ブチ切れ世界樹さんと、のんびり迷宮主さん

月猫

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168 情報収集②

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― ズズズ… -

「「「は~」」」

うん、美味い。

「お口に合いましたか?」
「はい、独特な渋みがいい味を出していますね。俺は好きですよ。あ、これお茶請けにどうぞ」

この苦みに会うのは、甘味かな? って事で、【倉庫】からゲッコーさん作の饅頭モドキを出しておいた。
さてと、一息つきましたし、始めましょうか。

「始める前に、一つ良いか?」

先ずは何から話そうかと思っていると、犬人さんが真っ先に話しかけてきた。一体何でしょうかね? 会議に直前で乱入したのは不味かったでしょうか。

「ここはあんたの縄張りかも知れないが、一人で来るとか、無防備過ぎないか? それとも、周りに潜んでいるのか?」

未だに耳や鼻を動かして、警戒し続けている犬人。居ない敵を探し当てようと、必死の様だ。これは申し訳ない事をしましたね。

「それなら大丈夫ですよ。この体、人形ですから」
「え? …本当だべ、通りで匂いが変だと思ったべ」

むむ、匂いですか。確かにその辺は何も弄っていませんでしたね。この辺りも後で、調整してみましょうか。

「安全なのは分かったべ。んで、要件は何だべ?」
「一つは様子見。どうです、困っていることはありますか?」
「無いとは言わんけんども、自力でどうにかすんべ」
「だな」
「じゃのう」
「うむ」

おぉ、力強いお言葉をいただきました。トップがこれだと、付いて行く下の方は幸せでしょうね、境遇は不幸でしょうが。

「もう一つは、約束を果たしてもらおうかと」
「む、情報の提供か」
「ですです、新情報はありますか?」

皆さんをここに住まわせる条件として、情報の提供を提示しましたからね。
まぁ今までは、住処の安定を最優先させていましたから、目新しい情報は無いかも知れませんが。

「それなら、丁度いい」
「どういうことかのう、ポーよ」
「アルベリオンに潜入していた仲間から、情報が入った」

何ですと!? これはこれは、予想外。まさか、敵国に諜報員を派遣していたとは。
いや、元々居たのかな? 以前から潜入して、情報は抜いていたみたいですしね、独自の情報網が有るのでしょう。

「今奴らの領地は、酷い干ばつと、不作に際悩まれている様だ」
「なんでまた」
「詳細は分からん」

あらあら、大変ですね~…くすくす。

「それと、我が国への侵略だが、何故か難航しているらしい」
「なんでだ? あの化け物は如何した」
「理由は分からないが、首都まで後退し、城内に入ってからは消息不明だ」
「何故!?」
「処分でもされましたかね~」

話を聞いていた俺の呟きを聞いて、一斉にこちらに向く一同。

「な…なんで処分されるんだよ?」
「何故って、用が済んだからですかね。今まで河を越えることができずにいたのでしょう? それを突破できたのだから、目的は達成されたと見ることもできます。何よりも、そんな化け物を生かしておいて、自分たちに牙を向けられたら、滅ぶのは自分達ですし、信用されている内に処分しようと考えても、おかしくないかと」

平和な世の中に、英雄は必要ないですからね、それもコントロールできるか怪しい場合は、尚の事でしょう。ふむ…コントロールですか

「もしくは、そいつらに見せたくないものが、アルサーンに有るか、もしくはする予定の可能性も…」
「まさか……あいつらは、アルベリオンの人間じゃない?」
「あ~…その可能性は、高いと思いますがね~。元から居る国民なら、貴方達の諜報員が何かしら掴んでいるでしょうし、試験運用をかねて、もっと早く導入したんじゃないですか?」
「……異世界人」
「なに?」
「彼らが出て来る数か月前、大量の奴隷が城内に運び込まれたことが在っただろう?」

え、何それ、俺知らない。

「……召喚陣を起動させるための、生贄か」
「あの異常な強さは、そう言う事か…クソ!!」

 周りの皆さんは、納得しているようですが、俺は全然付いて行けて無いのですが……基礎情報、常識が足りて無い感じですね。
仕方がない。話の流れをぶった切る事になりますが、片手を上げながら話に割り込む。

「ちょっと質問。異世界人って、異界の人間って事ですよね。普通に居るもんなのですか?強いんですか?」
「む? う~む、珍しくはあるが、居ない訳ではないかのぅ。儂の人生の中でも、5人程有ったことが在る」

エルフ爺さんが、俺の問いに答えてくれましたが…意外と居るのかな? これは、俺が異世界人だと言っても、問題にならない感じですかね?

「実力は千差万別、玉石混交と言ったところのぅ。一般人よりも弱い事も有れば、最高峰に食い込む程の者もおる」
「最高峰?」
「人族で言えば、エスタールの将軍【烈火】や【冷鬼】、一部のS級冒険者、有名所だと【破壊者クラッシャー】や【終焉エンド】……一番近い所だと、竜王エゼルディアとかかのぅ」
「エディさんと同等!? マジもんのバケモンじゃ無いですか」

こえぇ~、異世界人こえぇ~。近づかんどこ。このまま当初の予定通り、搦手で弱らせてから狩りましょう。

「エ、エディ? まさか竜王の事か?」
「え? あ、はい」
「いやいやいや、いくら何でも、失礼過ぎるだろ!? もしばれたら、殺されるぞ!?」
「いや、だって、向こうがそう呼べって言うんですもん」
「はぁ!?」
「まさか、前回来た時に……」
「はい、お友達になりました」
「「「……」」」

いや、そんなドン引きされても困るのですが……素直で素敵な方ですよ?

「ま、まぁ、我等が避難した先の領主が、それだけの器だったという事だべ。ここは、素直に喜んどくべ」
「お…おう」
「我からは以上だ。契約に足りる情報ものであっただろうか?」
「十分です。有難うございます」

思っていた以上の結果ですとも。鼠人の諜報員を舐めていましたね。あ、後もう一つ、ハーフエルフの件はどうでしょう?

「その事については、すまん。探らせたが何もなかった」
「すまんがワシも力にはなれん、ハーフエルフと言っても、それだけで構成された一団となるとのぅ…少なくともアルサーンやアルベリオンには居なかったとしか、言えんのぅ」

そっか~、残念。そうなると残りは、イラやエスタールの南西方面か。ゴトーさんから、その手の報告来ないんですよね。はぁ、何処に居るのやら…

俺からはもう特に何も無いので、後の時間は会議の様子を見て過ごすことにする。あ、折角の機会ですし、何か聞きたいことが在れば、答えられる範囲で答えますよ?

「ふむ。では、改めて始めようかのぅ」

話の内容は、住民の健康状態やステータス。物資や食料の過不足と流通などなど。

後は、俺が適当な場所にばら撒くように作った、ダンジョンの情報を交換していたりした。う~ん、このまま行くと、幾つかの迷宮が攻略されそうですね、見つかっていないものも在りますが、新しいのを設置しておきましょうか。

後は、先ほど鼠人ポー・チェットさんが報告した、彼等の故郷について話題が移ったところで、牛人さんが放った一言が、波紋を呼んだ。

「つまりは…なんじゃ。助けに行くと言うのか?」
「おう! このダンジョンに住んでいるからだと思うが、俺達のレベルも有り得ない速度で上がっている」
「だけんども、ここに居る者の殆どが一般人だべ。戦士だけじゃ、幾ら強くなっても焼け石に水だぁ」
「勝つとは言わん! だが……」

そして、俺の方を向く牛人さん。それを見て、兎人さんが顎に手をやり、得心したように頷く。

「成る程、それならば可能か?」
「ここに来て、更に迷宮主に頼ると言うのか?」
「いや、助けてくれなど恥知らずな事は言わん。だが、確認だ迷宮主、新たに連れて来る事は可能か?」

成る程、勝つのではなく、此処に逃がすことが目標ですか
王都に居る方達は、安全に過ごせる場所が無い為、王都での籠城戦を強いられている。だが、国を捨てる覚悟が在るならば、此処に移り住み、再出発することもできる……良いのではないでしょうか?

「問題ないですよ~、敷地については、これからも増えますしね。食料とかその他もろもろが解決するなら、お好きなように」

寧ろじゃんじゃん来てください、DPが旨いですからね。助けになるなら、尚の事です。

「敵が、こっちに来るかもしれんが、良いのかのぅ?」

エルフ爺さんが、そんな事を聞いてきた。その事に付いて周りも同意し、寧ろ遠慮がちにこちらを窺って来る。
ははは、黙っていればいいのに、皆さん優しいですね~。まぁ、だからここに住むことを了承したのですがね。

「まぁ、そう成なったら……食い殺せばいいだけですし、ね」
「ッ」

そこは、ほら。ダンジョンらしく、迎え撃ちますよ。敵地でヤバイ奴を相手にするのは嫌ですが、自分の領域なら、幾らでもやり様はありますからね。

しかし、う~む。実力はともかく、エディさんクラスですか~……幾らぐらいになりますかね?

「マイロード。ご報告したいことが御座います」
「うぉう!?」

真後ろからニョキっと顔を出し、耳元で話しかけてられる。変な声が出ちゃったじゃ無いですか。

「びっくりした~。気配消しながら背後に出現しないでください。唯でさえ<神出鬼没>は前兆が無いんですから」
「メルルル~~~。これは、これは。申し訳ありません」

反省する気ないですね、この悪魔ゴトーは!

「……仲間か?」

ん? おう、全員が魔法やら武器やらを構えて、警戒心全開でこちらを見ている。
そりゃあそうだ。一切覚られることなく、突然目の前に現れたら、そうもなりますわ。

「はい。驚かせたみたいで、申し訳ありませんね。ほら、ゴトーさんも謝る」
「メルルル、申し訳ございません。マイロードを揶揄う事に意識が向いて、配慮を忘れておりました」
「おいこら」

まったく、これだから悪魔族は。悪意無く悪戯するもんだから、怒るに怒れないんですよ。しかもやる相手をきちっと選ぶから、尚の事質が悪い……何故に俺には、遠慮が無いんでしょうかね?

「はぁ~……まぁいいです。それで、報告とは?」
「はい、とうとうカッターナが動きました」

カッターナ? あぁ、イラとエスタールの間、南西にある中立国ですね。鉱山も有名らしいですが、エディさん所との交易で、魅力が無くなりましたからね~。意識の外でしたわ。
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