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第五話 テーラル目線~無能ばかりで困る~

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 ソフィアがいなくなってから五日が経った。
 そこで分かったのはこの国の回復術師と魔導士がとても無能だということだ。

 回復術師は大勢集めて、なんとかソフィアのやっていた仕事をこなしている。
 大人数だというのに時間はかかるは、疲れたといい休むものがいるはで全然ダメだ。

 魔導士の人数も増やしたが、結局結界をはるのに四日もかかった。
 そう、昨日結界がはられたのだ。
 しかも結界が不安定で弱い。
 このままではカミラが不安で寝れなくなってしまう。

「カミラ、大丈夫かい?」
「はい、テーラル様がおそばにいるから大丈夫ですぅ」
「そうかそうか、もし何かあったらオレが守るからな」
「きゃー、テーラル様かっこいいですわぁ」

 カミラは本当に褒めるのが上手だ。
 しかもオレのことをしっかりとわかってくれている。
 あの女とは大違いだ。

「カミラ、愛してるよ」
「私もですわぁ。テーラル様ぁ」

 チュッとキスをする。
 カミラの唇はとても柔らかくて触り心地がいい。

「テーラル様、失礼します」

 しかしオレとカミラの幸せな時間を邪魔してくるやつらがたくさんいる。

「なんだ! オレは今忙しいんだぞ!」

 そこに居たのは執事だった。

「すみません。テーラル様、国王様がお呼びです」
「なに! 用件は!」
「ノルデン王国の今後についてとしか聞いておりません」
「なるほど……。わかった。行ってこよう」

 ノルデン王国の今後ってことはオレが王になる準備とかか?
 きっとそうに違いない。

「カミラ、ちょっと行ってくるよ」
「ええ、わかりましたわぁ。いってらっしゃいませ、テーラル様ぁ」

 カミラの頭をなで、執事とともにお父さまの部屋に向かう。
 神殿の方がなにやら騒がしいが無視だ。
 どうせ、逃げ出したやつとか隠れていたやつが見つかっただけだから。

 お父さまの部屋のドアを二回ノックする。
 すると中から「入れ」と聞こえた。

「失礼する」

 ドアを開け、中に入る。
 そこにはお母さまもいた。

「単刀直入にいう。今すぐソフィアを連れ戻せ」
「は?」

 一体何をいってるんだ?
 ソフィアなんていらないに決まってるじゃないか。

「結界を維持していた魔導士が次々倒れている。このままではこの国が危ない」
「それなら魔導士を補充すればいいだけでしょう?」
「いいや、もう成績優秀な魔導士は残っていない」

 は?
 そんなわけないだろう。
 というか倒れたやつらに回復術師が魔法を使えばそれで済む話ではないか。

「お父さま。倒れたものに回復術師が魔法をかければ……」
「そもそも回復術師も疲労困憊だ」
「なぜですか!」

 なぜだ。
 なぜ、体力のないものしかいないのだ。

「聖女の魔力というものは結界と回復に特化している。そして何より魔力量、体力、精神力、どれもとても高く、優秀なのだ」
「それなら別の聖女を探せばいいでしょう!」

 なにもソフィアにこだわる必要はないのだ。

「それが……ノルデン王国は聖女がほぼ生まれないのだよ。今確認できた聖女は二名。三歳と十一歳だ」
「なっ……」

 さすがに魔法の教育を受けていない者を実践に投入は出来ない。
 実践投入は百歩譲って最高学年の学生なのだ。

「だからテーラル、おまえにソフィアを連れ戻してほしいのだ。元婚約者からのお願いなら答えるだろう」

 確かに。
 ソフィアを連れ戻すことができるのはオレしかいないのか。

「お父さま、ソフィアがどこら辺にいるかの情報をもらえますでしょうか?」
「ああ、実はもう見つけている」
「本当ですか!」

 探す手間が省けた。
 まだまだ王宮にも使える人材はいたんだな。

「ソフィアはシニストラ王国の首都にある月の石という宿にいる」
「なるほど、隣国ですか。それでは明日、馬車で行こうと思います」
「ああ、頼む」

 そっからはいくら使っていいか、馬車は何を使うか、誰を連れていくかを話した。

 お父さまの部屋からでて、カミラのいる場所にむかう。
 明日は会えないことを告げるためだ。

 カミラのもとにつくと、カミラは不安そうな顔をしていた。

「カミラ、ただいま。不安そうな顔をしてどうしたんだい?」
「それが……。結界が不安定で怖いんですぅ。だってぇ、結界がないといつ魔物がここを襲ってくるかわからないじゃないですかぁ」

 カミラは今にも泣きそうな顔をしている。
 オレはカミラを抱きしめた。

「ああ、怖い思いをさせてしまってすまない。明日、ソフィアをここに連れ戻す。それまでの辛抱だ」
「連れ戻すぅ? 何でですの?」

 カミラは不思議そうな顔をしてオレを見上げた。

「仕事が大変すぎて魔導士も回復術師もねをあげていてね。それでこの過酷な仕事はソフィアにお似合いだったとみんな言い出したんだよ」
「なるほど、確かに大変で過酷な仕事はソフィアさんに似合いますわぁ」

 ああ、カミラはわかっている。
 過酷な仕事ほどソフィアに似合う仕事はないからな。

「だろう。だから明日連れ戻しに行ってくる」
「えっ、テーラル様がいくのですかぁ~?」
「ああ、お父さまにいわれてね。だから明日は会えない」
「わかりましたわぁ……。悲しいですがテーラル様もお仕事ですものねぇ……。頑張ってください」
「ああ、頑張るよ」

 カミラの頭を撫でてやりつつ、オレはそういった。

 明日ソフィアを連れ戻したら元通りになる。
 オレが無能どもにいちいち命令しなくても済むようになるのだ。
 そしたら、カミラと一日中一緒にいられる。
 そう考えると自然と笑顔になった。
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