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41 黒い濁流(騎士団長)
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エスタール帝国:貿易都市エンバー 防壁
エスタール帝国、別名実力者の国。
その国の都市の一つ貿易都市エンバーは、南北にある他国と、東に存在する魔の森の開拓村を繋ぐ重要地点。
そんな都市の防壁にて、正規軍に配属している一人の若い兵士が監視についていた。
「ふぁ~~~~~・・・暇だ」
こう、毎日何もないと流石につらくなってくる。
「オイオイ、いくら何でも気を抜き過ぎだぞ」
「て、言ってもな~。ここに攻めてくる奴なんて居ないだろ?」
「まぁ・・・な。何かあっても、すぐに周辺の村から狼煙で知らせが入るし、緊急の場合は、魔道具や伝鳥で知らせが入るからな」
つまり俺たちは、いつ上がるか分からない、そんな狼煙を監視している訳だ。暇すぎる。
「来月には魔の森勤務になるんだ、今ぐらいいいだろ?」
「はー、仕方のない奴だ」
「しかし、なんでこんな制度があるんだ?移動費とか馬鹿にならないんだろ?同じ場所の方が分かりやすいし、引継ぎも無い。無くていいじゃん」
「そりゃお前、一生魔の森勤務でいいのか?」
「ごめんなさい、もう言いません」
魔の森は、この国だけでなく、接していない国からしても重要な場所だ。そこからは効果の高い薬草や木材、特に魔物の素材が流れてくる。
逆に、常に魔物の脅威に晒されているとも言える。実際、少なくない兵士や村民が死んでいる。かと言って放置も出来ない、間引かないと溢れた魔物が村々を襲う事に成る。痛し痒しだ。・・・来月には俺も、そんな所に行かないとイケないんだよな~。
「は~~」
「市民も見ているんだ、もっとシャキッとしろよ」
「お前は真面目過ぎるんだよ、兵士A」
「兵士Aって、それ物語とかで出てくる、最初に死ぬ見張りだろ兵士C」
「・・・兵士Cってどんな役だっけ?」
「死体を見つけて、侵入者が居ることを上司に伝える役」
「じゃぁ兵士Bは、丁度兵士Aの死に目に遭遇して、ついでで殺される役だな」
「その役は、アレンの奴辺りが丁度いいな」
「うわ、何それピッタリじゃねぇか!」
仲間との無駄話で時間を潰す。何だかんだで、話し相手になってくれるのは有り難い。流石に寝るのは不味いからな。
「・・・ん?なんか門が騒がしくないか?」
「不審者を取り押さえているみたいだな、ちょっと行ってくる」
「りょーかい、団長」
―――――
「見えた!」
目的地、エンバーの防壁が見えてきた。門には、長蛇の列ができているが、それを無視して突き進む。もう少しで門に着く!
「!!そこの者、止まれ!」
門番か!地蜥蜴から降り、駆け寄る。
本当は、もっと上の者に直接報告できれば速いのだが、ここでトラブルになる訳にはいかない。スタンピードの事を伝え、上の者を呼んでもらう!
「緊急事態だ!スタ――!?」
「動くな!貴様は何者だ!」
突然、背後から地面に押さえつけられる。全く気が付かなかった、練度が高いのはいい事だが、今回ばかりは最悪だ。急いでいるのに!
「ゲホ!ゴフ!」
くそ、息が。折れた骨が肺に刺さったか?
「どうした?何があった?」
「団長!?」
団長だと?エンバーに配属されている隊長と言えば!?
「不審者を捕らえました。いかがし――」
「スタンピード!!スタンピードが起き――ゲホ!ゲホ!」
マズイ、意識が・・・
「おい、今なんと言った!スタンピードだと!?」
「スタンピード?狼煙は?伝鳥は如何した!?魔伝は!?」
「そんな暇なんて無がった!あっと言う間に˝のまれたんだ!」
「そんな、そんなこと・・・」
「妻も、子も、親も、友人も・・・相棒も、みんな置いてきた。みんな!みんな!!みん・・・な・・・」
もう、意識がもたない・・・。頼む、信じ・・・て・・・
―――
何か不穏な単語か聞こえた気がして、監視を部下に任せて降りて来てみたら・・・
「だ、団長・・・」
「~~~~、緊急招集!休んでいる奴らを叩き起こせ!」
「!?」
「翼へ伝達!魔の森方面に偵察に出せ!」
「ッ、ハッ!」
「ハンターギルドと冒険者ギルドにも伝達!他の都市にも通信を入れろ!魔伝の使用を許可する!」
「ハ!」
うわー、また無茶やってるよこいつ。
「・・・いいのかよ、幾らお前でも間違いでした、じゃぁすまないぞ?」
「・・・この方の状態を見てもか?」
「は~、こんなになってまで騙す奴は、まぁ~いねぇか。俺はこいつを医療班の所に連れていく、現場の指揮も俺がしておくよ」
「分かった、俺は領主の所に報告に行く、頼んだぞ」
この調子じゃ、開拓村は全滅かな?でなきゃ、連絡が来ないとか無いからな。
「入場待ちの者たちは如何しましょう?先ほどの話が伝播しているようです、このままでは・・・」
「あ~~~~うん、全員入れろ、見殺しはさすがにマズイ」
「よろしいので?」
「もう今更だろ?それに、商業ギルドに何言われるか、分かったもんじゃねぇ、審査のほうは広場ででもやっとけ」
「了解しました。“副団長”どの!」
は~。こりゃ、魔の森勤務はなしだな。
エスタール帝国、別名実力者の国。
その国の都市の一つ貿易都市エンバーは、南北にある他国と、東に存在する魔の森の開拓村を繋ぐ重要地点。
そんな都市の防壁にて、正規軍に配属している一人の若い兵士が監視についていた。
「ふぁ~~~~~・・・暇だ」
こう、毎日何もないと流石につらくなってくる。
「オイオイ、いくら何でも気を抜き過ぎだぞ」
「て、言ってもな~。ここに攻めてくる奴なんて居ないだろ?」
「まぁ・・・な。何かあっても、すぐに周辺の村から狼煙で知らせが入るし、緊急の場合は、魔道具や伝鳥で知らせが入るからな」
つまり俺たちは、いつ上がるか分からない、そんな狼煙を監視している訳だ。暇すぎる。
「来月には魔の森勤務になるんだ、今ぐらいいいだろ?」
「はー、仕方のない奴だ」
「しかし、なんでこんな制度があるんだ?移動費とか馬鹿にならないんだろ?同じ場所の方が分かりやすいし、引継ぎも無い。無くていいじゃん」
「そりゃお前、一生魔の森勤務でいいのか?」
「ごめんなさい、もう言いません」
魔の森は、この国だけでなく、接していない国からしても重要な場所だ。そこからは効果の高い薬草や木材、特に魔物の素材が流れてくる。
逆に、常に魔物の脅威に晒されているとも言える。実際、少なくない兵士や村民が死んでいる。かと言って放置も出来ない、間引かないと溢れた魔物が村々を襲う事に成る。痛し痒しだ。・・・来月には俺も、そんな所に行かないとイケないんだよな~。
「は~~」
「市民も見ているんだ、もっとシャキッとしろよ」
「お前は真面目過ぎるんだよ、兵士A」
「兵士Aって、それ物語とかで出てくる、最初に死ぬ見張りだろ兵士C」
「・・・兵士Cってどんな役だっけ?」
「死体を見つけて、侵入者が居ることを上司に伝える役」
「じゃぁ兵士Bは、丁度兵士Aの死に目に遭遇して、ついでで殺される役だな」
「その役は、アレンの奴辺りが丁度いいな」
「うわ、何それピッタリじゃねぇか!」
仲間との無駄話で時間を潰す。何だかんだで、話し相手になってくれるのは有り難い。流石に寝るのは不味いからな。
「・・・ん?なんか門が騒がしくないか?」
「不審者を取り押さえているみたいだな、ちょっと行ってくる」
「りょーかい、団長」
―――――
「見えた!」
目的地、エンバーの防壁が見えてきた。門には、長蛇の列ができているが、それを無視して突き進む。もう少しで門に着く!
「!!そこの者、止まれ!」
門番か!地蜥蜴から降り、駆け寄る。
本当は、もっと上の者に直接報告できれば速いのだが、ここでトラブルになる訳にはいかない。スタンピードの事を伝え、上の者を呼んでもらう!
「緊急事態だ!スタ――!?」
「動くな!貴様は何者だ!」
突然、背後から地面に押さえつけられる。全く気が付かなかった、練度が高いのはいい事だが、今回ばかりは最悪だ。急いでいるのに!
「ゲホ!ゴフ!」
くそ、息が。折れた骨が肺に刺さったか?
「どうした?何があった?」
「団長!?」
団長だと?エンバーに配属されている隊長と言えば!?
「不審者を捕らえました。いかがし――」
「スタンピード!!スタンピードが起き――ゲホ!ゲホ!」
マズイ、意識が・・・
「おい、今なんと言った!スタンピードだと!?」
「スタンピード?狼煙は?伝鳥は如何した!?魔伝は!?」
「そんな暇なんて無がった!あっと言う間に˝のまれたんだ!」
「そんな、そんなこと・・・」
「妻も、子も、親も、友人も・・・相棒も、みんな置いてきた。みんな!みんな!!みん・・・な・・・」
もう、意識がもたない・・・。頼む、信じ・・・て・・・
―――
何か不穏な単語か聞こえた気がして、監視を部下に任せて降りて来てみたら・・・
「だ、団長・・・」
「~~~~、緊急招集!休んでいる奴らを叩き起こせ!」
「!?」
「翼へ伝達!魔の森方面に偵察に出せ!」
「ッ、ハッ!」
「ハンターギルドと冒険者ギルドにも伝達!他の都市にも通信を入れろ!魔伝の使用を許可する!」
「ハ!」
うわー、また無茶やってるよこいつ。
「・・・いいのかよ、幾らお前でも間違いでした、じゃぁすまないぞ?」
「・・・この方の状態を見てもか?」
「は~、こんなになってまで騙す奴は、まぁ~いねぇか。俺はこいつを医療班の所に連れていく、現場の指揮も俺がしておくよ」
「分かった、俺は領主の所に報告に行く、頼んだぞ」
この調子じゃ、開拓村は全滅かな?でなきゃ、連絡が来ないとか無いからな。
「入場待ちの者たちは如何しましょう?先ほどの話が伝播しているようです、このままでは・・・」
「あ~~~~うん、全員入れろ、見殺しはさすがにマズイ」
「よろしいので?」
「もう今更だろ?それに、商業ギルドに何言われるか、分かったもんじゃねぇ、審査のほうは広場ででもやっとけ」
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