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本編

リボン

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あまりの嬉しさに、ツノは付けたままお屋敷に帰る事にした。
本来ならギル兄様に1番に見てもらう為にも、お部屋の前でコソッとつけるのが1番驚いて貰えるだろう。
だが、自分はのろまだし手先もありえないほどの不器用さを誇っている。

絶対に、間違いなく、何か失敗する。

つける場所もギル兄様の素晴らしいツノが生えている場所と同じくらいの位置を目指したいが、驚いてもらう為に急いでつけるとなれば、頭頂部から隙間もなく2本を並べてしまう恐れもある。
そうなれば、この折角見つけたツノっぽい枝が唯の謎の枝になってしまうのだ。
頭の天辺から唯の枝を生やしてしまえば、キノコの妖怪がさらにグレードアップしてしまう。
絶対に嫌だ。
それならば、同じくらいの位置に調整して今から付けて帰った方がいい。
鏡がないので自分では見えないのだが、虎に確認しながらジャストな位置どりに成功している。
このまま、急いでお屋敷に帰ろう。

虎と熊の住処である庭を抜けて、中央にある噴水まで帰ってきたのだが、ここで大問題が発生している事にようやく気がついた。
なんと、お揃いのリボンがないのだ。
今朝、確かにギル兄様が頭に結んでくれた。
今日はお爺さまが来る日だからと、髪型まで似せて下さり、サイドを編み込みにしてリボンをつけてくれた筈なのに、そのリボンが無くなっている。
いつのまにか何処かに落としてきてしまった様だ。
今日は虎も首にリボンをつけているし、自分のリボンを少し切ってトカゲの胴体にも結んでいる。
熊にも帰ってきたらリボンをつけてもらい、全員でお揃いにする予定なのだ。
あの大事なリボンを失ってしまうのは、辛すぎる。
幸いにも、朝は確実にあったことからこの周辺から虎と熊の住処である庭辺りまでの何処かで落としたと推察は出来るのだ。
来た道をもう一度戻れば、見つける事も可能だと思われる。

「しゃがしゅ!」

悲しんでいても仕方がない。
泣いたからといって、リボンが自動で戻って来てくれる筈がないのだから、ここは急いで探さなければいけないのだ。
明らかに両眼が熱いが気づかなかった事にしよう。
ゴシゴシと袖で顔を拭い、気合いを入れた。

「ソラちゃ、おうち、みちぇきちぇ、くれりゅ?」

この場所から1番遠いのが、虎の住処だ。
自分が探しに行くには時間がかかりすぎる。
早く見つける為にも手分けして探した方がいいだろう。
虎に頼むと、すぐに駆けて行ってくれた。
頼りになりすぎる。
自分はこの辺りを重点的に探すとしよう。
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