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本編

チョッ…熊!ダメだってば!

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お爺さまとパパは食堂で既にお話中らしい。
食堂の前まで来ると中からパパの怒った様な声が聞こえてくる。

「…だから!」

なかなかに不穏な空気だと思うのだが、ギル兄様は気にせず普通に扉をノックしている。
その強心臓を見習いたいです。
入室の許可が出たので、さすがに抱っこのままではよくないと思いギル兄様の足にしがみつく形でヨタヨタと歩く。
多分、ギル兄様はとても歩き難いと思うのだが振り払う事もせず自分をくっつけてくれている。
後ろから熊と虎が背中を押して支えてくれているのもありがたい。

「父上、お爺様、ファルシュターが起きたのでご挨拶に伺いました」

ギル兄様がそっと前へ促してくれているが、練習した挨拶など既に頭の中からキレイに消え去ってしまっている為、しどろもどろで挨拶をする羽目に陥ってしまった。

「おはちゅに、おめに、かかりましゅ。ファルシュターでちゅ。よろちく、おねがい、しましゅ」

途中、噛んでしまったがなかなか上手に出来たのではないだろうか。
頭をペコリと下げて、返事を待つ。

「ちょっと、待って!ファル君、なんか可愛いのが頭についてる!顔あげて、パパによく見せてごらん」

お爺さまより前にパパが走り寄ってきた。
この場合は頭をあげてもいいのだろうか?
わからないので、とりあえずはお爺さまの言葉を待つ事にする。

「バカ息子!ワシの番だろうが!」

大きな声にビクッと身体が動いてしまったが、なんとか頭は下げたままキープ出来た。
練習の成果かもしれない。

「ファルシュターといったか…。しっかりした挨拶が出来て偉いぞ。だが、その頭のは何だ?」

これはあまりツノをよく思われていない雰囲気だ。
すかさず、外して後ろ手に隠したが誤魔化す事は出来ないので素直に謝るので許してくれないだろうか。

「ごめんちゃい」
「!?取れるのか!?」

自分のツノは枝を魔法で加工してもらっている一品なので取り外し自由なのだが、驚かせてしまった様だ。
どうすればいいのか分からずアワアワしていたのだが、空気を読まない熊が背中に隠したツノを自分の手から奪い取り、後ろから頭に装着させるという暴挙にでた。

熊よ。
今はツノはダメだから。

「シーちゃん、ダメよぉ」

虎も大丈夫だと言わんばかりに頷いているがダメなものはダメなのだ。

「ルシー、外さなくても大丈夫だよ。お爺様、父上、ルシーは僕とお揃いが嬉しいとツノを付けてくれたのです。とはいっても、本物ではなく枝ですが…」

自分では上手く説明出来なかったので、ギル兄様が2人に伝えてくれて助かった。
感謝の気持ちを込めて見上げると、流れる様な動きで抱っこされてしまったのだが、もう挨拶も終わったと判断し自分からも首に抱きついた。
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