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28 報連相は大事!

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アレから半日経って現在は昼時。今も雨は降り続いているが、なんだかんだいって上手く行っている。
毒処理も間に合っているし、水の方もダンジョンの【倉庫】に入れることで溢れることも無い。地面からせり上がって来た分も、根の周りだけは初期のころと変わらないラインを維持している。
そろそろ、定期報告でも導入しようかな? とりあえず確認の連絡でも入れますか。

「クロスさん、そちらは順調ですか?」
(ハ! 問題なく処理できています。この調子ならば数日は持ちましょう!)
「・・・ん、数日? それ以降は無理って事?」
(そ、それは・・・)
「雨が降る前の作業ではそんな事なかったよね、どこか無理しているんじゃないですか? 例えば・・・予備労力を導入しているとか」
(・・・その通りに御座います)
「は~、いったい何に使っているのですか?」

まとめると、<糸>で補強した柱や壁、床が毒によって壊れてしまうのが原因の様だ。特に柱と壁は、せり上がってくる毒に直接接してしまうため、定期的に補強しないと崩れる可能性があり、1~2本程度なら問題ないが数が多いから、脆くなった部分を取り除いて作り直して、を繰り返しているそうだ。

「それでは効率が悪いですね。ふむ・・・・・・・・・切り捨てるか」
(え!?)
「縦穴の中腹辺りをラインに、それより下は破棄する」
(・・・なるほど、そうすれば毒は縦穴に流れ込みそれより上には行かなくなる、又は遅くなると)
「そう、質の低い死毒なら粘性も低いし、今まで作業に回していた子達を、そのまま縦穴での作業に回せばいけないですか?」
(その点については問題ないかと。しかし、支柱が毒に浸食されるのは変わりません)
「支柱の数は減らせません?」
(安全面を考えると難しいかと・・・、元々の地盤が弱いので、どうしても分散する必要があります)
「そんなに? 世界樹の根があるから、支えとしては十分だと思ってたんですけど」
(え?)
「え?」
(・・・)
「・・・」

まさか・・・

「建築の支えに、世界樹の根を全く使っていないの?」
(は、はい。そのような考えは今まで一度も・・・)
「え~と、他の子達とも話しました?」
(はい、主だった者たちと打ち合わせを行うことはありましたが・・・)

これは・・・種族的な問題かな? アルトは穴を掘って巣を作るのが基本で、何かを支えにして建物を建築する種族じゃないからな~。柱とか作っていたから気が付かなかったよ・・・。

「すまん、これは任せっきりにしていた俺の責任だ」
(!? その様な事ありません! 我が主様から頂いた知識を扱えなかったのが原因! 主様が指揮を執っていればこのような事には―――)

う~ん、励ましてくれるのは有難いんだけど、全肯定なのがな~。俺は完璧人間じゃないんですけど。そもそも、建築とか無理ですからね?
前にも思ったけど、このまま放置するとまずいかな? 妄信はいかんよ、妄信は。俺が言っても効果あるかな? ・・・第三者の意見が欲しいな。

(―――ですので! そのよう――)
「分かった、分かりましたから。これからは、お互い情報のやり取りを密にしましょう。それと、二人だけだと視野が狭い、他にも意見の言えるものが欲しい。そうすれば、今回の様な事は減るはずです」
(・・・承知いたしました。では、如何致しましょう?)
「現場が分かっていて、ある程度地位が高く、下からの信用がある子が良いかな? ・・・アルトでなら、アリスさんとか」
(アリスですか? 確かに<念話>持ちで、我の指揮のサポートをしていますが、口数は多くありませんよ?)
「問題ない、問題ない、必要な時には話す子でしょ? 現場の指揮を執っているなら、こっちの内容を聞けるようにして、話に割り込める位でもいいですから、そうすれば緊急報告とかもスムーズになるでしょ? あ、あと粘液スライムの意見も聞こうか」
(分かりました、少々お待ちください)
(ん~? おはなしするの~)
「そ、気になったことがあったら言ってくださいね」
(うん!)
(・・・分かった、参加する)
「お? 早かったね、よろしく」
(・・・ん)
「それじゃ、改めて行きましょうか」

そこからは、改善案を出し合い、そして・・・

(・・・問題なさそうですな!)
「ですね、上手く行ってよかった」

最終的には、縦穴を中心としてお椀状に水路を引き、せり上がってきた毒を全て縦穴に集まるようにした。
問題だった支柱については世界樹の根を使い、それでも支えが足りなく自重で崩れる箇所は、橋のアーチ構造を参考。殆どの箇所を下層の水路部分から切り離すことに成功した。お陰で、メンテナンスに回していた労力を大幅カットできた。
水路の構造は蜘蛛タラントの巣を参考にした。蜘蛛の巣状に水路を掘り固め、そこに毒が流れるようにしたのだ。
大きな蜘蛛の巣状の水路を造るのではなく、小さいのを作り、外側の末端を中心として少し上にさらに蜘蛛の巣水路を作ることを繰り返したことで、最終的にくり抜いたかのようなお椀状の水路が完成した。世界樹の根を避けたり、毒液がスムーズに下層にある縦穴に流れる様に考えた結果だ。
このアイディアはアリスさんから出てきた。何でも、他種類の子達ともよく話すらしく、今回の件もリアルタイムでアイディアを募り、蜘蛛タラントから提案があったのだとか。施工についても、蜘蛛タラントの指示をアリスさんが<念話>で翻訳、中継して指示を出してくれた。やだ、この子有能。
粘液スライムの方は問題なし。むしろ吸い出す必要が無いから、縦穴に、水路にと今まで以上に大活躍してくれている。

そんなこんなで時間がたち、日付が変わる頃には雨も止んだ。毒のせり上がりはまだ続いているけど、少しずつ緩やかになっている。トラブルもあったが、最終的には何とかなった。
今日はもう遅いので、明日に備えて休むとしますか。

「俺は休みますね? 何かあったら起こして下さい」
(ハ!)
(いっしょにねる~)
「はいはい、いいですよ。おやすみなさい」

今日の教訓はあれだな、報連相って大事。
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