コレは流行りの転生ですか？〜どうやら輪廻転生の方でした〜

本編

神降臨

あの後ろ姿は絶対に熊だ。
巨体な熊に遮られ見えないが、どうやら熊の前に義兄とその相棒がいるらしい。

「シーちゃ！！」

声をかけると、熊は振り返り勢いよく走ってきた。
熊は思いの外、足が速い事を知った。
団長に下ろしてもらうと、熊に手を伸ばす。
熊の顔は自分の全身より大きいが、優しい事を知っているのでそのまま頭や鼻先を撫で抱き着いた。

「ルイ、あれはシーザーだよな」
「安心して下さい。ルアンやカルファも同じ様になります。デレデレです」

熊を堪能していると知らない声が聞こえた。
この場にいる知らない声など義兄しかいない。

「父上、ルイさん。僕に急用ですか？お二人がこちらの森に揃って来るなんて珍しい」

待って。
全く強面系イケメンではない。

団長と揃いの銀髪と赤眼。
銀髪は長く、後ろで緩く縛っている。
スラっとしているが10歳とは思えないしっかりとした体躯。
袖を捲っていた為に見えたが、手首に鱗の様な物が見える。
そして何より、優しそうなそのお顔の上。
頭にツノがある。
鬼とかで見る三角のツノではなく、神秘的で生命力に溢れた。
そう、ご神木の様なツノが2本生えているのだ。

美の化身だ。
イケメンと言うレベルを遥かに超えている。

神だ。

そして神の横には虎。
太く立派な脚に、黄色と黒が完璧に配置された毛並みの美しい虎がいる。
なんですか。
神様が自らお迎えに来て下さったんですか。
そうですか。
ありがとうございます。
ちゃんと逝けそうです。
あまりの神々しさに拝みそう。

しかし、目があった瞬間。
弾かれた様に義兄の元まで走った。
仮装用の小道具が邪魔でその場に捨てたが後悔はない。

「はじめ、まちて！」

舌が思う様に回らず口惜しい。

「おにいちゃ、すごい、キラキラ。かっこいい。ぼくも、つの、ほちいでしゅ。かっこいい。どうちたら、おしょろい、できましゅか。かっこいい。」

見上げなければいけない為、首は痛いが構っていられない。

「おてても、キラキラ、かっこいい。おしょろい、ほちいでしゅ。しゅき。かっこいい。おにいちゃ、なまえ、くだちゃい！かっこいい。とらちゃも、かっこいい。おおきい。すき。かっこいい。」

噛み噛みだし語彙力が無さ過ぎて、かっこいいを連発してしまった。
途中、思い出した様に名前をおねだりしてしまったが気付いて貰えただろうか。
間違いなく満面の笑みをしている自覚はある。
だが、もう、見ているだけで幸福感がいっぱいだ。
嫌われたくない。
何がお好きだろうか。

「おにいちゃ、なに、すき、でしゅか。ぼく、おにいちゃの、すき、しゅる。はゎゎ…おてて、しゃわっちゃ、ダメ、でしゅか」

どさくさに紛れて手を握ってしまおうかと思ったが、やはり勝手なお触りは厳禁だろう。
許可がおりるまで期待を込めて見つめていよう。
何日だって飽きる事なく見つめていられます。

ありがとうございます。
ご馳走様です。