顔で、拒否された。
ひどい。
でも、そのおかげか気持ちにも少し余裕が出てきた。
「あの…今の音…?声…?って…。」
「あれ?わからなかった?澪ちゃんの守護神、八岐大蛇が片っ端から引き寄せた霊を喰らいまくってる音だよ。」
やっぱり、そうなのか…。
何となく、そんな気はしていた。
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