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本編
金太郎スタイル
しおりを挟む最初よりだいぶ焦げた髪だが、お兄さんは元気いっぱいだ。
だが、そろそろこのままではいけない。
熊には相棒がいる様だし、出来ればその人に会いたい。
熊に捨てられたら、自分は生きて行けない自信がある。
このままお兄さんが鳥と熊を連れ帰ってしまったら、またこの森で1人だ。
熊と一緒が無理でも、近くに居たいのだ。
会える距離にある孤児院にでも入れてほしい。
たまに熊に会えるなら、どんな環境でも頑張れる気がする。
「おにいちゃ、シーちゃの、あいぼうさんに、あえまちゅかぁ」
「そういえば、シーザーに食べられる予定だったな。坊主はコロポックルだろ?1人なのか?」
コロポックルとは何か葉っぱを持った小さい妖精の様な生き物ではなかっただろうか。
「ぼく、にんげん」
「嘘だろ!?小さすぎだろ!?…いや、まさか、混ざってないのか?」
最後は小さくて聞き取れなかったが、しっかりと訂正は出来た。
「ぼく、シーちゃと、いっしょ、いたいの」
昨日の夜から、気付いたらこの森で1人だった事を伝えるとお兄さんは泣きそうに顔を歪めた。
「そうか…頑張ったな」
お兄さんは熊に下ろす様に伝えると、着ていた上着を自分に被せた。
「大きいが、着てろよ。靴もないな。どうする?俺が抱っこしてやろうか?」
流石に熊に抱えられて行く訳にはいかないと、お兄さんにお願いしようと思ったが、それより早く熊がまた片手で抱き上げてくれた。
「…シーザーにも凄え好かれてんな」
ただ、熊は四足歩行の筈だ。
このままでは熊は無理にでも二足歩行しそうな勢いだ。
「シーちゃ、せなか、のせてぇ」
馬ではないが、熊でも一応は背中に乗れるだろう。
ここまで優しくしてくれているのだ。
振り落とされたりはしないと思う。
熊の背中にはお兄さんが乗せてくれた。
「…あんなに嫌がる騎乗も坊主なら嬉しそうだな」
熊の背中は大きく、1番細い首の近くに座り込んだ。
「しまった、忘れてた。」
お兄さんがコソッと耳打ちしてきた。
「あの鳥はルアンって言うんだ。呼んでやってくれるか。」
鳥の名前はルアンだった。
何度かお兄さんが呼んでいた気はするが、鳥の強烈な存在感に負けて名前が記憶に残らなかったのである。
「ルアちゃ、いっしょ、いこぉ」
鳥は大人しくなった。
熊に乗った自分の頭上を楽しそうに飛んでいる。
さっきまで燃えていたのが嘘の様だ。
急に勢いよく飛んで行ったと思ったら花を咥えて戻ってきた。
草も生えていない森で、花を見つけてきたのか。
「かわいいねぇ、くれるの」
せっかく鳥が見つけてきてくれたが熊に乗っている為長くは手が離せない。
とりあえず、髪に挿しておいた。
「…その花、神鳥花だろ…そこまで、お前も何かあげたかったのかよ…ベタ惚れじゃねえか」
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