186 / 195
本編
シャボン玉
しおりを挟む
到着した湖畔は、本当にとても綺麗な場所だった。
「ファルシュター、疲れてないか?」
お爺さまが湖がよく見える大きな木の下にシートを引いてくれ、クッションまで準備してくれている。
だが、自分は全く疲れていない。
だって、いつも通り歩いていないのだ。
森の入り口まではギル兄様の抱っこで運ばれ、そこからは熊の籠に揺られていただけだ。
疲れる要素が何処にも無いだろう。
「あい!ぼく、げんき!」
「そうか!今日はじいじとたくさん遊ぼう」
「うん。なにしゅる?」
何をして遊ぼうか迷ってしまう。
多分だが、ギル兄様は色々遊び道具も持ってきてくれているだろうが折角自然の中にいるのだから満喫したい。
「じいじとシャボン玉で遊ぼうか」
それはとても楽しそうだ。
「ルシー、遊ぶ前に少しお水飲んでね。僕とのお約束は覚えてる?」
そうだ。
遊びに行くと決まってからギル兄様と交わした約束事がある。
「だいじょぶ!ひちょり、うろろ、しにゃい!ちゃんと、にいしゃまのおてて、もってる」
森では1人で勝手に動かないと約束したのだ。
この森はとても大きいので迷子になると大変だから、何処かに行きたい時は必ずギル兄様と一緒に行動する事。
その際は、ちゃんと手を繋ぐ。
たったそれだけの約束なのだが、自分の足りない頭ではいつ反故にしてしまうかちょっと心配しているところだ。
いっそ物理的にリードを装着させてもらって、ギル兄様に手綱の様に持っていてもらいたいくらいである。
「僕と離れる時はソラかシーザーと一緒にいてね。カゲは今、何処にいるの?」
トカゲなら自分のフードの中だと思う。
ポケットか肩にいない時は、だいたいそこにいるのだ。
トカゲは呼ばれたのがわかったのか、フードから肩へ移動してきた。
「カゲはちゃんとルシーを見てるんだよ」
「ギルバートは心配性だな。わしもケルベロスもいる。絶対に迷子にもさせないし怪我も負わせんよ」
それを掻い潜ってでも迷子になると思われてしまうのが、恥ずかしながら自分なのである。
しかも、昨日のプチ家出騒動で現在、自分の信用度はゼロ、いや、マイナスだろう。
どうにか少しでも回復させたいところなので、今日は絶対に約束を守り通してみせると心に決めている。
「ほれ。シャボン玉だ。ファルシュターもやってみるか?」
あれ?
おかしいな。
思っていたシャボン玉と違う。
自分は息を吹いてシャボン玉を作るイメージだったのだが、何故か渡されたのは大きな注射器だった。
きっと先端の部分からシャボン玉が出てくる仕組みなのだろう。
ただ悲しいかな、自分の力では少しも空気を押し出す事が出来なかった。
お爺さまもギル兄様も楽々とシャボン玉を作り出しているのに、何故だ。
せめて1個くらい出てこい!
シャボン玉!
「ファルシュター、疲れてないか?」
お爺さまが湖がよく見える大きな木の下にシートを引いてくれ、クッションまで準備してくれている。
だが、自分は全く疲れていない。
だって、いつも通り歩いていないのだ。
森の入り口まではギル兄様の抱っこで運ばれ、そこからは熊の籠に揺られていただけだ。
疲れる要素が何処にも無いだろう。
「あい!ぼく、げんき!」
「そうか!今日はじいじとたくさん遊ぼう」
「うん。なにしゅる?」
何をして遊ぼうか迷ってしまう。
多分だが、ギル兄様は色々遊び道具も持ってきてくれているだろうが折角自然の中にいるのだから満喫したい。
「じいじとシャボン玉で遊ぼうか」
それはとても楽しそうだ。
「ルシー、遊ぶ前に少しお水飲んでね。僕とのお約束は覚えてる?」
そうだ。
遊びに行くと決まってからギル兄様と交わした約束事がある。
「だいじょぶ!ひちょり、うろろ、しにゃい!ちゃんと、にいしゃまのおてて、もってる」
森では1人で勝手に動かないと約束したのだ。
この森はとても大きいので迷子になると大変だから、何処かに行きたい時は必ずギル兄様と一緒に行動する事。
その際は、ちゃんと手を繋ぐ。
たったそれだけの約束なのだが、自分の足りない頭ではいつ反故にしてしまうかちょっと心配しているところだ。
いっそ物理的にリードを装着させてもらって、ギル兄様に手綱の様に持っていてもらいたいくらいである。
「僕と離れる時はソラかシーザーと一緒にいてね。カゲは今、何処にいるの?」
トカゲなら自分のフードの中だと思う。
ポケットか肩にいない時は、だいたいそこにいるのだ。
トカゲは呼ばれたのがわかったのか、フードから肩へ移動してきた。
「カゲはちゃんとルシーを見てるんだよ」
「ギルバートは心配性だな。わしもケルベロスもいる。絶対に迷子にもさせないし怪我も負わせんよ」
それを掻い潜ってでも迷子になると思われてしまうのが、恥ずかしながら自分なのである。
しかも、昨日のプチ家出騒動で現在、自分の信用度はゼロ、いや、マイナスだろう。
どうにか少しでも回復させたいところなので、今日は絶対に約束を守り通してみせると心に決めている。
「ほれ。シャボン玉だ。ファルシュターもやってみるか?」
あれ?
おかしいな。
思っていたシャボン玉と違う。
自分は息を吹いてシャボン玉を作るイメージだったのだが、何故か渡されたのは大きな注射器だった。
きっと先端の部分からシャボン玉が出てくる仕組みなのだろう。
ただ悲しいかな、自分の力では少しも空気を押し出す事が出来なかった。
お爺さまもギル兄様も楽々とシャボン玉を作り出しているのに、何故だ。
せめて1個くらい出てこい!
シャボン玉!
64
お気に入りに追加
3,375
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
俺の伴侶はどこにいる〜ゼロから始める領地改革 家臣なしとか意味分からん〜
琴音
BL
俺はなんでも適当にこなせる器用貧乏なために、逆に何にも打ち込めず二十歳になった。成人後五年、その間に番も見つけられずとうとう父上静かにぶちギレ。ならばと城にいても楽しくないし?番はほっとくと適当にの未来しかない。そんな時に勝手に見合いをぶち込まれ、逃げた。が、間抜けな俺は騎獣から落ちたようで自分から城に帰還状態。
ならば兄弟は優秀、俺次男!未開の地と化した領地を復活させてみようじゃないか!やる気になったはいいが………
ゆるゆる〜の未来の大陸南の猫族の小国のお話です。全く別の話でエリオスが領地開発に奮闘します。世界も先に進み状況の変化も。番も探しつつ……
世界はドナシアン王国建国より百年以上過ぎ、大陸はイアサント王国がまったりと支配する世界になっている。どの国もこの大陸の気質に合った獣人らしい生き方が出来る優しい世界で北から南の行き来も楽に出来る。農民すら才覚さえあれば商人にもなれるのだ。
気候は温暖で最南以外は砂漠もなく、過ごしやすく農家には適している。そして、この百年で獣人でも魅力を持つようになる。エリオス世代は魔力があるのが当たり前に過ごしている。
そんな世界に住むエリオスはどうやって領地を自分好みに開拓出来るのか。
※この物語だけで楽しめるようになっています。よろしくお願いします。
転生先がハードモードで笑ってます。
夏里黒絵
BL
周りに劣等感を抱く春乃は事故に会いテンプレな転生を果たす。
目を開けると転生と言えばいかにも!な、剣と魔法の世界に飛ばされていた。とりあえず容姿を確認しようと鏡を見て絶句、丸々と肉ずいたその幼体。白豚と言われても否定できないほど醜い姿だった。それに横腹を始めとした全身が痛い、痣だらけなのだ。その痣を見て幼体の7年間の記憶が蘇ってきた。どうやら公爵家の横暴訳アリ白豚令息に転生したようだ。
人間として底辺なリンシャに強い精神的ショックを受け、春乃改めリンシャ アルマディカは引きこもりになってしまう。
しかしとあるきっかけで前世の思い出せていなかった記憶を思い出し、ここはBLゲームの世界で自分は主人公を虐める言わば悪役令息だと思い出し、ストーリーを終わらせれば望み薄だが元の世界に戻れる可能性を感じ動き出す。しかし動くのが遅かったようで…
色々と無自覚な主人公が、最悪な悪役令息として(いるつもりで)ストーリーのエンディングを目指すも、気づくのが遅く、手遅れだったので思うようにストーリーが進まないお話。
R15は保険です。不定期更新。小説なんて書くの初めてな作者の行き当たりばったりなご都合主義ストーリーになりそうです。
帝国の皇太子に目を付けられた貧国おバカ王子の末路
珈琲きの子
BL
天使と謳われる貧国の王子ラベライト。中身はただのおっぱい好きなおバカな転生者だった。
しかし皆を虜にするような愛らしい外見から帝国の皇太子に目を付けられ、政略結婚により帝国の皇太子妃に迎え入れられる。
おバカなラベライトはそんなことも露知らず、世界最先端の技術を持つ帝国に住めることを喜ぶのだが……
マッチョ皇太子×外見天使なおバカ王子のアホエロ物語。
※半分無理矢理の快楽堕ちです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる