ブチ切れ世界樹さんと、のんびり迷宮主さん

月猫

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244 苦労人①

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「うへぇ~、疲れたよもう~」
(おつかれさま~)

 カッターナの第二拠点へ意識を移し、プルさんクッションを枕に、机に突っ伏して全力でだらける。

 家でだらけても良いのですが、何だかんだエマさんの相手をしていると、いつの間にか一日が終わりますからね。嫌では無いですが、周りから見たら休憩とは言い難いらしい。

 素直に思ったままに感情をぶつけて来るので、こちらとしてはとっても気楽なのですが……そんなに大変そうに映っているんですかね~? 

 まぁ、いい機会です。こちらにも報告もしておきたいですし、向こうが俺に気が付いて集まるまで、ここでのんびりさせて頂きましょう。頑張って、一晩・・で済ませたんですから、今日ぐらいゆっくりしても良いですよね?

 しかし、この机の上に積まれた書類は何なんでしょう? 地味に邪魔なのですが。

「ん~~~? ……これは、土地の所有権で? これが資産運営の推移表で? うんでこれが……」
(のんびりするとは?)

 は!? 机の上に広げられていた書類を見ていたら、つい。

 プルさんの声で意識が戻ったから良いものを……おのれゼニーさんめ、俺の目に付く様に最新情報をここに置いていますね?
 全く、いい仕事するじゃないですか……経営は順調に右肩上がりだ。

(ぱぱ)

 あ、はい、見るの止めます。封印です封印。視界に入ると見たくなるので、別の方向を見ましょう。

「……ここも、大分綺麗になりましたね」
(ね~)

 窓から外の様子を見れば、野戦病院の様な有様だった向かいの広場は、綺麗に整えられ、歪み傾き、ゴテゴテの装飾で誤魔化していた周囲の建物も建て替えが進み、綺麗な街並みが出来上がっている。

 丘人・森人・草人・等々、カッターナ地域に住んでいた人族達の、建築様式の良いとこ取りをしたらしいのですが、何と表現したモノか……洋中折衷?

 あ、獣人の建築様式はかなり野性味溢れるものなので、省略で。

 ……まぁ、綺麗なのはここから見える範囲だけですがね。少し離れれば、未だに建て替えと整備は済んでいないので、まだまだこれからって事です。

 カッターナの中央付近は、エスタールの支援で作られた街なのでここよりもマシなのですが……整備や補修がされていないので痛みが酷い部分が多く、結局は改築する必要がある。
 まだまだ整備は進んでいないが……まぁ、土地の所有権は持って居るので、そっちも時間の問題でしょう。

 人の方も、順調に回復中。現場復帰を果たした人も多く、日々人手が増えている。

 特に、捕まって奴隷にされたばかりの獣人達は、少しの保養で回復し、既に現場に出ている。

 鼻が良い、耳が良い、感が良いの三拍子。警備関係でその能力を遺憾なく発揮している。

 なにせ、スラムに等しい環境で育ったカッターナの住人に教養などある訳もなく、ケルドでなくとも問題を起こしますからね~。警備担当者の増員は、渡りに船だったでしょうね。

 特に子供とか、面倒の極みだ。大体ケルド混じりなので、教養以前に糞ガキしか居ないし、放置しているとすぐに成長して、繁殖するからな~。

 そんなカッターナの治安改善に、獣人達は多大な貢献をしている。お陰でエッジさんの負担も、大分軽減されたのではないでしょうかね?

 今も、雇われの庭師と思われる金狼族の獣人さんが、広場の芝生を刈り揃えているが、警備も担当しているのか、耳を忙しなくうごかして周囲を警戒している。

 う~む、中々の毛並み……あ、目が合った。

「「……」」

 相手も気が付いたのか、無言で見つめ合うこと、数秒。

 着けていたイヤリング型の通信魔道具で、どこかへ連絡を入れたらしい金狼族の庭師は、そのまま仕事に復帰する。現場を離れる様な愚行をしない所を見るに、組織体制もばっちりの様ですね。 

 これはもう、プルさんが居なくても、安心してだらけられるのではないでしょうかね? などと、他愛の無いことを考えていると……誰かが敷地の外から、土煙を上げながら走って来た。

 てか、めっちゃ速い。軽自動車並みの速度は出ているんじゃなかろうか?

 そのままの速度で拠点に入ると階段を駆け上がり、俺が居る部屋の前まで来ると、蹴り破る勢いで扉を開け放った。

 毎度毎度ここの扉、本当、不憫すぎません? 原因はだいたいエッジさんですけど。

「旦那!? 帰って来やったか!?」
「お久しぶりです、エッジさん。やせ……やつれました?」

 入って来たのは、エッジさん。一か月前と比べて、ちょっと疲れが見られる。獣人さん方の活躍で、仕事が減ったかと思っていたのですが、違うのでしょうかね?

「範囲が増えてんだよ!? どんだけ土地が増えたと思っていやがる!?」

 あぁ、全部では無いですが、販路確保とかの関係で、カッターナのほぼ全域に跨って、土地が増えていますからねぇ……そりゃ、無理も出ますわな。

 通信関係の魔道具を充実させ過ぎましたかね? 便利なのは良いですが、報告の待ち時間とか、本来休むことができる時間でも、仕事ができて仕舞うのは問題ありですね~。

「相変わらず騒がしい奴だ」
「お、ゼニーさんもお久しぶりです」

 騒ぎを聞きつけたのか、続いて入って来たゼニーさんと軽く挨拶を済ませる。こちらは見る限り、健康そうでなりよりなりより。

 取り敢えず、この二人が揃えば、大体の話はできますね。

「……ん? これは……祝辞の一つでも述べるべきか?」
「ん?」

 渋顔を浮かべ俺の事を凝視して来たかと思えば、ニヤリと笑みを浮かべるゼニーさん。祝われる覚えがなく、疑問の声があがる。何かありましてたっけ?

「……お前さん、嫁ができただろ」
「なぬぇぁあ!?」

 ゼニーさんの言葉に対し、俺が声を上げる前に、エッジさんが形容しがたい声を上げる。
 周りに自分よりも動揺した人がいると、妙に冷静になる事ってありますよね。

「旦那が女!? 群がる女共を鎧袖一触で振って来た旦那が? 有り得ないからあり得ちゃいけねぇからあってたまるかぁ!?」
「ステイステイ、一旦落ち着きたまえエッジさん」

 エッジさんがこれ程荒れているのかも疑問ですが、ゼニーさんの発言の方が気になるので、ちょっと待って。

「ワシは商人だ。武人の様に、気配から相手の強さや動きは分からんが、相手の雰囲気の変化には敏い。商機だからな。今回の場合だと、正式に婚姻を結ぶと、相手側の気配が微かに流れ込むのか、漏れ出る気配が微妙に変わる。体調の変化などの上っ面では無く、根本的な部分でな……どんな感じと聞かれても回答に困るが、この手の変化を外したことは無い」

 当たっているだろうと、自信ありげに聞いてくるゼニーさん。う~ん、これだから特化型は恐ろしい。

「旦那、違うよな? 旦那は嫁とか取って無いよな? 女とかいないよな!?」
「いや、まぁ……身に覚えが有るかと言われれば……めっちゃある」
「ちくしょーーー!!! 旦那だけは、旦那だけは無いと思ってたのに、この裏切りもんがーーー!?」

 だれが裏切り者だ、誰が。どんだけ必死なんですか。

 そもそも女関係でしたら、エッジさんの立場と実力なら、声を掛ける方ぐらいいるでしょうに。

「居るよ、居よ! だけど、そんな暇ねぇんだよ!? お前に分かるか? 仕事と私、どっちが大事なのって言われた時の、俺の気持ちがよぉ!!」

 地面に両手をつき、涙ながらに魂の叫びをあげるエッジさん。
その姿が、余りにも哀れで不憫で……なんて声を掛けていいのか、久しぶりに分からなくなりました。

「許してやれ、まだ傷が癒えてないんだ」
「……って事は、最近の出来事で?」
「…………三日前だ。ワシも無神経だった、すまん」

 おうふ……開いた傷口を抉ったか。こりゃすまん。









ーーー

「旦那って、女に興味が無かったわけじゃ無かったんだな。旦那の実力と立場なら、侍らせても違和感ないだろ。人生の半分は損してるぞ?」

「俺でなく、俺の立場にすり寄ってくる相手ゲスを? 自分の利益しか考えていない相手クズを? 自分が迫っているんだから、応えるのが当たり前と考えている相手バカを? 自分が可愛いと自惚れた相手マヌケを? 自分の都合が悪い存在を、いびって陥れる相手カスを? そんな糞尿に塗れた汚物の塊が、唾を塗りたくってくんだぞ? その手の奴に限って、見てくれが良くて、世渡りが上手くて外面がいいから、周りに集るハエ共は、ぶんぶんぶんぶん異音を垂れ流し囃し立て拒絶すれば振り払えば無責任に弾圧して来るんだぞ? いちいち反応してられるか、あぁん? 真っ当な人を巻き込めってか、おぉん? 汚物にナニを突っ込めってか、あぁ゛ん?」

「すまん、ほんとすまん。だから真顔で淡々と語るのを止めてくれ。マジでこえぇから」
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