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本編

雨乞いダンス

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あの時の自分、そして従僕トリオよ。
ありがとう。
みんなで踊ったアレを今、昇華させて見せます!

「にいしゃま、ちょっちょ、おりりゅよぉ」
「何処か行くの?」
「ちがうよぉ。みちぇちぇ!」

ベンチに座っているギル兄様の前に立つ。
何故だか隣のベンチに座っている冒険者達もコチラを凝視しているが、今は無視だ。
気にしたら恥ずかしくて死ねる。

あの時、ロウは鼻歌だったが練習している間に自分は口に出した方が踊りやすい事がわかっているので、ギル兄様に聞こえるくらいの声量で口ずさむ。

「ちぇちぇちぇん、ちぇちぇちぇ、ちぇちぇちぇちぇーん」

最初は元気よく空に向かって手を伸ばし、大の字ジャンプ!
これは雨を誘う部分だ。
続いてちょっと恥ずかしい謎の横ステップを挟んで、狸の部分だ。
音に合わせて軽快にお腹を叩く!

「ぽぽぽん、ぽぽぽ、ぽぽぽぽーん」

戻ってきました、恥ずかしい横ステップ。
その後その場での行進と屈伸からのジャンプを繰り返し狼部分へ突入する。
足は動かさず、上半身だけを左右に揺らしながら両手を握り胸の前で手招き!

「わわわん、わわわ、わわわわーん」

チラッとギル兄様を見るが、まだ笑っていない。
だが少しだけ表情が明るい様な気がする。

さあ、クライマックスだ。
腰に手を当て、後ろを向く。
この時、少しだけ振り向いている方が良いとセイバースさんが言っていた。
勿論、実行する。

「ちっぽ、ふりふり、ちっぽ、ふりりーん」

自分には従僕トリオの様な素敵な尻尾は無い。
しかし、あたかも在る様に尻を振るのだ!
思い出せ、セイバースさんは言っていただろう。

「お上手です!坊っちゃまの本気のダンスで可愛い尻尾が見えますよ!」

本気で尻を振ると、幻覚で尻尾が見えるはずだ。
恥ずかしがって手を抜いてはダメだ。
本気で尻を振りまくった。

ラストは向きを変え最初と同じ、大の字ジャンプ!
ギル兄様だけを見つめ、ニコニコとフィニッシュを決めた。

「にいしゃま!」

ベンチに座っているギル兄様に駆け寄り、足に抱きついた。

「あは、あははは!ちょ、ルシー。何、可愛すぎるよ!」

よかった。
無事にギル兄様が笑ってくれた。
どんな表情も素敵だが、やはり笑顔の破壊力は桁が違う。
眩しすぎます。

「あはは!父上も見たいと思うから、お家でまた踊ってくれる?」

お屋敷でなら問題ない。
バックダンサーとして従僕トリオも召喚しよう。

「うん!にいしゃま、げんき、でたぁ?」
「そっか、僕の為に…。ルシーがとっても可愛くて凄く元気になったよ。ありがとう」

額や鼻にキスをもらい、膝抱っこしてもらう。
ギル兄様が元気になってくれたなら、それでいい。
横のベンチの冒険者達が、満面の笑みで拍手しているのが見えるが気にしない。

今はギル兄様に抱きついて、折角のお触りフリータイムを満喫するのだ。
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