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別視点

それぞれの演習 side ギルバート⑥

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この子ならルシーを守れるだろう。
そして何より、僕の鱗を媒体にして作られた魔法生物だ。
この子の目を通してルシーを見守る事が出来る。
僕が一緒に居られない時間も、このドラゴンが一緒に居てくれるならまるで僕も一緒にいる様な感覚を味わえる。

正直、自分でも気持ち悪い思考だとは思う。
これでは監視しているストーカーだ。
それでもルシーを手放せられない。

竜人族が独占欲も執着心も凄いのは知っていたけど、どこかで僕には関係ないと思っていたんだ。
でも、ルシーと出会って知ってしまったらもうダメだった。
抑えられない。
常に存在を感じていないと安心出来ない。
ルシーが少しでも嫌がったら僕も少しは自重出来るかもしれないけれど、あの可愛い天使は初対面の時から僕が何をしたとしても全肯定してくれるのだ。
それこそ僕が本当に神様にでもなったかの様に、いつもキラキラした目で見つめてくる。
そしてどんどん、僕の愛は重くなっていくんだ。
ごめんね、ルシー。
ルシーが僕の事をもっともっと好きになってくれる様に努力するから、僕から離れて行かないでね。

演習日、当日。
今日はルシーには庭の探検が待っているので、動きやすそうな服を着せてあげる。
ドラゴンはシーザーやソラの住処の庭に潜んでいるはずだ。
僕達が出発したら行動を開始するだろう。
お留守番を頼まれたルシーは一瞬寂しそうな表情を見せたが、すぐに気持ちを切り替えた様だ。
いつ頃、庭の探検をするのかな。
なるべく早くあのドラゴンを見つけて欲しい。

父上と共に演習地に到着すると、獣の様子がおかしいのにすぐに気付いた。
どうやらルシーが今日は来ない事を知ってしまったみたいだ。
オルトロスや九尾狐は落ち込んでいるのか伏せたまま全く動かなくなっているし、反対にグリフォンは暴れ回っている。
他の獣達も半数はやる気を失い相棒の声かけにも無視を決め込んでいるのだが、もう半数は完全に目が逝っている。
怖すぎて直視出来ない。

『仕方がない。みんな愛しい子に見てもらえる事を喜んでいたからな。あの子が来ていたら凄い事になっていた筈だ』

ソラやシーザーはいつでもルシーに会えるが、他の獣にとっては一大イベントだったのだろう。
好きな子と一緒に参加出来ると思って張り切って練習までしていた運動会の当日、その子が家の都合で欠席してしまった。
しかも、それを隣のヤツは知っていて隠していたらしい。
絶対に許さない。
たぶんそんな気持ちなんだと思う。

今日の僕はみんなのフォローに走り回る事になるだろう。
だけど、僕には楽しみが控えているので少しも苦痛に感じない。
早く終わればいいなと呑気に思っていた。
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