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本編

肉壁になります!

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ギル兄様だってまだ10歳の子供なのだ。
親が遠くへ離れてしまい、残ったのがお荷物の自分と2人きり。
不安にもなるだろう。

正義感もお強いギル兄様の事だ。
何かあれば自分を守らなければいけないと思ってしまったのかもしれない。
いや、有事の際は自分の事など捨てて下さい。
騎士団員という仕事柄、逃げる事は出来ないかもしれないが自分の事を守る必要はないと思っている。

そうだ。
肉壁として使ってもらえないだろうか。
ちょっと、いや、だいぶ厚みには欠けるが時間稼ぎぐらいにはなるかもしれない。
ギル兄様を守る盾となる。
たぶん一度で砕け散る、耐久性ゼロの盾だが無いよりはマシだろう。

とりあえず今は一刻も早くパパが帰って来る事を祈るばかりだ。
パパではなく自分がゴミを捨てに行けばよかった。
よく考えたら、せっかくの親子でのお出かけを自分が邪魔をしているのではないだろうか。
2人きりにしてあげるべきだった気がする。
自分を引き取ってくれて以来、2人で過ごす時間が足りなくなっていたはずだ。
今日だって誘ってもらえた事が嬉しすぎてノコノコと着いてきてしまったが、獣達と遊んで待っていればよかったのだ。

「パパ、しゃがしゅ」

ゴミを捨てに行ったまま、なかなか帰って来ないパパを探して選手交代しよう。
ギル兄様の膝から降りようともがいているのだが、抱きしめられた腕の拘束が外れない。

「ルシー、行かないで…」

そんなに辛いのだろうか。
こんな自分が肉壁要員としてでもお側に居た方が、ギル兄様が安心するというなら何処にも行かない。
だが、パパが帰って来なければ根本的な原因が排除出来ないのだ。

「にいしゃま、パパ、しゅぐ、くりゅよ。だいじょぶ。ぼく、まもりゅよぉ」

絶対にパパが来るまでは時間を稼ぎます。
なんとか元気になってほしいのだが、どうしたらいいだろうか。
自分に出来る事が少なすぎて、ギル兄様に笑顔を戻す方法が思いつかない。

必死に考えていると、天啓が降りてきた。
コレしか無い!
正直にいえばコレを街中、しかも屋台街という大賑わいの場所でするのは恥ずかしい。
まだギル兄様にもパパにも見せた事がないのだ。
いつか機会があればお屋敷の中でコソッと披露しようと思っていたのだが、背に腹はかえられない。
今はギル兄様に笑顔を取り戻す事が優先だ。
自分が恥をかくくらい何だというのだ。
それでギル兄様に笑ってもらえるのなら本望。

やり遂げて見せますよ!
さあ、ギル兄様。
笑う準備をして下さい!
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