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別視点

side 獣(ルアン)

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said ルアン

昨日、あれだけ下僕を狙って攻撃したけど本気を出して死なすわけにもいかないから手加減しすぎてイライラが治らない。
昨日は本当に最悪だった。
せっかく愛しい子に会えるから、ちょっとカッコいい所を見せようと初めてやる気を見せて臨んだ演習だったのに…。
あろう事か、下僕はボクにファルが演習の見学に来ない事を当日まで隠していやがった。
来れないなら、それは仕方がないんだ。
ボクだってそれぐらいはわかってる。
だけど、わざわざ隠す必要はないだろう。
明らかにボクを馬鹿にした行為だ。

一晩寝てみたけど、やっぱりむしゃくしゃする。
もう一度、下僕と遊んでやろう。
ぐっすり眠っている下僕を確認して、わざと窓を叩き割って部屋に侵入してやった。

「まじ、悪かったって!すいませんでした!」

誠意を全く感じない謝罪なんて、ボクは認めないよ。
追いかけ回していると団長室に逃げ込んで行きやがった。
いつもなら愛しい子がいるあの場所に何故下僕の分際で入るのか。
やっぱり自殺志願者なんじゃないの?

扉を押さえているのか、ボクを部屋に入れる気がないみたいだ。
でも、部屋の中からファルの声が聞こえるんだ。

『ボクだよ?ファル、会いたいな!』

嘴でコンコンと扉を突いて合図を送るけど、なかなか開けてくれない。

「あぶにゃいの!あきゅま、あけちゃ、めーよ!」

嘘で…しょ…。
愛しい子がボクの事、悪魔だって言ってる。

絶対に下僕が吹き込んだんだ。
だってボクらは仲良しなんだ。
いっぱい遊んだし、贈り物だって交換しあった仲なんだ。
そんなあの子がボクの事を悪魔だなんていうはずがない!

こんな扉なんて壊してしまおう。
愛しい子は少しビックリしちゃうかもだけど、その後に魔法で楽しませてあげよう。
そうすれば、もっともっと仲良しになれるよね。

「すみませんでした。どうぞ、お入り下さい!」

下僕が今更、扉を開けてきたけど遅いんだよ。
愛しい子を見ると、ギュッと目を瞑っている。
そんなに、怖かったんだね…。

『愛しい子はルアンを悪魔だと言った訳ではない。扉の外に悪魔が来たと思い込んでしまった様だ』

シーザーの説明を聞いて安心しちゃったよ。
やっぱりボクの事じゃなかったんだ。
やっと愛しい子がボクを見てくれた。
嬉しくてすぐに近づいちゃう。
しかも、お菓子を食べさせてくれるみたいだ。
愛しい子が作ったクッキーはとっても美味しかった。
ボクらは本来なら魔素で生きているから、食べる行為は必要ないけど、この子からもらえる物なら何でも食べちゃう。
たぶん泥団子を食べても平気だと思う。
丈夫な身体の獣に生まれてよかった。

「ルアちゃ、なかよち」

抱きついてくれる愛しい子が可愛くて仕方がない。
ほら、ボクらはやっぱり相思相愛だ。
お互いに仲良し認定してるなら、もう親友だよね。

朝までのむしゃくしゃした気持ちなんてどこかに飛んでいっちゃったよ。
上機嫌になってニコニコしてたら、下僕が自分がもらったクッキーをボクにあげてもいいかと聞いていた。
やっと下僕の心得が身についてきたみたいだ。
ボクの教育の賜物だね。
もちろん美味しく頂いたよ。

愛しい子は他にもクッキーを配りに行くみたいだ。
本当ならボクも着いて行きたかったけど、まだやる事があるから今日は諦める。
次は絶対に一緒に遊ぼうね。



『お前がボクの事を悪魔って呼んでたんだろ?』
「ち、違う!アレは…」
『再教育が必要みたいだな。覚悟しろよ』

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