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111 黒狐が行く!④
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穴から出て、明るい場所に出ると、さわやかな風が頬を撫でた。
「広いっすね!」
「広いって言うか…太陽あるし、ここ外よね?」
「太陽って何っすか?」
そうだよね、この子達からしたら、地上は初めてだものね。地下の空洞と外との違いが分からなかったのか。しかし、ずっと地下に居たせいか空気が美味しいわね。乱立する巨大な木々、その枝葉から差し込む光。うん、視界が悪い!
「姉御! これからどうします?」
「他の奴らも、連れてきますか?」
う~ん、サバイバル知識は無いから、どうしたらいいか分からない。ここは野性的な本能に任せて行動したほうがいいかな? ……野性的な行動って、どないせいちゅうねん。
思っていた以上に浅かったし、ここを中心に活動して、地下を避難場所にすれば、結構安全?
取り敢えず、周囲の安全確認、で、良いよね? 皆を連れて来るのは、それからでいいでしょう。いいよね? 合ってるよね?
「って訳で、プリンちゃん、行ってきなさい。敵を見つけたら、無理はしないようにね」
「了解しやした。野郎共! 偵察に行くぞ!」
「「ワンワンオー!」」」
「静かに行けや!」
隠密行動を心がけてよね、もう。何が居るか分かんないんだから。
しかし、プリンは無かったかしらね。鼠だったころは活発だな~程度だったから、こんな口調だと思わなかったのよ。今更改名もできないし…可愛いからいいか!
待って居るのも暇だし、私も少し探ってみましょうかね。近くに、他に地下への穴でも無いかしらね~
「姉御、姉御! メシ見っけた」
「早!?」
近くの茂みが揺れ、プリンちゃんが顔を出す。口には茶色い何かを咥えている。これは、巨大鼠の亜種?
「弱かった!」
「いっぱい居た!」
「でも逃がした、足速い!」
大きさは同じくらいだけど、こっちの方が弱いのか。その代わり数が多くて速いのね。
良し、そんなのが生き残っているなら、力関係はそこまで絶望的では無い筈。周囲の安全を確保したら、他の子達も呼ぼう。
「その為にも、私も出るわ」
「ダメっす姉御、姉御に何かあったら、取り返しがつかないっす!」
「そんなの、危険なのは皆も同じよ」
「「「同じじゃない!!」」」
そ、そんな怒鳴る事無いじゃない。危険度は同じなんだから、皆は探索に力を入れて貰って、他より強い私が出た方が確実じゃん。
「姉御は…姉御は唯一無二なんです! 代わりの利くおいらとは違うっす!」
「姉御は、デーンと構えていてくれれば良いんす!」
生れた時からそうだったけど、皆私に対して過保護に過ぎる。私だって死にたくないし、死ぬつもりも無い。心配してくれる事自体は嬉しいんだけどね。
「…言いたいことは分かったわ」
「では!」
「それでも出るわ」
「姉御!?」
確かに、守るだけならそれでいいかも知れないけど、それじゃぁきっとじり貧になる。だって、トップの私が進化しないと、皆も進化できない可能性が有るんだもの。リスクを恐れては、リターンは得られない。私の自己強化は、必須事項よ!
「勝てない相手ならすぐに逃げるし、それならいいでしょ?」
「ム~~~」
それでも渋る、プリンちゃん。
勝てない、逃げれない相手なんて、遭遇した時点で終わりなんだから、何処に居たって同じよ。
「それとも…私が危ない時に、近くに居ないつもり?」
「それは!?」
「だった初めから私の近くに居て、全力で守りなさい!」
「!? …分かりやした、姉御。お供させて頂きます!」
良し、探索開始…の前に、ビスケちゃんとショコラちゃん達も呼んで、ここの守りを任せましょう。他には、ロールちゃんにも探索に加わってもらわないと。目標は、安全確保と肉以外の食べ物よ、そろそろ肉以外の物も食べたいの!
―――
森の中を進んでいく。時々弱い奴を見かけはしたけど、周囲に危険な存在は確認できなかった。これってもしかして、私達って結構強い?
これなら、もう少し冒険しても良いかも知れないわね。安全を確保した範囲が広い程、危険が近づいて来た時気付きやすいし、対処するまでの時間が稼げるはず!
「もう少し、奥まで行ってみましょう」
取り敢えず、真っ直ぐ進んでみる。変に曲がりくねって迷いたくないし。
だってここ、木ばっかりで風景が変わらないんだもん。皆が居なかったら、迷う自信あるわ。最初は良い所だなと思ったけど、流石にこれじゃ飽きるわね。
そんな訳で、どんどん奥まで進んでいった訳だけど…
「なんも居ないっすね」
「メシも見つかんないっす」
途中から何も見つからなくなっちゃったのよね。あの穴から、生き物が湧いてるから、奥に行くと生き物が少なくなるのかな? 御飯とか豊富そうだし、無理して移動する理由も無いのかもね。
「…ッシ」
「何かあった?」
「……何か居やす」
何処だろう……全然わからん、こうゆうのは苦手だ。直接的な危険にはすぐに反応できるのに、こう、野生の勘的なのが全く働かないのは、遺憾ともしがたい。
姿勢をさげ、慎重に進む。
「あ…姉御。これ以上は」
「何かあった?」
「分かりやせん。だけど、尻尾の震えが止まらねぇんでさぁ」
プリンちゃんを見れば、尾を後ろ脚の間に挟み、腰が引けていた。他の子達も同様で、完全に怯え切っていた。弱い鼠の頃に巨大鼠に襲われた時ですら、こんな姿見無かったわよ。
「そんなにヤバイの?」
「姉御の近くなら、どんな奴が相手でも平気だと思ってやしたけど…無理です、これ以上は危険です」
「ひ…引き返しやしょう」
そんな存在が近くに居るだなんて、そんなんじゃ安心して生活できない。尚更確認しなきゃならないわ。皆の安全の為にも、ここはリスクを取る!
「貴方達はここに居なさい。確認して来るわ」
隠密は苦手だけど、流石にこんな状態の子達を引き連れて行くわけにはいかない。姿勢を低く、足元に気を付けて、なるべく音を立てない様に…って、イッタイ!?
「お、お願いしやす姉御。戻ってきてくだせぇ」
後ろを振り向けば、プリンちゃんが今にも泣きそうな顔で、私の尾に噛付いていた。うぐぅ、その表情は反則よ。
……あぁもう、分かったわよ。今後こっちには来ないって事で、引き返しましょう。
安堵の表情を浮かべる皆を引き連れ、踵を返す。近くに危ないモノがあるだなんて、落ち着かないんだけどな~。
「ん?」
「どうしたの?」
「なんか聞こえません?」
音? あ、本当だ。
森の奥から、バキバキミシミシっと木が裂ける様な音がし、パキパキと枝が折れる音と共に、影が差す。上を向けば、木々の隙間から差し込む光を遮る様に、巨大な何かがどんどん迫ってきていた。あれ、これって直撃コースじゃ?
「た、退避―――!」
歪に捻じれた巨木が、私達が居る所擦れ擦れに倒れてきた。あ、危なかった、皆も無事ね。
森の奥に居るヤバイ何かが倒してきたの? こんな大きな木を? これがこっちを狙っての事なのか、偶然だったのかは分からないけど。ここに長居しない方が…
「キ?」
「え?」
倒れてきた木の枝葉の間、そこに引っ付いていた黒い何かと、目と目が合った。
フニフニピコピコと動く触覚、鋭い爪と牙、少し艶のある硬そうな黒い体、妙に愛嬌のある目をした。えっと…巨大アリ?
「姉御!」
皆もその存在に気が付いたのか、巨大アリと私との間に割り込み、唸り声を上げる。ずっと一緒に居たから分かる、威嚇に怯えが混じっている。普段なら突然としても、こんな切羽詰まった声を上げたりしない。つまり此奴が、皆が怯えていた原因?
強そうには見えないけど、野生の勘的には相当ヤバイのかしら…毒とか?
だが、見えてさえいれば私だって反応できる。開けたこっちに来た時が、お前の最後だ!
掛かってきやがれこの野郎! 囲んで叩いてやる!
「キ?」(どちらさん?)
ギャー、喋ったー!?
―――
「えー、この先なにも無いの?」
「うん、全部食べつくされて、草一本も無いよ。有るのは地中に産み付けられた、害虫の卵だけだね」
話の分かる人…蟻さんで良かった。後ろでは、今でも他の蟻達がせっせと掘り起こした木を運んでいる。何でも、肥料にしたり建材にしたり、挿し木として何もない敷地に植林するらしい。そんな簡単に生えるもんなの? 魔法で何とかなる? へ~~~……
「魔法!?」
「そう」
「どうやって使うの!?」
「え、感覚で使い方は分かるはずだけど」
いやいや分からないって、イメージしろとでも…え? マジで?
「厳密に言うと、感じられる魔力に、働きかける? 意識する? 外に出しながらそれが変化する様にイメージする…かな? 普段は感覚でやってるから受け売りだけど」
むぬぬ、イメージか。その前に魔力ってモノも感じ取らないとダメなのよね。何だったかな~、こう、体の内側に意識を向けて、魔力が無かった頃に無かった感覚を見つける的な話を、前世でゲームに誘って来た奴が言っていたような……
目をつぶって自分の中に意識を集中する。体の中に流れてるのよね、だったら血液の流れをイメージすれば良いのかな?
…、…、……? …………あれ? イヤイヤまさか~。腕の動脈辺りを、反対の手で押さえる……脈が無い…だと?
「どったの?」
「み、脈が無い」
「はぁ? あるじゃん、何言ってるの?」
いやいやいや、こうドクンドクンって、脈打つ感覚が無いでしょう!?
「良く分からないけど…ちゃんと魔力は流れてるよ。感じられてないだけじゃ無いかな?」
「え? 心臓は?」
「核? 魔石の事?」
どうやら魔石ってやつが、体内に魔力を循環させているみたい。それが、心臓の代わりになっているの? そして、魔力を感じられないから、脈も感じないと? 体の構造自体が、普通の動物と違うの?
……考えて見ればそうか、でなきゃ進化なんて、物理法則を無視した成長なんてできないか。
脈が無いって事は、あれだ。血が無いって訳では無いから、あの紅いのが魔力? …なんか違う気がする。あれは血として、酸素の代わりに魔力が含まれているとか? 心臓が物理的に血液を送っているのとは違って、魔石が魔法で送り出しているとか。だから脈が無い?
じゃぁ、血液が体内に巡っているのをイメージすれば、感じ取れるかな?
あ、これ…かな?
試しに、体の外に出て行く様にイメージしてみる。おぉ出て行く出て行く、そしてこれにイメージを込めればいいのよね?
イメージ、イメージ……・
(燃えろ)
― ボン ―
「「「おぉ!?」」」
……できちゃった。
「広いっすね!」
「広いって言うか…太陽あるし、ここ外よね?」
「太陽って何っすか?」
そうだよね、この子達からしたら、地上は初めてだものね。地下の空洞と外との違いが分からなかったのか。しかし、ずっと地下に居たせいか空気が美味しいわね。乱立する巨大な木々、その枝葉から差し込む光。うん、視界が悪い!
「姉御! これからどうします?」
「他の奴らも、連れてきますか?」
う~ん、サバイバル知識は無いから、どうしたらいいか分からない。ここは野性的な本能に任せて行動したほうがいいかな? ……野性的な行動って、どないせいちゅうねん。
思っていた以上に浅かったし、ここを中心に活動して、地下を避難場所にすれば、結構安全?
取り敢えず、周囲の安全確認、で、良いよね? 皆を連れて来るのは、それからでいいでしょう。いいよね? 合ってるよね?
「って訳で、プリンちゃん、行ってきなさい。敵を見つけたら、無理はしないようにね」
「了解しやした。野郎共! 偵察に行くぞ!」
「「ワンワンオー!」」」
「静かに行けや!」
隠密行動を心がけてよね、もう。何が居るか分かんないんだから。
しかし、プリンは無かったかしらね。鼠だったころは活発だな~程度だったから、こんな口調だと思わなかったのよ。今更改名もできないし…可愛いからいいか!
待って居るのも暇だし、私も少し探ってみましょうかね。近くに、他に地下への穴でも無いかしらね~
「姉御、姉御! メシ見っけた」
「早!?」
近くの茂みが揺れ、プリンちゃんが顔を出す。口には茶色い何かを咥えている。これは、巨大鼠の亜種?
「弱かった!」
「いっぱい居た!」
「でも逃がした、足速い!」
大きさは同じくらいだけど、こっちの方が弱いのか。その代わり数が多くて速いのね。
良し、そんなのが生き残っているなら、力関係はそこまで絶望的では無い筈。周囲の安全を確保したら、他の子達も呼ぼう。
「その為にも、私も出るわ」
「ダメっす姉御、姉御に何かあったら、取り返しがつかないっす!」
「そんなの、危険なのは皆も同じよ」
「「「同じじゃない!!」」」
そ、そんな怒鳴る事無いじゃない。危険度は同じなんだから、皆は探索に力を入れて貰って、他より強い私が出た方が確実じゃん。
「姉御は…姉御は唯一無二なんです! 代わりの利くおいらとは違うっす!」
「姉御は、デーンと構えていてくれれば良いんす!」
生れた時からそうだったけど、皆私に対して過保護に過ぎる。私だって死にたくないし、死ぬつもりも無い。心配してくれる事自体は嬉しいんだけどね。
「…言いたいことは分かったわ」
「では!」
「それでも出るわ」
「姉御!?」
確かに、守るだけならそれでいいかも知れないけど、それじゃぁきっとじり貧になる。だって、トップの私が進化しないと、皆も進化できない可能性が有るんだもの。リスクを恐れては、リターンは得られない。私の自己強化は、必須事項よ!
「勝てない相手ならすぐに逃げるし、それならいいでしょ?」
「ム~~~」
それでも渋る、プリンちゃん。
勝てない、逃げれない相手なんて、遭遇した時点で終わりなんだから、何処に居たって同じよ。
「それとも…私が危ない時に、近くに居ないつもり?」
「それは!?」
「だった初めから私の近くに居て、全力で守りなさい!」
「!? …分かりやした、姉御。お供させて頂きます!」
良し、探索開始…の前に、ビスケちゃんとショコラちゃん達も呼んで、ここの守りを任せましょう。他には、ロールちゃんにも探索に加わってもらわないと。目標は、安全確保と肉以外の食べ物よ、そろそろ肉以外の物も食べたいの!
―――
森の中を進んでいく。時々弱い奴を見かけはしたけど、周囲に危険な存在は確認できなかった。これってもしかして、私達って結構強い?
これなら、もう少し冒険しても良いかも知れないわね。安全を確保した範囲が広い程、危険が近づいて来た時気付きやすいし、対処するまでの時間が稼げるはず!
「もう少し、奥まで行ってみましょう」
取り敢えず、真っ直ぐ進んでみる。変に曲がりくねって迷いたくないし。
だってここ、木ばっかりで風景が変わらないんだもん。皆が居なかったら、迷う自信あるわ。最初は良い所だなと思ったけど、流石にこれじゃ飽きるわね。
そんな訳で、どんどん奥まで進んでいった訳だけど…
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「メシも見つかんないっす」
途中から何も見つからなくなっちゃったのよね。あの穴から、生き物が湧いてるから、奥に行くと生き物が少なくなるのかな? 御飯とか豊富そうだし、無理して移動する理由も無いのかもね。
「…ッシ」
「何かあった?」
「……何か居やす」
何処だろう……全然わからん、こうゆうのは苦手だ。直接的な危険にはすぐに反応できるのに、こう、野生の勘的なのが全く働かないのは、遺憾ともしがたい。
姿勢をさげ、慎重に進む。
「あ…姉御。これ以上は」
「何かあった?」
「分かりやせん。だけど、尻尾の震えが止まらねぇんでさぁ」
プリンちゃんを見れば、尾を後ろ脚の間に挟み、腰が引けていた。他の子達も同様で、完全に怯え切っていた。弱い鼠の頃に巨大鼠に襲われた時ですら、こんな姿見無かったわよ。
「そんなにヤバイの?」
「姉御の近くなら、どんな奴が相手でも平気だと思ってやしたけど…無理です、これ以上は危険です」
「ひ…引き返しやしょう」
そんな存在が近くに居るだなんて、そんなんじゃ安心して生活できない。尚更確認しなきゃならないわ。皆の安全の為にも、ここはリスクを取る!
「貴方達はここに居なさい。確認して来るわ」
隠密は苦手だけど、流石にこんな状態の子達を引き連れて行くわけにはいかない。姿勢を低く、足元に気を付けて、なるべく音を立てない様に…って、イッタイ!?
「お、お願いしやす姉御。戻ってきてくだせぇ」
後ろを振り向けば、プリンちゃんが今にも泣きそうな顔で、私の尾に噛付いていた。うぐぅ、その表情は反則よ。
……あぁもう、分かったわよ。今後こっちには来ないって事で、引き返しましょう。
安堵の表情を浮かべる皆を引き連れ、踵を返す。近くに危ないモノがあるだなんて、落ち着かないんだけどな~。
「ん?」
「どうしたの?」
「なんか聞こえません?」
音? あ、本当だ。
森の奥から、バキバキミシミシっと木が裂ける様な音がし、パキパキと枝が折れる音と共に、影が差す。上を向けば、木々の隙間から差し込む光を遮る様に、巨大な何かがどんどん迫ってきていた。あれ、これって直撃コースじゃ?
「た、退避―――!」
歪に捻じれた巨木が、私達が居る所擦れ擦れに倒れてきた。あ、危なかった、皆も無事ね。
森の奥に居るヤバイ何かが倒してきたの? こんな大きな木を? これがこっちを狙っての事なのか、偶然だったのかは分からないけど。ここに長居しない方が…
「キ?」
「え?」
倒れてきた木の枝葉の間、そこに引っ付いていた黒い何かと、目と目が合った。
フニフニピコピコと動く触覚、鋭い爪と牙、少し艶のある硬そうな黒い体、妙に愛嬌のある目をした。えっと…巨大アリ?
「姉御!」
皆もその存在に気が付いたのか、巨大アリと私との間に割り込み、唸り声を上げる。ずっと一緒に居たから分かる、威嚇に怯えが混じっている。普段なら突然としても、こんな切羽詰まった声を上げたりしない。つまり此奴が、皆が怯えていた原因?
強そうには見えないけど、野生の勘的には相当ヤバイのかしら…毒とか?
だが、見えてさえいれば私だって反応できる。開けたこっちに来た時が、お前の最後だ!
掛かってきやがれこの野郎! 囲んで叩いてやる!
「キ?」(どちらさん?)
ギャー、喋ったー!?
―――
「えー、この先なにも無いの?」
「うん、全部食べつくされて、草一本も無いよ。有るのは地中に産み付けられた、害虫の卵だけだね」
話の分かる人…蟻さんで良かった。後ろでは、今でも他の蟻達がせっせと掘り起こした木を運んでいる。何でも、肥料にしたり建材にしたり、挿し木として何もない敷地に植林するらしい。そんな簡単に生えるもんなの? 魔法で何とかなる? へ~~~……
「魔法!?」
「そう」
「どうやって使うの!?」
「え、感覚で使い方は分かるはずだけど」
いやいや分からないって、イメージしろとでも…え? マジで?
「厳密に言うと、感じられる魔力に、働きかける? 意識する? 外に出しながらそれが変化する様にイメージする…かな? 普段は感覚でやってるから受け売りだけど」
むぬぬ、イメージか。その前に魔力ってモノも感じ取らないとダメなのよね。何だったかな~、こう、体の内側に意識を向けて、魔力が無かった頃に無かった感覚を見つける的な話を、前世でゲームに誘って来た奴が言っていたような……
目をつぶって自分の中に意識を集中する。体の中に流れてるのよね、だったら血液の流れをイメージすれば良いのかな?
…、…、……? …………あれ? イヤイヤまさか~。腕の動脈辺りを、反対の手で押さえる……脈が無い…だと?
「どったの?」
「み、脈が無い」
「はぁ? あるじゃん、何言ってるの?」
いやいやいや、こうドクンドクンって、脈打つ感覚が無いでしょう!?
「良く分からないけど…ちゃんと魔力は流れてるよ。感じられてないだけじゃ無いかな?」
「え? 心臓は?」
「核? 魔石の事?」
どうやら魔石ってやつが、体内に魔力を循環させているみたい。それが、心臓の代わりになっているの? そして、魔力を感じられないから、脈も感じないと? 体の構造自体が、普通の動物と違うの?
……考えて見ればそうか、でなきゃ進化なんて、物理法則を無視した成長なんてできないか。
脈が無いって事は、あれだ。血が無いって訳では無いから、あの紅いのが魔力? …なんか違う気がする。あれは血として、酸素の代わりに魔力が含まれているとか? 心臓が物理的に血液を送っているのとは違って、魔石が魔法で送り出しているとか。だから脈が無い?
じゃぁ、血液が体内に巡っているのをイメージすれば、感じ取れるかな?
あ、これ…かな?
試しに、体の外に出て行く様にイメージしてみる。おぉ出て行く出て行く、そしてこれにイメージを込めればいいのよね?
イメージ、イメージ……・
(燃えろ)
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