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本編

ごめんね

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「にいしゃま、こわかったねぇ」

グズグズと鼻が鳴ってしまう。
すぐに泣いてしまう自分をどうにかしたいのだが、なかなか泣き虫は治らない様だ。
今回は号泣しなかっただけ、マシである。

「ふふ。ルシー、よく見て?父上の部屋に来たのは悪魔じゃなくてルアンだよ?ルシーの友達は悪魔じゃないでしょう?」

本当だ。
鳥がいつのまにか室内にいる。
小首を傾げながら、コチラをジッと見つめているのはルイの相棒の鳥だ。
間違いない。
鳥は自分と目が合うと、嬉しそうに近寄ってきてくれた。
何と言う事だ。
自分の勘違いで友達を悪魔だと入室拒否までしてしまった。

「ルアちゃ、ごめんちゃい」

申し訳なくて、謝る事しか出来ない。
食べるかはわからないが、せめてもの気持ちでクッキーを差し出した。
クッキーが食べられない様なら、次までに木の実を見つけてくるので待っていてほしい。
そう思ったのだが、鳥はクッキーを食べてくれた。
特に怒っている様子もなく、翼から炎も出ていない。
それどころか、嬉しそうにリサイタルまで開催してくれた。
なんて、優しいのだ。
虎の背から下ろしてもらい、鳥に抱きついた。

「ルアちゃ、なかよち」

ピチチと可愛らしく返事までしてもらい、友情が壊れなかった事に安堵した。

「ごめんな、ファル。俺が悪魔だって間違えた所為で怖い思いさせちまって…」

いや、ルイだって途中で生贄にされそうになっていたのだ。
もしかしたら、自分より怖かったかもしれない。

「だいじょぶよぉ。ルイしゃんも、こわかったねぇ」

お互い、怖い思いをした同士だ。
ルイにも1枚、クッキーを差し出した。

「ありがとな。俺の分、ルアンにあげてもいいか?ルアン、これ好きみたいなんだ」

ルイにあげた物なのだから、ルイの好きにしていい。
相棒の好きなものをプレゼントするなんて、見直したぐらいだ。

「じゃあ、ルアちゃ、どじょ」

嘴の前に持っていくと、嬉しそうに食べた。
本当に好きな様だ。
仲の良い相棒関係で羨ましい。
自分にもいつかそんな相棒が出来る事を祈ろう。

ニコニコしながら鳥が食べ終わるのを見守っていると、目の端にルイの土下座が映った。
パパがその前で仁王立ちしている。
この一瞬で何があったというのだ。

「さあ、ルシー。次は誰に会いに行こうか?」

目を見開いて固まっている自分を、虎の背に乗せて何でもないかの様に退室を促すギル兄様が凄いです。
気にならないのだろうか。

「ルイさんは昨日の訓練の事で怒られてるんだよ」

そういう事なら納得だ。
怒られているところを見られるのは誰だって恥ずかしいし悔しく思うだろう。
自分もなるべく見ない様にして、退室した。
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