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67 竜の調査隊?③
しおりを挟む「居ました~」
「えぇ! こちらも確認しました!」
巨木の根本に、群れている姿を確認する。
向こうも着いたばかりの様ですね。道中の荒れ模様を見れば、徹底的に荒らしながら進んだのでしょう。お陰で追いついた。
「やっぱり、ここの飯美味いっすね!」
「でも肉がないぜ? ちょっと物足りないな!」
「ふむ、食料を供給させるのも有りか?」
「あれ? 潰さないんで?」
「我々が受けた損害を、補填すべきだと思わないか?」
「でも、言う事聞きますかね?」
「我々の糧になるのだ、これほどの名誉もあるまいよ。許しを請う機会を、与えてやろうではないか」
「流石兄貴! なんて慈悲深い!」
・・・・・・頭痛い。
「・・・・・・何、勝手なこと言っているのかしら、理解不能だわ」
「あれは最早、そう言うものと思うしかありません。理解しようとするだけ無駄です」
「なんて~、言ってるんですか~?」
吐竜は賢竜程、耳が良くないですからね。流石にこの距離は聞き取れませんか。
しかし、どうしたものか。あれほど木に近づかれてしまっては、テレのブレスは撃てないですね。
「・・・・・・聞くだけ不快になるだけよ」
「は~い」
「あの位置では、テレのブレスは撃てません」
「では、奇襲を仕掛けますか?」
それしかないか? 数も相手の方が多い。あの糞虫を一番に取り押さえられれば・・・・・・
「ん~~~? あいつ等って~、全員で六体でしたよね~?」
「えぇ・・・・・・一体足りない?」
よく見ると(視界にも入れたくないけど)、奴らは四体しか居ない。一体は、ここに来るまでに撒いているので、確かに一体足りない・・・・・・まさか!?
― ドン! -
「ガァ!?」
「な!エレン様!?」
私達が居た更に上空から、何かが圧し掛かり、地面へと叩き付けられた。
「ガハ、ゴホ!」
「ん? なんだ、エレンか。ククク、こんな所まで追いかけてくる何て、そんなに俺の事が気になるのか? それならもっと素直になればよいものを」
クソ! クソ! クソ! こんな所でしくじるなんて!? この馬鹿どもが、奇襲なんて考え付くとは、思っても見なかった!
周りにいる腰巾着共も、好き勝手なことを口走っている様だが、気にしている余裕がない。この状況、どうしたら!?
「貴様!! エレン様から離れろ!!」
「離れろ~」
賢竜であるシスタでは、こいつ等には勝てないし、テレのブレスは、この状況じゃ撃てない。そして私は、上から手を取り押さえられ、弱点である首の魔力袋に牙を突き付けられている。
・・・・・・詰み
そんな言葉が私の中に浮かぶ。
行動できなければ、状態は改善しない。しかも、こいつらに会話は成立しない。何か、何でも良い、せめて切っ掛けだけでも有れば!
(え~と、何の用ですか?)
こんな状況にふさわしくない、困惑した様な、呆れたような声が、あたりに響いた。しかもこれは・・・・・・<念話>? だとしても、これ程の範囲に行き渡らせるなんて、どんなレベルと魔力量よ!?
「やっと現れたか、臆病者! さっさと姿を現せ!」
(臆病者? 俺たちが臆病者だとしたら、お前たちは野蛮人? 野蛮竜って所ですか?)
「あ˝ぁ? 下等生物が吠えてんじゃねぇぞ!!」
「兄貴が優しく接してれば調子に乗りやがって! 自分の立場が、分かってんのか?」
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?)
良かった、良くないけど良かった。相手の感性は、少なくともまともそうだ。しかも会話が成立する。
「そっちから攻撃しといて、とぼける気か!? 落とし前、どうつけるつもりだ? あ˝ぁ!?」
(攻撃? した覚えが無いのですけど? むしろ、攻撃してきたのはそちらでは?)
「虫嗾けといて、何言ってやがる!!」
(???)
困惑がこちらにまで伝わってくる。あちらが攻撃されたと言ったのは分かる。森の外での虫型の魔物の事だろう。そうでなくても、この森の惨状を見れば、彼ら側の主張ももっともだ。
「ククク、そう威圧してやるな、怯えているじゃないか。向こうも、俺たちほどの存在が居ることに驚いているのだろうよ。確かに、あれ程の軍勢だ、負けると思ってはいなかったんだろう」
(軍勢? あ、あ~~~あれの事ですか、ベテルボロ・ラッチ。あれは俺たちと無関係・・・・・・て、訳では無いですね。ですが、俺たちが意図して起こしたことでは無いですよ。むしろ、こちらも被害者です)
ベテルボロ・ラッチ、今回私たちの谷に攻め入った虫の魔物の名前ですね。しかし、向こうの主張を信じるに、ここの主が放った魔物では無いようだ。
・・・・・・つまり今、向こうは言い掛かりで、縄張りを荒らされていることになる。印象は最悪ですね。
― ドゴーン・・・・・・ ―
轟音と共に、巨木に新たに火が付く。またこいつは!?
「・・・・・・お前の拙い言い訳に、付き合うつもりはない。俺たちが紳士的なうちに投降しろ。せめてもの慈悲だ、お前に我々へ奉仕する権利をやろう!!」
(・・・・・・は~~~~、竜族ってのは、皆こんな奴ばかりなのか?)
不味い、このままだと、竜族とこの糞虫を一括りにされてしまう! そうなってしまったら、今後の対話に重大な支障をきたす!
「待って! 待って下さい! 私たちは、こいつ等とは違う! 無関係です!」
「おめーらは黙ってろ! この竜族の面汚しどもが!!」
「え~、ならお前たちは~、吐瀉物ですね~」
「なんだと! 雑魚のくせに、生意気言ってんじゃね~ぞ、憶病もんが!」
(あの~、喧嘩なら、余所でやってもらえませんか~?)
今は口論している場合では無いと言うのに。向こうも呆れている。
・・・・・・いや、むしろ有りなのか? この状態は、明らかな対立関係だ。私たちに敵意がない事を示すことができれば。その差は決定的になる。
・・・・・・問題は、竜族の恥を晒し続けることね。この際、手段を選んでいられないか。
「こんな下等生物、俺ら竜族の為に生きてりゃいいんだ!!」
「頭~、可笑しんじゃないの~?」
「何言っても無駄よ、竜王様の命令も理解できない、異常者集団よ。何でこんな奴が・・・・・・」
(・・・・・・もういいわ、お前ら)
―ゾワリ―
「!? なんだ?」
「なんか、今」
体の芯まで覗かれるかのような錯覚を覚える。この感覚は、<鑑定>を掛けられた時の感覚!? でも、これほど深く覗かれるなんて! いったいどれ程のレベルなの!?
「てめえ・・・・・・何しやがった」
(・・・・・・ふ~ん、仲間じゃないのは本当みたいですね)
(こいつ等、はぐれ竜なの?)
(みたいですね。つまり、今居るこいつ等だけで噛みついてきたと・・・・・・)
(この数と、実力でなの?)
(じゃないですか?)
(・・・・・・馬鹿なの?)
(気狂いかもしれないですよ?)
散々な言われ様ね。会話をしている感じから、向こうは二体以上でこちらを見ている。でも、会話の流れから見て、私たちとこいつ等が仲間じゃ無いことを、分かって貰えたのかしら? しかも、はぐれ?
「舐めてんじゃねぇぞ! あぁ!?」
(・・・・・・で? 貴方たちは何処から、何を目的に、ここまで来たのですか?)
「無視してんじゃねぇ!」
(・・・・・・どうしました、お三方? そちらは対話を望んでいる様子でしたが、勘違いでしたか?)
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言葉は慎重に選べ、相手を刺激しない、かつ端的に、分かりやすく、こちらの目的を相手に告げるのだ!
「わた(あれ? また増えた?)し?」
話そうと口を開こうとしたとき、ここの主と思われる者の呟きが聞こえた・・・・・・増えた?
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