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本編

まさか…

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※病気の表現がありますが、ファンタジーです。
既存の病気ではなく、ファンタジーだと思って下さい。



辿り着いた獣舎はとても静かだった。
やはり訓練中なのかガランとしている。

「いないねぇ」
「此処にはいつもは5体いるんだけどね。やっぱり訓練中かな。別の獣舎に行ってみようか?」

隊舎に1番近い獣舎に連れてきてもらったのだが、訓練中ならば仕方がない。
あまり遠くには行けないので、隊舎にいる馬に会いに行ってみたらどうだろうか。

「カルちゃは?」
「そうだね。カルファならもう仲良しなんでしょう?会いに行こうか?」

馬は自分の髪をはむはむするので頭髪の心配はあるが、もしかしたら空腹だったのかもしれない。
それならば、何か食べさせてあげればいいのではないだろうか。

「にんじん、たべりゅ?」
「…どうかな。食べてる所は見た事ないけど、ルシーがあげたら喜ぶと思うよ」

馬に会いに行く前に、人参を貰いに行こうとギル兄様が頭を撫でてくれた。
移動しようとしたその時。
わんわん、ギャオー、コーンと鳴きながらコチラに向かって走ってくる3匹が目に入った。

「あっ!戻ってきたみたいだよ」

驚いて固まってしまったが、ギル兄様に特に慌てた様子がない事から、どうやらあの3匹はこの獣舎の子達の様だ。

此処は病院なのかもしれない。
隊舎から1番近いのには、やはり理由があったのだ。
走っている様子から元気そうに見えるが大丈夫なのだろうか。

あの子達は揃って、奇形症を患っている。

いや、しかし。
何故、自分は奇形症などという言葉を知っているのだろう。
熊や虎など見たことがない筈なのに、それが[熊]や[虎]と呼ばれる事を理解していた。
名前や、今までの生活などは何も覚えていないのにおかしい。
拙いが話す事も出来ている。
3歳にしてはしっかりしすぎている気がする。
もしや、自分も何か病気なのかもしれない。
実はもう大人で身体が成長していないだけなのかもしれないのだ。

「ギルにいしゃま、ぼく、びょうき?」
「えぇ!?何処か痛いの?」

痛みは無いが、自分の異様さに気付いてしまったのだ。
とりあえず、なんとか今の気持ちを説明してみた。

「痛いところは無いんだね?…ソラがいうには今の身体の状態から見て3歳で間違い無いみたいだよ。シーザーも問題無いって言ってるって。今まであんまりご飯食べれてなかったから小さいのかな?心配なら医務室に行こうか」

熊と虎がそういうのならば今は様子見としよう。
もし、このまま成長しない様ならその時は病院に行こうと思う。

「だいじょぶ。…でも、こわいのぉ」
「ルシー、おいで?僕に抱っこさせて?」

おずおずとギル兄様に向けて両手を伸ばす。

「僕はどんなルシーも好きだよ。きっとこれからどんどん大きくなると思うけど、僕が毎日抱っこして成長を確かめてあげる。もし大きくなれないなら、それこそ僕が一生抱っこしてあげる。何にも心配はいらないよ」

泣き続ける自分を疎ましがらず、優しく包み込んでくれるギル兄様、最高です。
いつのまにか元のサイズに戻った熊も心配そうに覗き込んでいる。

「えへへ。また、ないちゃったの。しんぱい、ごめんちゃい」

恥ずかしさを誤魔化す様に笑っておいた。
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