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本編

餌?

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あの素敵なお言葉を賜り、一瞬天に召されかけたが無事に生還したファルシュターです。

しかし、まだ壁との仲良し期間は終わっていない。
どうやらパパ曰く、何かの魔法によってくっついているらしい。
ハエ取り紙とか、鼠取りの様な罠に捕獲されたと言う事か。

誰だ、こんな所に設置したヤツ!
いや、ここはお屋敷の庭で、尚且つ虎と熊の住処だ。
しかも、魔法による罠だというのなら犯人は1匹しかいない。
絶対、虎だと思う。

だが虎だって、餌でも捕まえようと設置していたのかもしれない。
まさか虎も自分が罠に引っかかるとは思っていないだろうし、勝手に罠にかかったのは自分だ。
恨むのはスジ違いだろう。

「ソラを呼びます。多分今なら来てくれると思いますし…」
「ぼく、ソラちゃ、おねがい、しゅる」

程なくして大きな身体の虎がのしのしと歩いてくるのが見えた。
リボンが尻尾に結ばれて揺れている。
しかも2本結ばれているではないか。
自分の失くしたリボンを虎は見つけてくれていた様だ。
さすが、虎。
頼りになります。

虎はそのままどんどんと近づいてきて、入口にズボッと鼻先をねじ込んだ。
あれ?
もしかして、今、外から見たらとても可愛いのではないだろうか。
虎の可愛い姿は見たかったが、まずは壁とのドッキングを外してもらう事が先決だ。

「ソラちゃ、ごめんねぇ。ぼく、ちゅかまっちゃったのぉ」

ギル兄様が光の球を転がしてくれているので暗闇ではないが鼻先しか見えないので様子が何も伝わってこない。
これは解除してくれているのだろうか。

「ソラ!意地悪しないで、早くルシーを解放して!」

鼻先がピクピクしているのが可愛い。

「わかってる。ちゃんと謝罪させる。まぁ、今大変な目にあってると思うから…今日中には無理かもだけど…」

よくわからないが虎は納得したらしい。
虎の鼻先から魔法が発動した。
まるで鼻提灯が割れた様に見えてしまったが、見ていたのは自分だけなので誰にも言わないでおこう。
虎の威厳が落ちてしまったら可哀想だ。

魔法が発動すると、それまでがまるで嘘の様に壁から背中が離れた。
壁を恐る恐る触ってみたが、何も粘着的な物はついていない様で特に変わったところはなかった。
虎はまたここに罠を仕掛けるのだろうか。
それならば、今後は近づかない様にしようと思う。
もしここ以外にも同じような罠を仕掛けているのであれば是非とも教えてほしい。
自分は同じ罠に、同じ様に引っかかる自信がある。

学習能力がないと呆れないでもらいたい。
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