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本編

食べちゃダメ

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虎は拒否する事もなく案内をしてくれた。
尻尾をゆらゆらさせていたので、機嫌も良さそうだ。
出発する際にセイバースさんから色々な注意をされたのだが、覚えている事の方が少ない。
いや、言い訳になるのだが、とてもたくさんの注意事項があったのだ。
最後の方しか覚えていなくても仕方がないと諦めてほしい。
3歳児の脳には多過ぎだ。

とりあえず全体的には危険な事はしてはいけないだと思うのでそれを心がけて探検をする所存である。

箱はゆっくりと走っている。
それでも自分が歩くよりはとても速いので、目的地までもすぐに着きそうだ。

「ソラちゃ、いちゅも、シーちゃと、いっちょ?」

自分の言っている事は伝わっていると思うのだが、虎の返事はあいにく自分には伝わらない。
でも、別にいいのだ。
話しかければコチラを見てくれるし、尻尾を揺らしたり、首を傾げたりと反応は返ってくる。
今もコチラを見ながら舌舐めずりをしている。
え!?
どういう事なの!?
まさか、熊を食べる気なのか。

「…シーちゃ、たべちゃ、ダメよぉ」

熊は助けてくれた恩熊で、今ではかけがえのない存在だ。
虎も一緒に過ごす時間が長いので、熊と同じくらい大事な存在である。
2匹が食うか食われるかの戦いを繰り広げているところなど見たくない。

「なかよし、しちぇねぇ」

虎は首を傾げているが、大丈夫だろうか。
今度、パパとギル兄様に聞き取り調査をしよう。

「カゲちゃ、たのちい?」

トカゲはキョロキョロと辺りを見回している。
やはり室内で飼育するより、外で暮らした方がトカゲにとっては良いのかもしれない。
元々は庭に住んでいたと思われるトカゲだ。
餌だって自分で好きなものを狩れる方がいいだろう。
今はパパとギル兄様、セイバースさんのアドバイスに従って自分が食べる時に少しずつ同じ物を分けている。

本当は虫とかが食べたいのかもしれない。
最初は自分も庭で虫を捕まえてあげようとしたのだが、自分に捕まえられる様なのろまな虫はいなかった。
セイバースさんやベクストにもお願いしたのだが、トカゲは虫よりパンが好きだと言うのだ。
絶対、そんな事は無いと思うのだが、食事時にパンを食べている姿を見て今は腹に収めている。
いつか虫も食べさせてあげたい。

「カゲちゃも、おしょと、くらちゅ?」

とても悲しいが、トカゲが外の方が楽しく暮らせるのならそれが1番大事だ。
熊や虎の様に毎朝は無理かもしれないが、自分に会いたくなった時に来てくれればそれでいい。
虎の頭に張り付いていたトカゲが、慌てた様に自分の肩に登って来た。
すりすりと甘えてくれている。

「ぼくと、いっちょで、いいの?」

すりすりのスピードが上がったので、きっと了承されたのだろう。

「ありがと。ぼく、いっちょ、うれちい!」

これからも1番柔らかそうな部分のパンをあげよう。
もしかしたら人参も食べてくれる様になるかもしれないので、期待して待っておく。
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