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本編

後光が差して見えた

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ギル兄様が階段を猛スピードで駆け下りてきた。

「ルシー!よかった。誰かに連れていかれちゃったのかと思ったよ」
「にいしゃまぁ…うえーーん」

心配そうにギュッと抱きしめてもらうと、止まっていた涙がまた溢れ出してしまった。
ギル兄様はずっと自分に付き添っていてくれた様だが、団長に呼ばれ30分ほど離れてしまった。
すぐに戻ってこれると思っていたのに、少し時間がかかってしまい慌てて帰って来ると、部屋の窓が破壊されており、ぐっすり眠っていたはずの自分が忽然と姿を消していたので誘拐されたと思ったらしい。

「ごめんね、1人にして。ソラを残して行ければよかったんだけど、起きたら1人だったから怖くなっちゃったよね」

確かに怖かったが、今はもう平気だ。
ギル兄様の安心感に勝るものはないだろう。
抱っこしてもらうだけで、不安感も恐怖心も消えてなくなるのだ。
さすが、神様である。

「ごめんちゃい。まど、こわりぇちゃたの。ぼくが、ルアちゃ、たちゅけて、したかりゃなの。ルアちゃ、おこりゃないでぇ」

そうだった。
寝ていた部屋の窓を壊してしまったのだ。
ペンギンの相棒さんに謝ると、気にして無いと笑って許してくれた。

「いい、いい。獣のする事は俺達じゃ、どうにも出来んからな。それより、お前は怪我しなかったか?」

この建物は医療隊の詰所でペンギンの相棒さんは隊長をしているらしい。
自分の怪我を心配してくれているが、痛いところは無いので大丈夫だと思う。

「へいき。ありがとぉ。ぼく、ふぁるしゅたーでしゅ。よろちくなの」

隊長さんにニコニコと自己紹介とお礼を伝える。

「ちっこいのに偉いな。ペンギンと仲良くしてやってくれな。ただ、危ない事はするんじゃないぞ」

さっきのスライダー事件の事を言っているのなら、犯人は自分ではなくペンギンだ。

是非とも相棒から叱ってやってほしい。

ギル兄様に抱っこされて治療隊の詰所をあとにする。
治療隊の詰所と隊舎(団長の部屋がある建物)は三階部分で繋がっているらしいが、外から帰る様だ。
ペンギンがまた芸を披露しようとして水の球を魔法で作っていたのだが、3つ目を出した瞬間に全ての球が割れて辺りが水浸しになってしまったからかもしれない。

自分はギル兄様の咄嗟の魔法で全く被害はなかったのだが、隊長はずぶ濡れになっていた。
鳥は嫌な予感でもあったのか、ペンギンが魔法を使い出したところで外へ飛んで逃げていた。

「ルシー、疲れた?大丈夫かな?」
「おひりゅね、しちゃかりゃ、だいじょぶ!」

しっかりと昼寝もしたし、神様成分も現在進行形で補給中なので全く問題なしだ。
ギル兄様が時折、頬にチュッとしてくれるのでなんなら今までで1番調子が良いくらいだ。
ハンカチの簡易靴が無くなってしまったのは残念だが、ずっとギル兄様に抱っこしてもらえているのは嬉しい。
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