ブチ切れ世界樹さんと、のんびり迷宮主さん

月猫

文字の大きさ
上 下
71 / 330

67 竜の調査隊?③

しおりを挟む

「居ました~」
「えぇ! こちらも確認しました!」

巨木の根本に、群れている姿を確認する。
向こうも着いたばかりの様ですね。道中の荒れ模様を見れば、徹底的に荒らしながら進んだのでしょう。お陰で追いついた。

「やっぱり、ここの飯美味いっすね!」
「でも肉がないぜ? ちょっと物足りないな!」
「ふむ、食料を供給させるのも有りか?」
「あれ? 潰さないんで?」
「我々が受けた損害を、補填すべきだと思わないか?」
「でも、言う事聞きますかね?」
「我々の糧になるのだ、これほどの名誉もあるまいよ。許しを請う機会を、与えてやろうではないか」
「流石兄貴! なんて慈悲深い!」

・・・・・・頭痛い。

「・・・・・・何、勝手なこと言っているのかしら、理解不能だわ」
「あれは最早、そう言うものと思うしかありません。理解しようとするだけ無駄です」
「なんて~、言ってるんですか~?」

吐竜は賢竜程、耳が良くないですからね。流石にこの距離は聞き取れませんか。
しかし、どうしたものか。あれほど木に近づかれてしまっては、テレのブレスは撃てないですね。

「・・・・・・聞くだけ不快になるだけよ」
「は~い」
「あの位置では、テレのブレスは撃てません」
「では、奇襲を仕掛けますか?」

それしかないか? 数も相手の方が多い。あの糞虫を一番に取り押さえられれば・・・・・・

「ん~~~? あいつ等って~、全員で六体でしたよね~?」
「えぇ・・・・・・一体足りない?」

よく見ると(視界にも入れたくないけど)、奴らは四体しか居ない。一体は、ここに来るまでに撒いているので、確かに一体足りない・・・・・・まさか!? 

― ドン! -

「ガァ!?」
「な!エレン様!?」

私達が居た更に上空から、何かが圧し掛かり、地面へと叩き付けられた。

「ガハ、ゴホ!」
「ん? なんだ、エレンか。ククク、こんな所まで追いかけてくる何て、そんなに俺の事が気になるのか? それならもっと素直になればよいものを」

クソ! クソ! クソ! こんな所でしくじるなんて!? この馬鹿どもが、奇襲なんて考え付くとは、思っても見なかった!
周りにいる腰巾着共も、好き勝手なことを口走っている様だが、気にしている余裕がない。この状況、どうしたら!? 

「貴様!! エレン様から離れろ!!」
「離れろ~」

賢竜であるシスタでは、こいつ等には勝てないし、テレのブレスは、この状況じゃ撃てない。そして私は、上から手を取り押さえられ、弱点である首の魔力袋に牙を突き付けられている。

・・・・・・詰み

そんな言葉が私の中に浮かぶ。
行動できなければ、状態は改善しない。しかも、こいつらに会話は成立しない。何か、何でも良い、せめて切っ掛けだけでも有れば!

(え~と、何の用ですか?)

こんな状況にふさわしくない、困惑した様な、呆れたような声が、あたりに響いた。しかもこれは・・・・・・<念話>? だとしても、これ程の範囲に行き渡らせるなんて、どんなレベルと魔力量よ!?

「やっと現れたか、臆病者! さっさと姿を現せ!」
(臆病者? 俺たちが臆病者だとしたら、お前たちは野蛮人? 野蛮竜って所ですか?)
「あ˝ぁ? 下等生物が吠えてんじゃねぇぞ!!」
「兄貴が優しく接してれば調子に乗りやがって! 自分の立場が、分かってんのか?」
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?)

良かった、良くないけど良かった。相手の感性は、少なくともまともそうだ。しかも会話が成立する。

「そっちから攻撃しといて、とぼける気か!? 落とし前、どうつけるつもりだ? あ˝ぁ!?」
(攻撃? した覚えが無いのですけど? むしろ、攻撃してきたのはそちらでは?)
「虫嗾けといて、何言ってやがる!!」
(???)

困惑がこちらにまで伝わってくる。あちらが攻撃されたと言ったのは分かる。森の外での虫型の魔物の事だろう。そうでなくても、この森の惨状を見れば、彼ら側の主張ももっともだ。

「ククク、そう威圧してやるな、怯えているじゃないか。向こうも、俺たちほどの存在が居ることに驚いているのだろうよ。確かに、あれ程の軍勢だ、負けると思ってはいなかったんだろう」
(軍勢? あ、あ~~~あれの事ですか、ベテルボロ・ラッチ。あれは俺たちと無関係・・・・・・て、訳では無いですね。ですが、俺たちが意図して起こしたことでは無いですよ。むしろ、こちらも被害者です)

ベテルボロ・ラッチ、今回私たちの谷に攻め入った虫の魔物の名前ですね。しかし、向こうの主張を信じるに、ここの主が放った魔物では無いようだ。
・・・・・・つまり今、向こうは言い掛かりで、縄張りを荒らされていることになる。印象は最悪ですね。

― ドゴーン・・・・・・ ―

轟音と共に、巨木に新たに火が付く。またこいつは!? 

「・・・・・・お前の拙い言い訳に、付き合うつもりはない。俺たちが紳士的なうちに投降しろ。せめてもの慈悲だ、お前に我々へ奉仕する権利をやろう!!」
(・・・・・・は~~~~、竜族ってのは、皆こんな奴ばかりなのか?)

不味い、このままだと、竜族とこの糞虫を一括りにされてしまう! そうなってしまったら、今後の対話に重大な支障をきたす!

「待って! 待って下さい! 私たちは、こいつ等とは違う! 無関係です!」
「おめーらは黙ってろ! この竜族の面汚しどもが!!」
「え~、ならお前たちは~、吐瀉物ですね~」
「なんだと! 雑魚のくせに、生意気言ってんじゃね~ぞ、憶病もんが!」
(あの~、喧嘩なら、余所でやってもらえませんか~?)

今は口論している場合では無いと言うのに。向こうも呆れている。
・・・・・・いや、むしろ有りなのか? この状態は、明らかな対立関係だ。私たちに敵意がない事を示すことができれば。その差は決定的になる。
・・・・・・問題は、竜族の恥を晒し続けることね。この際、手段を選んでいられないか。

「こんな下等生物、俺ら竜族の為に生きてりゃいいんだ!!」
「頭~、可笑しんじゃないの~?」
「何言っても無駄よ、竜王様の命令も理解できない、異常者集団よ。何でこんな奴が・・・・・・」
(・・・・・・もういいわ、お前ら)

―ゾワリ―

「!? なんだ?」
「なんか、今」

体の芯まで覗かれるかのような錯覚を覚える。この感覚は、<鑑定>を掛けられた時の感覚!? でも、これほど深く覗かれるなんて! いったいどれ程のレベルなの!? 

「てめえ・・・・・・何しやがった」
(・・・・・・ふ~ん、仲間じゃないのは本当みたいですね)
(こいつ等、はぐれ竜なの?)
(みたいですね。つまり、今居るこいつ等だけで噛みついてきたと・・・・・・)
(この数と、実力でなの?)
(じゃないですか?)
(・・・・・・馬鹿なの?)
(気狂いかもしれないですよ?)

散々な言われ様ね。会話をしている感じから、向こうは二体以上でこちらを見ている。でも、会話の流れから見て、私たちとこいつ等が仲間じゃ無いことを、分かって貰えたのかしら? しかも、はぐれ? 

「舐めてんじゃねぇぞ! あぁ!?」
(・・・・・・で? 貴方たちは何処から、何を目的に、ここまで来たのですか?)
「無視してんじゃねぇ!」
(・・・・・・どうしました、お三方? そちらは対話を望んでいる様子でしたが、勘違いでしたか?)

お三方? こっちに話を振ってくれている!? 他の奴らは、既に眼中に無いのか、完全に無視されているが、そんな事なんでどうでも良い! これはチャンスだ! ここを逃したら、挽回の機会は無いと思え、私!
言葉は慎重に選べ、相手を刺激しない、かつ端的に、分かりやすく、こちらの目的を相手に告げるのだ!

「わた(あれ? また増えた?)し?」

話そうと口を開こうとしたとき、ここの主と思われる者の呟きが聞こえた・・・・・・増えた?
しおりを挟む
感想 482

あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

精霊が俺の事を気に入ってくれているらしく過剰に尽くしてくれる!が、周囲には精霊が見えず俺の評価はよろしくない

よっしぃ
ファンタジー
俺には僅かながら魔力がある。この世界で魔力を持った人は少ないからそれだけで貴重な存在のはずなんだが、俺の場合そうじゃないらしい。 魔力があっても普通の魔法が使えない俺。 そんな俺が唯一使える魔法・・・・そんなのねーよ! 因みに俺の周囲には何故か精霊が頻繁にやってくる。 任意の精霊を召還するのは実はスキルなんだが、召喚した精霊をその場に留め使役するには魔力が必要だが、俺にスキルはないぞ。 極稀にスキルを所持している冒険者がいるが、引く手あまたでウラヤマ! そうそう俺の総魔力量は少なく、精霊が俺の周囲で顕現化しても何かをさせる程の魔力がないから直ぐに姿が消えてしまう。 そんなある日転機が訪れる。 いつもの如く精霊が俺の魔力をねだって頂いちゃう訳だが、大抵俺はその場で気を失う。 昔ひょんな事から助けた精霊が俺の所に現れたんだが、この時俺はたまたまうつ伏せで倒れた。因みに顔面ダイブで鼻血が出たのは内緒だ。 そして当然ながら意識を失ったが、ふと目を覚ますと俺の周囲にはものすごい数の魔石やら素材があって驚いた。 精霊曰く御礼だってさ。 どうやら俺の魔力は非常に良いらしい。美味しいのか効果が高いのかは知らんが、精霊の好みらしい。 何故この日に限って精霊がずっと顕現化しているんだ? どうやら俺がうつ伏せで地面に倒れたのが良かったらしい。 俺と地脈と繋がって、魔力が無限増殖状態だったようだ。 そしてこれが俺が冒険者として活動する時のスタイルになっていくんだが、理解しがたい体勢での活動に周囲の理解は得られなかった。 そんなある日、1人の女性が俺とパーティーを組みたいとやってきた。 ついでに精霊に彼女が呪われているのが分かったので解呪しておいた。 そんなある日、俺は所属しているパーティーから追放されてしまった。 そりゃあ戦闘中だろうがお構いなしに地面に寝そべってしまうんだから、あいつは一体何をしているんだ!となってしまうのは仕方がないが、これでも貢献していたんだぜ? 何せそうしている間は精霊達が勝手に魔物を仕留め、素材を集めてくれるし、俺の身をしっかり守ってくれているんだが、精霊が視えないメンバーには俺がただ寝ているだけにしか見えないらしい。 因みにダンジョンのボス部屋に1人放り込まれたんだが、俺と先にパーティーを組んでいたエレンは俺を助けにボス部屋へ突入してくれた。 流石にダンジョン中層でも深層のボス部屋、2人ではなあ。 俺はダンジョンの真っただ中に追放された訳だが、くしくも追放直後に俺の何かが変化した。 因みに寝そべっていなくてはいけない理由は顔面と心臓、そして掌を地面にくっつける事で地脈と繋がるらしい。地脈って何だ?

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。 しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。 チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。 研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。 ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。 新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。 しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。 もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。 実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。 結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。 すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。 主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。

スキル【合成】が楽しすぎて最初の村から出られない

紅柄ねこ(Bengara Neko)
ファンタジー
 15歳ですべての者に授けられる【スキル】、それはこの世界で生活する為に必要なものであった。  世界は魔物が多く闊歩しており、それによって多くの命が奪われていたのだ。  ある者は強力な剣技を。またある者は有用な生産スキルを得て、生活のためにそれらを使いこなしていたのだった。  エメル村で生まれた少年『セン』もまた、15歳になり、スキルを授かった。  冒険者を夢見つつも、まだ村を出るには早いかと、センは村の周囲で採取依頼をこなしていた。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

処理中です...