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本編

脱出成功

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壁との仲良し期間を終了し無事に洞窟から脱出する事が出来た。
合わせる顔がなくてゆっくりハイハイしながら入口からソロっと顔を出した瞬間、ギル兄様に捕まりギュッと強い力で抱きしめられた。

「ちんぱい、ごめんなしゃい」
「…本当に心配した」

ギル兄様の身体が少し震えているのを感じて、自分の浅はかな行為で傷つけてしまった事を実感した。

「ごめ…ん…な…しゃいぃぃ」

そこからは我慢もできず、ギル兄様にしがみついて大泣きしてしまったのが恥ずかしい。

「ルシー、これからは何があっても、何も言わずに1人で何処かに行ったりしないで。ちゃんと僕に教えて?」

うんうんと頷く事しか出来ない。

「ルシーが泣きたい時も、怒ってる時も、もちろん楽しい時も、僕は一緒にその気持ちを共有したいんだよ」

自分だってギル兄様と同じ気持ちだ。
ギル兄様が泣きたい時は小さいが胸を貸したいし、怒っているのなら自分に八つ当たりしてくれても構わない。
楽しい時は一緒に笑いたい。

「忘れないでね、ルシー。僕はルシーが側に居てくれないと、もうダメなんだよ」
「ぼくも、にいしゃま、いないの、ダメなのぉ」

自分の世界は既にギル兄様を中心に回っている。
もちろんパパやお屋敷のみんなも大好きだし、獣達と遊ぶ事も楽しい。
それでも、朝起きたらギル兄様に1番におはようが言いたいし、1日の最後はギル兄様におやすみと言って締めたい。
それだけに止まらず、夢の中でもギル兄様に会いたいと願ってしまうのだ。

これは、欲だ。
とても醜い、独占欲だ。
もう、執着、依存しているのかもしれない。

何もわからない状況での刷り込み的な何かなら、最初に助けてくれたルイに1番に懐いてもおかしくないのに、ギル兄様を見た瞬間に全てが変わった。
一緒に生活して、毎日優しくしてもらう内に、自分が特別なのではないかとすら考えてしまう程、ギル兄様を盲目的に信仰している自覚はある。

ギル兄様にそんな気持ちが微塵もないのはわかっているが、コチラとしては最早、軟派な結婚詐欺師に引っかかった女性の気持ちがわかる程だ。
貴方の為ならなんだってする精神である。

これからは我儘を言わず、ギル兄様の気持ちを尊重して行動すると決めたのだから、ギル兄様が側にいて欲しいと言って下さる間はぴったり側にいよう。
1人で勝手に行動すると、こんなに心配をかけてしまうのなら今後は報連相をしっかり行うと誓う。

「にいしゃま、もう、ひとり、(行動)ちない」
「うん。もう僕を独りにしないでね」
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