ブチ切れ世界樹さんと、のんびり迷宮主さん

月猫

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122 オタク集団

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リリーさんから、粗方聞きたいことは終わりましたかね? 彼らがどの様な一団なのか、知る事もできましたし、残りの詳しい事は、あの一団の誰かから聞きましょう。

さてさて、結構な時間浸かっていましたからね、リリーさんがゆで上がる前に、上がりましょうか。

「うっへ~~~、あっちいー……」
「結構な時間浸かっていましたからね。拭いてあげますから、こっちおいで」
「へーい」

【倉庫】からタオル(<吸収>特化)を取り出し、拭って行く。
うむ、傷も完全に治っていますし、毛が傷跡に巻き込まれていることも見当たらない。それに、ちゃんと両足で立てていますね。噛み傷だけで、骨折まで行っていなかったのが幸いしました。お陰で、軽めの効能の湯だけで済みましたね。

……結構毛の質が良くなっている様な気がする。もしかして、ポーションってトリートメントの代わりに使える?
元が、ケガや肉体の破損を修復する魔法薬ですしね、毛のキューティクルとかが治ったとか?
これなら、後はブラッシングだけで良さげですかね?

「ビャクヤさ~ん、風魔法で乾かしてもらえませんか?」
「うん、分かった! いっくよー」
「「アババババッバババ!?」」

強い強い強い! てか痛い!
ビャクヤさんの体格なら問題ないでしょうけど、俺達じゃ吹っ飛びかねない、抑えて~!?

「えぇ? こ、こう?」
「ま゛、まだ強い!」
「えーっと……あぁ!?」

制御できなかったのか、風の魔法が霧散する。まぁ、水気は全部吹き飛びましたから、取り敢えずは良いか。

「う~~~」
「魔法を小さく発動するのって、そんなに難しいですか?」
「うん、普段、こんなに小さく使う事無いから……」

あぁ、言われてみれば。小さく使う機会なんて、そうそうないですね。

「でも、これができれば、できることの幅が広がると思いますよ?」
「例えば~?」

そうですね~、コアさん任せで、俺自身は魔法を使う事ができないですから、想像になりますけど……

体中に風の鎧を纏うとかすれば、弱い攻撃や雑魚を蹴散らすのに使えたりとか、手足に纏わせて、攻撃範囲を伸ばしたりとか。細かく操作できれば、普段の操作が楽になるでしょうから、行動しながら発動したりとか効率が良くなったりとか?

「「おぉ~~~」」

ビャクヤさんだけでなく、リリーさんも感心しているんですけど、これって、一般的な考えじゃ無いんでしょうか?

「うん、魔法の練習って言ったら、規模を大きく、早くが普通かな?」

まぁ、後衛職ですからね、そうなるのも頷けるか。
特に魔法が得意な子は、必然的に肉体に魔力を留めておくことが難しくなりますから、肉体面は弱いのが普通。前線に立つことも無いでしょうし、魔法戦士的な存在は貴重か。

……あれ? 獣人って、身体能力が高くて、その反面魔法は不得意ってイメージだったのですが、魔法の練習をしているって事は、結構いける口?

「魔法は普通に使うよ? 火を起こしたり、埃を払ったり、水を運んだり、あと、狩りにも使うし、人種の中では、二番目位に魔法が上手いんじゃないかって、エルフじいちゃんが言ってた」

おや、以外ですね。って事は、獣人って身体能力高くない? でも、ここまで来られた事を考えれば、肉体が弱いとも思えないですし、新たな疑問が生まれてしまった?
その辺の事も大人の、リリーさんが言った人辺りに、聞いてみ……

「……エルフ? ……居るの?」
「うん、一人だけ」

だ、大丈夫かな~……。
世界樹さんも落ち着いてきましたし、一人だけで獣人さん達と一緒に居る、変わり者の森人エルフみたいですし、関りの可能性も薄いでしょう。

うん、大丈夫、きっと、恐らく、メイビー……

―――

「これ良い! 欲しい!!」
「持って行きますか?」
「良いの!?」

リリーさんは、ブラシが気にった様子。
こっちでは、木製の櫛やブラッシの形が一般的らしく、毛で出来たブラシは、一般的ではないんだとか。結構意外ですね、魔物の素材でできたブラシとか有りそうなもんですけど。

今もリリーさんは、自分の尾を梳いている。何でも、他人の毛繕いをするのは家族だけなんだとか。洗うのは良くて、ブラッシング、毛繕いはダメって、違いは何なのだろうか。異文化交流は難しい。
まぁ、都合が良かったから、良いですけど。

「ワッフ~~~ン……」

こっちは、ビャクヤさんのブラッシングで忙しいですしね。
これ以上放置して、拗ねられても嫌ですし、この後もビャクヤさんには、お願いしたいことありま…すし……

「……」(ちら?)
「……」
「「「……」」」(ちらちら?)

柱の影からこちらを覗う集団が……こいつ等、わざと気配出しましたね?
つまり、話しかけろと……

「……何の用ですか、タクミさん」

そこに居たのは、タクミさんを筆頭に、服や装飾作成が好きな子達で結成された、生産部、装飾課の子達。ルナさんの衣装を作ったのもこの子達である。

「その子、獣人?」

か、嗅ぎつけやがったな、職人オタク共め!

「……そうですよ、今来ている集団のところの子で、この後“すぐに”送り届ける予定です」

“すぐに”の部分を強調して言ってみたが、獲物を見つけた彼らは、気が付く処か、気にすることなどない。
あの目はヤバイ。視界を遮るように、じりじりとリリーさんと彼らの間に移動する。

「その格好のままで? 服は?」
「……【倉庫】の中にある、サイズの合ったものでも」
「「「却下ーーー!!!」」」

全力で、俺の提案を否定して来るオタク共。一応俺、ここの主なんですけど……

「そんな、勿体ない!!」
「折角の生の素体! 逃し…適当なものを着せるなんて有り得ない!」

おい、逃がすって言おうとしなかったか? 獲物じゃ無いよ?

「ねぇねぇ? こんなのに興味ない?」

後ろから、リリーさんが居る辺りから話し声が聞こえてくる。振り向けば、そこには既に蜥蜴族の子がリリーさんに対して、幾つもの服を見せていた。
仕舞った!? こいつらはフェイク! 意識を逸らす為の囮! しかもよく見れば、隠密特化シャドーの子じゃないですか! 本気過ぎるぞ、こいつ等!?

「あ、可愛いかも……でも、尻尾とか、僕の体じゃ着られないかな」
「そっか! じゃぁ体に合ったものを作ろうか」
「サイズも図ろうね~」
「要望有る? どんな服でも造っちゃうよ~」
「ここじゃあれだね? 奥に行きましょうね~」
「え? ちょっと? ダンマス!? おい! ダンマス、助けて!!??」

目を付けられたのが運の尽き。
彼等は職人、俺ではなく、生産に魂を捧げた者たち。もう俺には、どうしようもないのです。

わらわらと集まった子達に担がれ、ドナドナされるリリーさん。

俺は、その後ろ姿を見送る事しかできなかった……合掌

「キャイーーーン!!??」
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