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本編
森の熊さんwith鳥
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獣の前足だろうか。
何か毛むくじゃらの大きなモノで身体を持ち上げられた。
首の後ろを噛まれている訳ではなく、丸めている身体を包み込む様に抱かれている。
そしてそのまま、獣の胸元へ引き寄せられた。
抱っこされている気がする。
頭も舐められているのだが、毛繕いをされている様な気もしてきた。
大きな猿、もしかしたらゴリラかもしれない。
獣は自分を抱えたまま、その場に座り込んだ様だ。
獣の大きな体にすっぽりと抱え込まれ、優し気にグルーミングまでされている。
もう、この獣になら食べられてもいい。
昨日から、孤独と不安の中、たった1人で過ごしてきた幼児にはまともな判断など出来るはずも無いのである。
「たべていいよ」
最後に獣にではあるが優しくしてもらった。
この獣なら痛くない様に食べてくれるかもしれない。
思い切って目を開けてみた。
猿じゃなかった。
ゴリラでもない。
熊だ。
それも3メートル以上あるであろう巨体な熊だ。
だがもう、怖くない。
あんなに恐ろしかったのが嘘の様だ。
「くまちゃ、たべるとき、いちゃいのヤダよ」
こんなに巨体な獣なら、痛みを感じる暇などなく食べてくれるだろう。
その瞬間まで、優しくしてもらおう。
熊の胸元に頭をぐりぐりと押し付けるが、嫌がる様子もなく、なんとなく嬉しそうに顔もペロペロと舐めてくれる。
「くまちゃには、ぼくじゃ、ごはん、たりにゃいねぇ」
どうせならもっと丸々とした肉付きになっていたかった。
そうすれば、この優しい熊の胃袋を少しでも満たしてあげられただろう。
だが、この身体は平均よりかなり痩せていると思う。
食べられる肉は少なすぎるが、骨等も余すところなく食べてもらえれば、少しの足しにはなるだろう。
「くまちゃは、おおきいねぇ」
「くまちゃも、ひちょり」
「ぼく、くまちゃ、すき」
昨日からの孤独を解消する様に、ひたすら熊に甘えまくる。
側から見た絵面など気にもならない。
ただ、目の前の熊に、食べてもらうその瞬間まで、甘えまくるのだ。
「くまちゃ」
「あったかいねぇ」
喋りかける度に優しく舐めてもらえる。
それだけで嬉しかった。
どれくらいこの熊と戯れていたのだろう。
気がつくと、自分と同じ位の大きさの綺麗な鳥がいた。
たぶん、自分より食べ応えがある。
なんとか、捕まえる事は出来ないだろうか。
自分の後の口直し、デザートとしてこの優しい熊に食べさせてあげたい。
「くまちゃ、まってて」
「ぼく、くまちゃのため、がんばる」
あれほど痛みのあった足の裏は不思議と全く痛くなかった。
アドレナリンが出ているからだろうか。
もう、この熊の為ならなんでも出来る気がした。
「とりちゃ、こっち、おいでぇ」
そろそろと鳥に近づくが、鳥は逃げる様子もない。
それどころか、嬉しそうに羽ばたきまるで自分を待っているかの様に見つめてくる。
あと少しで鳥に触れる距離まで近づくが、それまで動かなかった熊が自分を抱き上げ、二本足で立ち上がり、再度、鳥と距離を取ってしまう。
「くまちゃ、とりちゃ、たべれる」
「ぼくより、にく、いっぱいよぉ」
「ぼくと、とりちゃで、おなか、いっぱいよぉ」
熊の為に出来る事をしたいと必死にもがくが腕の中から出る事が出来ない。
何か毛むくじゃらの大きなモノで身体を持ち上げられた。
首の後ろを噛まれている訳ではなく、丸めている身体を包み込む様に抱かれている。
そしてそのまま、獣の胸元へ引き寄せられた。
抱っこされている気がする。
頭も舐められているのだが、毛繕いをされている様な気もしてきた。
大きな猿、もしかしたらゴリラかもしれない。
獣は自分を抱えたまま、その場に座り込んだ様だ。
獣の大きな体にすっぽりと抱え込まれ、優し気にグルーミングまでされている。
もう、この獣になら食べられてもいい。
昨日から、孤独と不安の中、たった1人で過ごしてきた幼児にはまともな判断など出来るはずも無いのである。
「たべていいよ」
最後に獣にではあるが優しくしてもらった。
この獣なら痛くない様に食べてくれるかもしれない。
思い切って目を開けてみた。
猿じゃなかった。
ゴリラでもない。
熊だ。
それも3メートル以上あるであろう巨体な熊だ。
だがもう、怖くない。
あんなに恐ろしかったのが嘘の様だ。
「くまちゃ、たべるとき、いちゃいのヤダよ」
こんなに巨体な獣なら、痛みを感じる暇などなく食べてくれるだろう。
その瞬間まで、優しくしてもらおう。
熊の胸元に頭をぐりぐりと押し付けるが、嫌がる様子もなく、なんとなく嬉しそうに顔もペロペロと舐めてくれる。
「くまちゃには、ぼくじゃ、ごはん、たりにゃいねぇ」
どうせならもっと丸々とした肉付きになっていたかった。
そうすれば、この優しい熊の胃袋を少しでも満たしてあげられただろう。
だが、この身体は平均よりかなり痩せていると思う。
食べられる肉は少なすぎるが、骨等も余すところなく食べてもらえれば、少しの足しにはなるだろう。
「くまちゃは、おおきいねぇ」
「くまちゃも、ひちょり」
「ぼく、くまちゃ、すき」
昨日からの孤独を解消する様に、ひたすら熊に甘えまくる。
側から見た絵面など気にもならない。
ただ、目の前の熊に、食べてもらうその瞬間まで、甘えまくるのだ。
「くまちゃ」
「あったかいねぇ」
喋りかける度に優しく舐めてもらえる。
それだけで嬉しかった。
どれくらいこの熊と戯れていたのだろう。
気がつくと、自分と同じ位の大きさの綺麗な鳥がいた。
たぶん、自分より食べ応えがある。
なんとか、捕まえる事は出来ないだろうか。
自分の後の口直し、デザートとしてこの優しい熊に食べさせてあげたい。
「くまちゃ、まってて」
「ぼく、くまちゃのため、がんばる」
あれほど痛みのあった足の裏は不思議と全く痛くなかった。
アドレナリンが出ているからだろうか。
もう、この熊の為ならなんでも出来る気がした。
「とりちゃ、こっち、おいでぇ」
そろそろと鳥に近づくが、鳥は逃げる様子もない。
それどころか、嬉しそうに羽ばたきまるで自分を待っているかの様に見つめてくる。
あと少しで鳥に触れる距離まで近づくが、それまで動かなかった熊が自分を抱き上げ、二本足で立ち上がり、再度、鳥と距離を取ってしまう。
「くまちゃ、とりちゃ、たべれる」
「ぼくより、にく、いっぱいよぉ」
「ぼくと、とりちゃで、おなか、いっぱいよぉ」
熊の為に出来る事をしたいと必死にもがくが腕の中から出る事が出来ない。
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