コレは流行りの転生ですか？〜どうやら輪廻転生の方でした〜

別視点

それぞれの演習 side医療隊長①

大規模な演習が行われる事になったが、俺の仕事はいつもと同じだ。
俺は救命、医療隊の隊長をしている。

相棒のペンギンも他の獣より攻撃性もなく言い方は悪いが扱いやすい。
ただ、馬鹿だ。
それはもう、果てしないほどの馬鹿だったのだが、団長の息子ファルシュターに会ってからは、そこに阿呆も加えられ類を見ない程のお調子者が完成した。

ファルシュターとの初対面の時は、いきなり水の輪を魔法で作り何故かキメ顔でただ潜った。
そんなにキメ顔で挑むなら、せめて回転くらい加えろよ。

『吾輩の魔法をあんなに喜んでくれているではないですか！次までに吾輩、もっと進化してスタイリッシュペンギンになっておきまする！』

スタイリッシュペンギンってなんだよ。
いつもの幼体の姿はずんぐりむっくりだし、成体もたぶん普通のペンギンよりもむっちりしているだろう。
他の獣は物を食わないと聞いているが、コイツは隠れて菓子やら甘い物を食っている。
それに気付いてからはコイツ用に購入していたのだが、買い忘れてしまったある日、あろう事か砂糖を盗み食いしているのを目撃してしまった。
しかも直喰いだ。

そんなコイツがスタイリッシュって。
言葉の意味、知ってるのか？

『隊長、次の演習では吾輩も戦闘に参加したいであります！』
「無理。瞬殺される」
『特訓の成果を発揮する絶好の機会ですぞ！』

なんの特訓をしていたかは聞きたくないが、戦闘特化型は好戦的な獣が多くこの我儘ボディのペンギンでは避ける事も難しいだろう。

『愛しいあの子が見てくれるのに、吾輩、地味に回復係だけは嫌ですぞ！…ハッ！回復に見せかけて多めに光らせて視線を貰えって事ですか！？』

頼むから、何もしてくれるなよ。
フリッパーをバタつかせながら嬉々として走り回るペンギンを見ながら、俺は演習日をどうやって乗り切るかを考えていた。
ファルシュターが来たら、医療隊のテントでペンギンの横に座っていてもらえればいいのでは…。
そうすれば、このペンギンは大人しくしているだろう。
妙案を思いつきニヤついたのがいけなかったのだろうか。

演習日、当日。
まさかのファルシュター不在。
イジけるペンギン。

『吾輩、今日はもう力が出ないであります。お先に失礼します』

待て、帰るな。
ファルシュターが来ない事に気付いた獣達が、荒れている。
今日の演習はたぶん医療隊の出番が多いだろう。
ペンギンは馬鹿だが、治癒能力は他の追随を許さない程に優秀だ。
居なくなられては困る。